16インチ「MacBook Pro」実機レビュー AV性能もモンスター級!
アップルが独自に設計したApple M1の強化版チップを搭載する、新しいMacBook Proが登場しました。今回は、フラッグシップとなる16.2インチのMacBook Proを試しながら、モンスターマシンを日常のオーディオ・ビジュアルエンターテインメントにも活用する方法を探ってみたいと思います。
祝MagSafe復活! 各種端子も充実した
最新のMacBook Pro向けの強化版チップには「M1 Pro」と「M1 Max」の2種類があります。今回は、10コアCPU/32コアGPU/16コアNeural Engineにより構成される「M1 Max」チップを搭載し、メインメモリは64GB、ストレージは2TBのオプションを選択した、カスタムビルドのMacBook Proを試用しています。カラーはシルバー。
まずは、外観のポイントを押さえておきましょう。ボディのパネルはマットな仕上げのアルミニウム。側面はiPhone 13シリーズやiPad Proのようなフラットデザインのようにも見えますが、エッジには柔らかなカーブを付けています。
バックライトに1万個のMini LEDを配置したLiquid Retina XDRディスプレイを搭載する側のパネルは、M1チップを搭載した13.3インチMacBook Proよりもほんのわずかに厚みが増した印象を受けます。
MacBookシリーズに久しぶりに復活したMagSafe 3コネクターが本体左側に搭載されています。マグネットの磁力でしっかりと吸着するコネクターですが、万一足をかけたりして引っぱられるとケーブルがコネクターからすっと外れます。MacBook Airが採用するThunderboltコネクターのケーブルよりも安全性が高いコネクターと言えます。ぜひ、これから発売する新しいMacBookシリーズにもMagSafeコネクターを搭載してほしいです。
なお、16.2インチのMacBook Proには、大きな140WのUSB-C電源アダプターが付属します。MacBookに初搭載の「高速充電」を活用するためには、この同梱電源アダプターが必要です。高速充電は30分で最大50パーセントまでのチャージを実現します。
新しい14.2インチと16.2インチのMacBook Proは、ともに左右側面に合計3つのUSB 4互換のThunderbolt 4ポートを搭載しています。それぞれのポートは充電・給電にも対応しているので、外出時にMacBook Proを持ち運ぶ際には小さい電源アダプターを持ち歩く手もあります。
カメラマンにうれしいSDカードスロット。音楽制作に必須のパワフルなヘッドホン出力も
本体右側に搭載するHDMIポートは、外部ディスプレイやプロジェクターにMacを接続する時に便利。SDXCカードスロットがあれば、別途アダプターを持ち歩かなくてもデジタルカメラで撮影した写真や動画が手速く読み込めます。カメラマンの方々にはうれしいアップデートですね。
新しいMacBook Proの3.5mmヘッドホンジャックには、接続されているヘッドホン・イヤホンのインピーダンス(電気抵抗)特性を自動判定して、それぞれに最適な音量で鳴らせる機能が搭載されています。150Ω以上のインピーダンス特性を備えるヘッドホン・イヤホンが接続された場合にも、最適な音量で鳴らせるようにヘッドホンアンプの出力が強化されています。
筆者がふだんリファレンスとして使っているベイヤーダイナミックの「T1 2nd Generation」という、600Ωのハイインピーダンスヘッドホンで実力を試しました。MacBook Airで使用する場合には、外付けのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプがないと十分な音量で鳴らせないヘッドホンです。
確かに、MacBook Proのボリュームゲージを半分以下あたりに設定しても、T1 2ndが軽やかに鳴ってくれます。例えば、MacBook Proを本格的に音楽作品の制作に活用されているクリエイター、エンジニアの方々は、アンプを持ち歩かなくてもMacBook Proとヘッドホンだけで、質の高いモニタリング環境を整えることができます。
オールブラックのMagic Keyboardに惚れる
MacBook Proのキーボードといえば、ファンクションキーとしても機能するインタラクティブな「Touch Bar」をしばらくの間トレードマークとしていました。新しいMacBook Proは、フルサイズのLEDバックライトも搭載する物理ファンクションキーを採用しています。二重の酸化被膜処理を施したオールブラックのMagic Keyboardを搭載して、とても精悍でエレガントなルックスになりました。キーボードを眺めているだけで、筆者は新しいMacBook Proに惚れ惚れとしてしまいます。そして購買欲をそそられてしまいます。
Magic Keyboardは、タイピング感がしっかりとしていてバネが効いているのですが、それでいてフィードバックは柔らかく疲れにくいと思います。キーボードの左右にはパワフルなスピーカーシステムを内蔵。16インチのMacBook Proは感圧タッチトラックパッドがとてもワイドなので、伸び伸びと操作できます。
MacBook Proのディスプレイに“ノッチ”が付いた影響は?
16.2インチのLiquid Retina XDRディスプレイは、縁の限界まで攻めたナローベゼルデザインとし、画面表示の没入感を高めています。
上部中央には、1080p FaceTime HDカメラなどを搭載するためのエリアを確保した、iPhoneのような“ノッチ”が設けられました。このノッチがあるおかげで、画面トップに表示されるメニューバーの位置が押し上げられ、コンテンツの表示エリアが拡大します。
Apple TV+で配信されているコンテンツは、シネスコやビスタの横長なアスペクト比の映像として作られているため、MacBook Proの画面で再生すると上下に黒いオビが入ります。そのため、ノッチの存在が気になることはありません。写真アプリで静止画を拡大フルスクリーン表示にしても、メニューバーのエリアが均等にブラックアウトするので、ノッチの部分だけ画像が切り欠かれることがありません。
マウスのポインタをノッチの位置に持って行くと、ポインタがノッチの裏側を移動しているみたいにすり抜けます。一瞬ポインタを見失ってしまうような感覚に、慣れるまで少し慣れが必要かもしれません。
120Hz駆動のProMotionテクノロジーに対応したLiquid Retina XDRディスプレイ
Liquid Retina XDRディスプレイの画質は、HDR表示に対応する明暗の力強さと深み、色彩の鮮やかさを特徴としています。iPhone 13 Proで撮影したHDR動画は、思わず息を吞んだまま見つめてしまうほど臨場感が豊かで立体的です。HDR映像コンテンツの再生時には映像のピーク輝度が最大1,600nitsまで再現できるので、キラリと瞬く被写体のリアリティが高まります。
macOS Montereyからの新機能を活用して、iPhoneで撮影した写真や動画を「MacにAirPlay」すると、アップルのデバイスどうしによる連携がスムーズになります。
Liquid Retina XDRディスプレイの色彩は、鮮やかながらもバランスがとても自然です。人の肌の色、木の葉や花の色には不自然な強調感がなく、説得力に富んでいます。暗部の階調も破綻させずに、黒つぶれさせることなく夜景のディティールをていねいに引き出します。
iPad Proにも搭載されている最大120Hzの高速リフレッシュレート表示を実現するProMotionテクノロジーも初めてMacに導入。最大120Hzまで、ディスプレイに表示するコンテンツに合わせてパネルの描画速度を自動調節して滑らかな動画表示、および駆動時に消費する電力の効率化を合わせて実現します。
ProMotionテクノロジーはシステム環境設定に入り、「ディスプレイ」のメニューからリフレッシュレートを「ProMotion」に選択するとオンになり、効果を発揮します。分かりやすいところでは、Safariを開いて文字の多いコンテンツのページを上下に素速くスクロールすると、ProMotionテクノロジーをオンにした場合は文字のにじみが抑えられて、目が疲れにくく感じられると思います。
内蔵スピーカーによる空間オーディオ再生が圧巻だった
新しいMacBook Proは、中低域を担う4つのウーファーと、高音域を再生する2つのトゥイーターにより構成される6スピーカーサウンドシステムを本体左右に振り分けて搭載しました。アップル独自のサラウンド音楽体験「空間オーディオ」に対応するコンテンツが最も心地よく楽しめるMacBook Proです。
Apple TV+で配信が始まったSFスリラー『インベージョン』のシーズン1・第1話、冒頭15分で宇宙開発機関JASAの管制室・通信エンジニアと宇宙飛行士が無線通信を介して静かに言葉を交わすシーン。ささやき声のダイアローグを、MacBook Proの内蔵スピーカーがとても明瞭な輪郭を象りながら浮かび上がらせます。
続く本編28分からのシャトル発射のシーンでは、鳴り響くロケット噴射の轟音をMacBook Proが内蔵スピーカーだけでどっしりと肉厚に再現してみせます。本機と比べてしまうのは酷ではありますが、2020年発売のApple M1チップを搭載するMacBook Airのステレオスピーカーによるサウンドに比べると、空間オーディオ対応の有無と相まってMacBook Proのサウンドは圧倒的な立体感にあふれていることがよくわかります。細かな効果音まで粒立ちがよく、音が回り込みながら移動する感覚も鮮明に伝わってきます。多くのノートPCの中でも最高クラスに評価できるサウンドだと思います。
Apple Musicでステレオ音源の楽曲を聴いてみても、MacBook Proのオーディオシステムの完成度がとても高いことが分かります。ビル・エヴァンス・トリオのアルバム「Detour Ahead」から『Milestones』を再生してみました。ピアノのメロディが力強く躍動し、繊細なニュアンスを引き立てる情報量の豊かさが伝わってきます。低音の滑り出しがとてもスムーズで柔らかく、耳によく馴染みます。ステレオイメージの見晴らしが良く、楽器の音が聞こえてくる方向が手に取るように分かります。
本体底面に配置されているゴム足はMacBook Airに比べると厚みがあり、堅牢なアルミニウム製のボディも音楽再生の重心を下げて安定感を引き出すことに大きな役割を担っています。もし、内蔵スピーカーによる音楽再生、シアター鑑賞のサウンドをさらにレベルアップするのであれば、安価なものでかまわないので、MacBook Proの底面にオーディオ用のインシュレーターやボードを敷くと良いでしょう。
オンライン通話の音声・映像に差が付く高品質
MacBook Proは、ビデオ通話などオンラインコミュニケーションのためのツールとしても強力なパートナーです。3基のビームフォーミング対応のマイクユニットによるアレイシステムは、クリアな音声を収録できるスタジオ品質の出来映えをうたっています。FaceTime通話による音声をMacBook Airと比較試聴してみましたが、なるほど声の輪郭が明瞭で、人の声のイメージが前に迫り出してくるような鮮やかさが感じられました。
フロント側の1080p FaceTime HDカメラの画質は、720p対応のMacBook Airのそれと比べれば違いは一目瞭然です。MacBook Proさえあれば、外付けのマイクやカメラなどの「オンライン会議用アクセサリー」を買いそろえるための予算や手間が省けてしまいます。
MacBook Proは、名前に「プロ」と付いていることや、あまりにぜいたくなスペックが揃っていることから、本格的な映像・音楽制作などに携わる“プロフェッショナル”のクリエイターでない限り、選択肢に入らないモンスターマシンではないかと思われがちかもしれません。筆者はもっと気軽に、多くの方が「いつでもどこでも最高のエンターテインメントを満喫できるノートPC」として、最新のMacBook Proの贅沢な映像とサウンドに触れてほしいと考えます。エンターテインメント鑑賞をメインに使うのであれば、カスタムオプションを付けずに、十分にパワフルな「M1 Pro」チップを搭載するMacBook Proを選ぶのが経済的です。14.2インチモデルが239,800円、16.2インチモデルが299,800円で購入できるのだから、新しいMacBook Proはコスパも最強と考えるべきではないでしょうか。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら
祝MagSafe復活! 各種端子も充実した
最新のMacBook Pro向けの強化版チップには「M1 Pro」と「M1 Max」の2種類があります。今回は、10コアCPU/32コアGPU/16コアNeural Engineにより構成される「M1 Max」チップを搭載し、メインメモリは64GB、ストレージは2TBのオプションを選択した、カスタムビルドのMacBook Proを試用しています。カラーはシルバー。
まずは、外観のポイントを押さえておきましょう。ボディのパネルはマットな仕上げのアルミニウム。側面はiPhone 13シリーズやiPad Proのようなフラットデザインのようにも見えますが、エッジには柔らかなカーブを付けています。
バックライトに1万個のMini LEDを配置したLiquid Retina XDRディスプレイを搭載する側のパネルは、M1チップを搭載した13.3インチMacBook Proよりもほんのわずかに厚みが増した印象を受けます。
MacBookシリーズに久しぶりに復活したMagSafe 3コネクターが本体左側に搭載されています。マグネットの磁力でしっかりと吸着するコネクターですが、万一足をかけたりして引っぱられるとケーブルがコネクターからすっと外れます。MacBook Airが採用するThunderboltコネクターのケーブルよりも安全性が高いコネクターと言えます。ぜひ、これから発売する新しいMacBookシリーズにもMagSafeコネクターを搭載してほしいです。
なお、16.2インチのMacBook Proには、大きな140WのUSB-C電源アダプターが付属します。MacBookに初搭載の「高速充電」を活用するためには、この同梱電源アダプターが必要です。高速充電は30分で最大50パーセントまでのチャージを実現します。
新しい14.2インチと16.2インチのMacBook Proは、ともに左右側面に合計3つのUSB 4互換のThunderbolt 4ポートを搭載しています。それぞれのポートは充電・給電にも対応しているので、外出時にMacBook Proを持ち運ぶ際には小さい電源アダプターを持ち歩く手もあります。
カメラマンにうれしいSDカードスロット。音楽制作に必須のパワフルなヘッドホン出力も
本体右側に搭載するHDMIポートは、外部ディスプレイやプロジェクターにMacを接続する時に便利。SDXCカードスロットがあれば、別途アダプターを持ち歩かなくてもデジタルカメラで撮影した写真や動画が手速く読み込めます。カメラマンの方々にはうれしいアップデートですね。
新しいMacBook Proの3.5mmヘッドホンジャックには、接続されているヘッドホン・イヤホンのインピーダンス(電気抵抗)特性を自動判定して、それぞれに最適な音量で鳴らせる機能が搭載されています。150Ω以上のインピーダンス特性を備えるヘッドホン・イヤホンが接続された場合にも、最適な音量で鳴らせるようにヘッドホンアンプの出力が強化されています。
筆者がふだんリファレンスとして使っているベイヤーダイナミックの「T1 2nd Generation」という、600Ωのハイインピーダンスヘッドホンで実力を試しました。MacBook Airで使用する場合には、外付けのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプがないと十分な音量で鳴らせないヘッドホンです。
確かに、MacBook Proのボリュームゲージを半分以下あたりに設定しても、T1 2ndが軽やかに鳴ってくれます。例えば、MacBook Proを本格的に音楽作品の制作に活用されているクリエイター、エンジニアの方々は、アンプを持ち歩かなくてもMacBook Proとヘッドホンだけで、質の高いモニタリング環境を整えることができます。
オールブラックのMagic Keyboardに惚れる
MacBook Proのキーボードといえば、ファンクションキーとしても機能するインタラクティブな「Touch Bar」をしばらくの間トレードマークとしていました。新しいMacBook Proは、フルサイズのLEDバックライトも搭載する物理ファンクションキーを採用しています。二重の酸化被膜処理を施したオールブラックのMagic Keyboardを搭載して、とても精悍でエレガントなルックスになりました。キーボードを眺めているだけで、筆者は新しいMacBook Proに惚れ惚れとしてしまいます。そして購買欲をそそられてしまいます。
Magic Keyboardは、タイピング感がしっかりとしていてバネが効いているのですが、それでいてフィードバックは柔らかく疲れにくいと思います。キーボードの左右にはパワフルなスピーカーシステムを内蔵。16インチのMacBook Proは感圧タッチトラックパッドがとてもワイドなので、伸び伸びと操作できます。
MacBook Proのディスプレイに“ノッチ”が付いた影響は?
16.2インチのLiquid Retina XDRディスプレイは、縁の限界まで攻めたナローベゼルデザインとし、画面表示の没入感を高めています。
上部中央には、1080p FaceTime HDカメラなどを搭載するためのエリアを確保した、iPhoneのような“ノッチ”が設けられました。このノッチがあるおかげで、画面トップに表示されるメニューバーの位置が押し上げられ、コンテンツの表示エリアが拡大します。
Apple TV+で配信されているコンテンツは、シネスコやビスタの横長なアスペクト比の映像として作られているため、MacBook Proの画面で再生すると上下に黒いオビが入ります。そのため、ノッチの存在が気になることはありません。写真アプリで静止画を拡大フルスクリーン表示にしても、メニューバーのエリアが均等にブラックアウトするので、ノッチの部分だけ画像が切り欠かれることがありません。
マウスのポインタをノッチの位置に持って行くと、ポインタがノッチの裏側を移動しているみたいにすり抜けます。一瞬ポインタを見失ってしまうような感覚に、慣れるまで少し慣れが必要かもしれません。
120Hz駆動のProMotionテクノロジーに対応したLiquid Retina XDRディスプレイ
Liquid Retina XDRディスプレイの画質は、HDR表示に対応する明暗の力強さと深み、色彩の鮮やかさを特徴としています。iPhone 13 Proで撮影したHDR動画は、思わず息を吞んだまま見つめてしまうほど臨場感が豊かで立体的です。HDR映像コンテンツの再生時には映像のピーク輝度が最大1,600nitsまで再現できるので、キラリと瞬く被写体のリアリティが高まります。
macOS Montereyからの新機能を活用して、iPhoneで撮影した写真や動画を「MacにAirPlay」すると、アップルのデバイスどうしによる連携がスムーズになります。
Liquid Retina XDRディスプレイの色彩は、鮮やかながらもバランスがとても自然です。人の肌の色、木の葉や花の色には不自然な強調感がなく、説得力に富んでいます。暗部の階調も破綻させずに、黒つぶれさせることなく夜景のディティールをていねいに引き出します。
iPad Proにも搭載されている最大120Hzの高速リフレッシュレート表示を実現するProMotionテクノロジーも初めてMacに導入。最大120Hzまで、ディスプレイに表示するコンテンツに合わせてパネルの描画速度を自動調節して滑らかな動画表示、および駆動時に消費する電力の効率化を合わせて実現します。
ProMotionテクノロジーはシステム環境設定に入り、「ディスプレイ」のメニューからリフレッシュレートを「ProMotion」に選択するとオンになり、効果を発揮します。分かりやすいところでは、Safariを開いて文字の多いコンテンツのページを上下に素速くスクロールすると、ProMotionテクノロジーをオンにした場合は文字のにじみが抑えられて、目が疲れにくく感じられると思います。
内蔵スピーカーによる空間オーディオ再生が圧巻だった
新しいMacBook Proは、中低域を担う4つのウーファーと、高音域を再生する2つのトゥイーターにより構成される6スピーカーサウンドシステムを本体左右に振り分けて搭載しました。アップル独自のサラウンド音楽体験「空間オーディオ」に対応するコンテンツが最も心地よく楽しめるMacBook Proです。
Apple TV+で配信が始まったSFスリラー『インベージョン』のシーズン1・第1話、冒頭15分で宇宙開発機関JASAの管制室・通信エンジニアと宇宙飛行士が無線通信を介して静かに言葉を交わすシーン。ささやき声のダイアローグを、MacBook Proの内蔵スピーカーがとても明瞭な輪郭を象りながら浮かび上がらせます。
続く本編28分からのシャトル発射のシーンでは、鳴り響くロケット噴射の轟音をMacBook Proが内蔵スピーカーだけでどっしりと肉厚に再現してみせます。本機と比べてしまうのは酷ではありますが、2020年発売のApple M1チップを搭載するMacBook Airのステレオスピーカーによるサウンドに比べると、空間オーディオ対応の有無と相まってMacBook Proのサウンドは圧倒的な立体感にあふれていることがよくわかります。細かな効果音まで粒立ちがよく、音が回り込みながら移動する感覚も鮮明に伝わってきます。多くのノートPCの中でも最高クラスに評価できるサウンドだと思います。
Apple Musicでステレオ音源の楽曲を聴いてみても、MacBook Proのオーディオシステムの完成度がとても高いことが分かります。ビル・エヴァンス・トリオのアルバム「Detour Ahead」から『Milestones』を再生してみました。ピアノのメロディが力強く躍動し、繊細なニュアンスを引き立てる情報量の豊かさが伝わってきます。低音の滑り出しがとてもスムーズで柔らかく、耳によく馴染みます。ステレオイメージの見晴らしが良く、楽器の音が聞こえてくる方向が手に取るように分かります。
本体底面に配置されているゴム足はMacBook Airに比べると厚みがあり、堅牢なアルミニウム製のボディも音楽再生の重心を下げて安定感を引き出すことに大きな役割を担っています。もし、内蔵スピーカーによる音楽再生、シアター鑑賞のサウンドをさらにレベルアップするのであれば、安価なものでかまわないので、MacBook Proの底面にオーディオ用のインシュレーターやボードを敷くと良いでしょう。
オンライン通話の音声・映像に差が付く高品質
MacBook Proは、ビデオ通話などオンラインコミュニケーションのためのツールとしても強力なパートナーです。3基のビームフォーミング対応のマイクユニットによるアレイシステムは、クリアな音声を収録できるスタジオ品質の出来映えをうたっています。FaceTime通話による音声をMacBook Airと比較試聴してみましたが、なるほど声の輪郭が明瞭で、人の声のイメージが前に迫り出してくるような鮮やかさが感じられました。
フロント側の1080p FaceTime HDカメラの画質は、720p対応のMacBook Airのそれと比べれば違いは一目瞭然です。MacBook Proさえあれば、外付けのマイクやカメラなどの「オンライン会議用アクセサリー」を買いそろえるための予算や手間が省けてしまいます。
MacBook Proは、名前に「プロ」と付いていることや、あまりにぜいたくなスペックが揃っていることから、本格的な映像・音楽制作などに携わる“プロフェッショナル”のクリエイターでない限り、選択肢に入らないモンスターマシンではないかと思われがちかもしれません。筆者はもっと気軽に、多くの方が「いつでもどこでも最高のエンターテインメントを満喫できるノートPC」として、最新のMacBook Proの贅沢な映像とサウンドに触れてほしいと考えます。エンターテインメント鑑賞をメインに使うのであれば、カスタムオプションを付けずに、十分にパワフルな「M1 Pro」チップを搭載するMacBook Proを選ぶのが経済的です。14.2インチモデルが239,800円、16.2インチモデルが299,800円で購入できるのだから、新しいMacBook Proはコスパも最強と考えるべきではないでしょうか。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら