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 京都の鴨川沿いに、レトロな雰囲気の食堂『篠田屋』があります。その入り口には、「皿盛」と書かれた謎のワード……。料理名からメニューの内容を想像しようとしても、皿に盛られた料理というだけではあまりに手掛かり不足です。

 京都と大阪を結ぶ京阪電車の三条駅を降りると、そこは京都を代表する鴨川の風景。その鴨川に架かる三条大橋からすぐの場所にあるのが、今回ご紹介する『篠田屋』です。

 創業は明治37年で、110年をゆうに越える老舗店。お店の歴史も気になるけど、目を引くのは先ほども述べた通り、提灯に書かれた「皿盛」という聞きなれないメニューです。

ノスタルジックな雰囲気のお店の壁にはメニュー札

 店内の壁にはうどんや丼物など、いわゆる食堂メニューのラインナップがズラリと並んでいます。その札の隣にも「皿盛」を発見。あまりに気になって食べてみると、京都の人に長年愛されているちょっと不思議で懐かしい絶品メニューでした。

「皿盛」の正体はちょっと風変わりな味わいのカツカレーだった!

篠田屋の皿盛(750円)

「皿盛ください」と伝えて、しばらく待っていると運ばれてきたのがこちら。なるほど、確かに皿に盛られているので「皿盛」、間違いないです。

 お皿に盛られたごはんとカツ、その上にはルーが掛かっています。パッと見たところだと、皿盛の正体はカツカレー。しかし実際に対面してみると、ものすごくダシのいい香りがします。

 お蕎麦屋さんなどで見かけるルーにダシを使っているカレーより、さらにダシっぽい感じ。それにカレーのとろみとは何だか違う感じにトロッとしてます。

 メニュー名も不思議なら料理内容もちょっと不思議……それでは実際に食べてみましょう。

 まずはルーとごはんを一口。やはり思った通り、ルーのウェイトとして、ダシの風味が強烈です。しかも具材の中で存在感があるのはネギで、とろみの正体は片栗粉でした。

 ダシの効いたカレーだと思っていたルー。実はカレー風味のあんかけうどんダシで、それがご飯に掛かったものが皿盛の正体だったんです。

 ちょっと不思議だった料理も正体が判明すると、グッと美味しく感じられます。薄く揚げられたカツはサックサクで、ダシの効いたルーによく合います。初めて食べるのにどこか懐かしい味わい。

「皿盛」は最初、お客さんからの「トンカツを乗せた丼にカレーうどんの餡かけを乗せて食べたい!」というリクエストに応えて誕生したそう。最初は丼だったのが、より手早く食べられるように皿に盛って提供し始めたことで、「皿盛」という名前になったそうです。

 ちなみに筆者が食べている間も旅行者や近隣の若者など、多くの人が皿盛を頼んでいました。世界の観光地・京都の町中にあって、長く愛されているお店とメニューなんだなと実感しました。

『篠田屋』では皿盛のほかにも、天ぷらや肉、玉子などの具材が丼に乗った「デラックス丼」など、謎のメニューが提供されています。

 昭和の懐かしい雰囲気が漂う店内には、かつて京阪電車が地上を走っていたころの京都の街並を撮影した写真もたくさん。京都のランチにぜひ訪れてみてください。

(撮影・文◎けいたろう)

●SHOP DATA

篠田屋(シノダヤ)

住:京都府京都市東山区三条通大橋東入大橋町111
TEL:075-752-0296
営:月~水、日・祝日11:30~15:00、16:30~18:00、木・金11:30~15:00
休:土曜

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。