今人気の「韓国式証明写真」。その実際とは?(写真提供:MJ PHOTO STUDIO)

「安価でプリクラより盛れる」という、「韓国式証明写真」が話題になっている。従来の証明写真とは違い、カラフルな背景色で強めのライトをあてながら撮影。韓国風のレタッチを行うのが特徴だ。

利用者は20代女性が中心だが、「少し印象を変えてみたい」「若々しく見せたい」という40代〜50代以降の男性客も多いという。

日本でいち早く「韓国式証明写真」のシステムを展開した「MJ PHOTO STUDIO」共同オーナーの辻幸恵氏は、韓国の写真館で働いた経験を持つ。「日本でも人気が出るはずだ」と確信し、韓国カルチャー好きのメッカである新大久保に1店舗目を構えた。

コロナ禍では韓国に気軽に旅行もできず、「韓国気分を味わいたい」という若者に一気に広まった。口コミやインフルエンサーの発信の後押しもあり、横浜元町、大阪北堀江にも出店した。

記者が体験してみた


46色から選べる背景(写真:筆者撮影)

撮影前にはカウンセリングシートが配布され、「清潔」「可憐」などの項目から仕上げのイメージを決める。基本の「韓国式証明写真」プランだと、背景も46色から選ぶことができるのが特徴だ。

撮影機材の詳細は企業秘密ということだが、オーナーが現地の写真館で学んだライティング技術が集約されている。照明機材も、独自の改造をしているそうだ。


強力なライティングで撮影してくれる(写真:筆者撮影)


韓国式レタッチ後の筆者(写真:筆者提供)

修正レベルは1から5まで選べる。公的書類に添付する証明写真として利用する場合、自然な範囲で顔を整えることを希望する人が多い。髪型やメイクが多少崩れていても、リップやチークの色を足したり、アホ毛も整えてくれるから安心だ。

筆者は「韓国式証明写真」のプランで、修正レベル3を選択。すると、こんな感じに仕上がった。首元が開いた服を着用すると、ほっそり加工しやすいのだという。

男性客の場合も本人の希望があれば、胸板を厚くしたり、髪の毛を多くしたり、シミ・シワを自然に消すなど柔軟に対応するそうだ。レタッチ後のデータは1週間後にLINEで届く。

オーナーの辻氏は、韓国式証明写真が人気の理由をこう語る。

「『街中にある証明写真機は盛れない。就活で損をしたくない』という、就職活動中の方々からの需要がありますね。また、マイナンバーカードを作るために写真を撮りにくる方もいます」(辻氏)

欧米では履歴書でも証明写真の添付なしだが、日本国内ではまだ求められるのが現状だ。また、社員証やマイナンバーカード用に利用する人もいる。韓国式証明写真は「安価で盛れる」「背景色が選べてSNSにも使える」ということで、口コミもあり一気に広まったという。韓国風の衣装や、スーツと白シャツのレンタルオプションも300円で利用できる手軽さも話題だ(貸衣装は新大久保店のみ)。

その場ですぐデータと写真を受け取れるクイック証明写真(税込み2200円)も、お得感があり人気。同スタジオでは、「オーディション / 宣材写真プラン」や「ペット撮影プラン」のサービスも提供開始している。

カメラマン不在の「セルフ写真館」も


「刹那館」スタジオ(写真:筆者撮影)

同ビルの4階には、系列のセルフ写真館「刹那館」のスタジオもある。こちらも「エモい写真が誰でも簡単に撮影できる」と、若者を中心に大人気だ。

鍵付きの完全個室に設置されているのは、簡単な椅子と、セルフ撮影ができる機材とモニター、そして「盛れる」照明機材。室内にはカメラマンは不在で、利用者だけがプリクラ感覚で撮影を楽しむことができる。ぬいぐるみやカチューシャなど撮影を盛り上げるアイテムや、ヘアセットを整えられるようドレッサーも準備されている。

セルフ撮影基本プランは3840円(税込み)から。予約枠は15分で、その間なら自由に何枚でもシャッターを切ることができる。平均で180枚、最大では850枚もの写真が撮れるそうだ。980円(税込み)のオプションをつけると、撮影データはすべてその場で受け取ることができ、ほとんどの客が追加する。スマホを持っていれば、その場でデータを転送してもらえるという手軽さも好評だ。

「個室で楽しみたい」「マスクなしの写真を撮りたい」

共同オーナー泉隆道氏によると、韓国式証明写真と同じく、セルフ写真館も韓国から輸入したアイデアだという。


(写真:「刹那館」提供)

韓国でセルフ撮影式の写真が流行りだしたのは、2020年2月頃のこと。新型コロナウイルスが猛威をふるう中で、「人と接触せずに個室で楽しめる」「マスクなしで、友人と少人数で撮影できる」ということで、需要が一気に高まった。撮影料は30000ウォン(約2900円)に設定されている店が多く、従来の写真館よりもだいぶ手頃だ。

「刹那館」は2020年11月にオープンして以来、連日予約が殺到。週末には朝から晩まで15分刻みでフル回転だ。利用者は20代の女性とカップルが中心だが、家族写真を撮影しにくる50代60代もいる。とくに2021年3月は、コロナの影響で高校や大学の卒業式などのイベントが中止となり集まれなくなった、友人グループの需要も多くあったという。

同店のサービスを利用したことがあるという河野さん(仮名・20代女性)は「K-POPファンの間で韓国のセルフ写真館が話題にあがっていたので気になって予約しました。コロナ禍ではマスクなしで撮影できる機会がなかなかなくて、寂しかったんです。個室なら気兼ねなく楽しめるし、個人では高い機材なんてなかなか買えません。プロっぽい写真がモノクロで綺麗に撮れるので、また利用したいです」と語った。

普段、あまり写真を撮られ慣れていない筆者も実際に体験してみたが、カメラマンがおらず、好きなタイミングでポーズをとれるし、自分のペースでシャッターを押せるのが気楽だった。大量の撮影ができるため、複数人で利用する場合も、「友達だけが目をつぶってしまった……」なんて気まずさから開放されそうだ。

韓国式写真館」、一過性のブームではなく、定番化したプリクラのように根付くのではないか。