新しい「MacBook Pro」から第3世代の「AirPods」まで:アップルが発表した5つのもの
アップルが2021年秋以降に2度目となるオンラインイヴェントを開催し、噂されていた新型「MacBook Pro」をはじめとする新製品の数々を発表した。事前に明らかにされていた発表会のテーマは「パワー全開」。英語で「Unleashed(解き放たれた)」という言葉の通り、アップルが独自開発したチップ「M1」の能力を新たな次元へと進める内容となっている。
「新しい「MacBook Pro」から第3世代の「AirPods」まで:アップルが発表した5つのもの」の写真・リンク付きの記事はこちら発表された製品は、新たな独自チップ「M1 Pro」「M1 Max」を搭載した2種類の「MacBook Pro」、第3世代となったワイヤレスイヤフォン「AirPods」、そして小型スマートスピーカー「HomePod mini」の新色、「Apple Music」の低価格プランだ。なかでもMacBook Proは、新型チップによって性能面で大幅にアップデートされている。画面サイズが従来よりひと回り大きい14インチと16インチの2種類が用意されたほか、外部接続用ポートが充実するなど大きな進化を遂げた。
以下に今回のイヴェントで発表された5つの技術や製品、サーヴィスについて説明していこう。
1.独自チップの高性能版「M1 Pro」「M1 Max」
アップルがインテル製のチップから独自開発チップへの完全移行を目指し、その大きな一歩となる独自チップ「M1」を発表してから約1年。その高性能版とも言える新しいチップとして、「M1 Pro」と「M1 Max」の2種類が発表された。
M1 ProのCPUは10コア(M1は8コア)で、8つの高性能コアと2つの高効率コアを搭載している。グラフィック処理に関しては「M1 Pro」は最大16コアのGPU(最大32GBのユニファイドメモリー)を搭載し、「M1」の2倍の処理速度を実現したという。「M1 Max」は同じ10コアのCPUに32コアのGPU(最大64GBのユニファイドメモリー)を搭載している。アップルによるとM1 Pro、M1 MaxともにM1と比べて最大70%の高速化を実現し、グラフィック処理能力ではM1 ProがM1の2倍、M1 Maxが4倍に向上した。
アップルは独自チップとなるM1を、「MacBook Air」と13インチ版「MacBook Pro」のエントリーモデルから先行導入していた。このため高性能版が待ち望まれていたが、プロのクリエイターたちのニーズを満たすモデルが投入されたことで、M1のラインナップが出揃ったと言えるだろう。
2.新しい2種類の「MacBook Pro」
全面刷新された新しいMacBook Proは、発表会の映像や写真を見た限りでは、見慣れたMacBook Proの姿と大きく変わらないようにも感じられる。だが、実際のところディスプレイのサイズが14.2インチと16.2インチとひと回り大きくなっている。
いずれもミニLEDテクノロジーを採用した「Liquid Retina XDRディスプレイ」をMacBook Proとして初めて搭載した。「iPhone」が搭載している有機ELディスプレイのような深い黒は表現できないが、それに近いレヴェルの明るさとコントラストで定評がある。また、リフレッシュレートを最大120Hzで可変させる「ProMotionテクノロジー」も採用しており、コンテンツの動きがより滑らかに表現される。その仕組みについては別の記事でも詳しく説明しているので、参照してほしい。
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ディスプレイの上部にはノッチ(出っ張り)があり、そこにヴィデオ通話用のカメラが配置された。センサーが大型化されたことで解像度は旧モデルの720pから1,080pへと向上し、取り込める光の量を示すF値は2.0となった。これにより、明るさが足りない場面でのカメラのパフォーマンスが2倍になるなど、“Zoom時代”に合わせたアップデートとなっている。
ただし、同じノッチでもiPhoneとは異なり、赤外線センサーなどを統合した「TrueDepth」カメラは搭載されていない。このため顔認証機能「Face ID」には対応しない。代わりにキーボードの電源ボタンに指紋認証「Touch ID」に対応した指紋センサーが内蔵されているので、指先ひとつでロックの解除が可能だ。
また新しいMacBook Proでは、ファンクションキーの代わりになるタッチインターフェイス「Touch Bar」が廃止され、物理ファンクションキーが復活した。使用中のアプリに応じてキーの表示と機能を変えて利便性を向上させるアイデアが“失敗”だったことを、どうやらアップルは認めたようである。
復活したのは物理ファンクションキーだけではない。注目すべきは、旧モデルで廃止されていたポート類の復活だろう。新しいMacBook ProにはHDMIポートのほか、「Thunderbolt 4」に対応した3つのUSB-Cポート、SDカードスロットが搭載された。これで接続アダプターやUSBハブといった余計なものを使わなくても済む場面が増えることになる。さらにヘッドフォンジャックは、音の再現性が高いハイインピーダンスヘッドフォンに対応している。
もうひとつ重大な“復活”がある。2016年に廃止されていたマグネットによって電源ケーブルを固定する「MagSafe」が「MagSafe 3」として戻ってきたのだ。「iPhone 12」以降に搭載されたシステムのようにアクセサリーを取り付けるような仕組みにはなっていないが、過去のMacBookシリーズのように電源ケーブルをマグネットで固定できる。なお、USB-Cポートからの充電も引き続き対応するので、既存の電源アダプターも利用できる。
音質の面でもアップデートがあった。新しいMacBook Proにはスタジオ品質を謳うマイクのほか、6つのスピーカーで構成されるサウンドシステムが搭載された。スピーカーは2つのトゥイーターと4つのウーファーで構成されており、低音域を80パーセント多く再生できるほか、空間オーディオに対応している。
バッテリー駆動時間は従来モデルを大幅に上回る水準で、ヴィデオ再生時間にして14インチモデルで最長17時間、16インチモデルで21時間を謳う。急速充電にも対応しており、30分で最大50%の充電が可能だという。
新しいMacBook Proの基本モデルは、どちらのサイズもRAMが16GB、ストレージ容量が512GBからとなっている。価格は14インチモデルが23万9,800円から、16インチモデルは29万9,800円からとなる。どちらも予約の受付を開始しており、10月26日に発売される。
CPUはM1 Proが標準で、さらに高い処理能力を求める場合はM1 Maxを選べる。M1 Maxを搭載した16インチモデルの最上位構成を選ぶと、価格は70万5,800円にもなる。
なお、最新のOS「macOS Monterey」が日本時間の10月26日にダウンロード可能になることも発表されている。
3.第3世代の「AirPods」
「AirPods Pro」の発売から2年、「AirPods Max」の発売から約1年を経て、第3世代となるワイヤレスイヤフォン「AirPods」が発表された。
旧型のAirPodsは、必ずしも“完璧”とは言えない製品だった。イヤーチップがないことでフィットしづらく外れてしまうこともあり、音量が大きいと音が外に漏れてしまう弱点もあった。それに防水・防塵機能がないので、ワークアウトにはあまり向いていない。
第3世代モデルでは新設計のドライヴァーとハイダイナミックレンジのアンプを組み合わせたことで、よりパワフルな低音域と鮮明な高音域の再生を実現したという。また耐汗耐水性能を備えたことで、ようやくワークアウトの際にも安心して使えるようになった。
だが、残念ながら新モデルでもイヤーチップはない。アップルによると、デザインを刷新したことで人間工学に基づいてフィット感を高めているという。この点は実機での検証が必要だろう。
新しいAirPodsは、これまでAirPods MaxやAirPods Proでしか対応されていなかった空間オーディオにも対応した。ドルビーアトモス(Dolby Atmos)などによる臨場感のある映像表現を体験するためのハードルが、これまで以上に下がったと言っていい。
バッテリー駆動時間は従来モデルの5時間から1時間長い6時間となり、しかも専用のケースはMagSafe充電器によるワイヤレス充電にも対応する。わずか5分で1時間相当の充電が可能になったという。
とはいえ、6時間というバッテリー駆動時間は、ノイズキャンセリング機能がないワイヤレスイヤフォンとしては決して優れた性能というわけではない。他社製品にはバッテリーが8時間もち、急速充電機能も備えたモデルもある。
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第3世代AirPodsの価格は23,800円で、AirPods Proの30,580円と比べるとリーズナブルになっている(同じタイミングでAirPods ProのケースもMagSafe対応にアップデートされた)。なお、第2世代のAirPodsは16,800円で引き続き販売される。第3世代AirPodsの予約受付は始まっており、10月26日に発売される。
4.「Apple Music」の低価格プラン
音楽配信サーヴィス「Apple Music」には、新たに低価格のサブスクリプションプランが追加された。「Apple Music Voiceプラン」は音声アシスタント「Siri」から利用できる専用プランで、利用料は月額480円となっている。
「Voiceプラン」という名の通り、MacやiPhone、iPadのアプリからはApple Musicを利用できない。あくまでSiriに話しかけることでのみ音楽を呼び出せる仕組みだ。音声操作でインターネットラジオを呼び出して楽しむことに慣れているユーザーや、決まった音楽を聴くことが習慣になっている人とっては便利かもしれない。通常プランのほぼ半額という点も魅力的だ。
5.カラフルになった「HomePod mini」
小型のスマートスピーカー「HomePod mini」に、新たにイエロー、オレンジー、ブルーの3色が追加された。従来のホワイトとスペースグレイも含めれば5色展開となったわけだが、特に機能面での進化があったわけではない。
とはいえ、過去のレヴュー記事を参照すればわかるように、iPhoneをはじめとするアップル製品のユーザーにとっては、すべてシームレスで使い勝手がよく仕上がっているスピーカーだ。価格は従来モデルと同じ11,880円で、11月に発売される。
※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら。