明治通りは渋谷区の恵比寿橋付近で、上下線の高さが異なる特異な構造になっています。なぜこのような道路構造になっているのでしょうか。

15年ほど前に生まれた特殊構造

 東京の「明治通り」は池袋から恵比寿あたりまでJR山手線と並行していますが、渋谷区の恵比寿駅付近にある渋谷橋交差点で山手線から離れ、東進して三田方面へ向かいます。

 その渋谷橋交差点から、恵比寿橋入口交差点まで約200mの区間では、少し変わった道路構造になっています。ここでは上下線の道路の高さが異なっており、新宿方面の車線は三田方面の車線よりも低く「沈み込んだ」形です。なぜこのようになったのでしょうか。


上下線で高さが違う明治通り(乗りものニュース編集部撮影)。

 この場所が現在の形になったのは2005(平成17)年。渋滞が多発し歩道も狭かった渋谷橋交差点と天現寺橋交差点のあいだ約1kmを都市計画道路として南に拡幅したのです。

 この区間は南側に渋谷川が並行しています。かつては明治通りと渋谷川の間に道路が1本ありましたが、拡幅によって、その道路までが明治通りの道路敷に含まれることになりました。

 渋谷川はかつて武蔵野台地を深く開削し、すり鉢状の「渋谷」の街を形成しましたが、現在も渋谷川は深い谷のような姿となっています。

 そのため、明治通りから渋谷川の河岸までは著しく高低差が生じており、道路拡幅にあたってもその高低差がネックとなりました。つまり、元の明治通りの高さにあわせて拡幅すると、渋谷川とのあいだにある家屋との段差が生じてしまいます。その逆もまたしかりで、現道の高さを下げるとなると、今度は沿道の北側の建物の出入口と段差が生じてしまうほか、地下を走る東京メトロ日比谷線との離隔も確保できなくなる可能性があります。

 東京都建設局によると、拡幅部を設計するにあたっては、前後の交差点の高さ(現道と同じ)、拡幅先の標高などを条件に道路高さを決定し、その結果として「沈み込むような」縦断線形が生まれたといいます。なお、雨水が底の部分に溜まることのないよう、雨水マスは水理計算を行ったうえで排水能力にあったものを設置しているとのことです。