北朝鮮刑務所の闇「拷問人形」に米人権団体が注目
米国のNGO、北朝鮮人権委員会(HRNK)は先月、平壌の東側、勝湖里(スンホリ)にある第8号教化所(刑務所)に関する報告書を発表し、所内において深刻な人権侵害が行われていると訴えた。
HRNKによれば、所内では収監者が中国に輸出される人形の生産に当たっており、作業班ごとに割り当てられたノルマをこなせなければ、拷問を受けることもあるという。
また、そうした作業に動員されているのは、主として女性収監者だとしている。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
HRNKの報告書は、かつてこの教化所に収監されていた脱北者らの証言を基に作成された。2000年代初めに収監されていた脱北者によると、同教化所には当時、1500〜1600人の収監者がいたと見られ、そのうち1000人が男性、残りが女性だったという。
同団体はまた、衛星写真などを通じ、同教化所が2015〜2020年にかけて拡張されたと分析。現在はよりおおくの人々が収監されていると見ている。
人形の生産では、主として眉毛を付ける作業が行われ、労働は早朝5時から夜10時まで続く。ノルマを達成できないと、熱い床に正座させられ、そうすると5分ほどで火傷が生じるという。
前述したように、こうして作られた人形は、中国に輸出されている可能性がある。
中国は最近、6日にオンラインで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の地域フォーラム(ARF)で、王毅国務委員兼外相は朝鮮半島をめぐる情勢について「行き詰まりを打破する効果的な方法は、対北朝鮮制裁を緩和することだ」と指摘。
また、「米韓合同軍事演習は現在の情勢の下で建設的ではなく、米国が本当に北朝鮮との対話を回復しようとするなら、情勢を緊張させるいかなる行動も取ってはならない」とも発言し、北朝鮮への肩入れを隠そうともしなかった。
その最大の目的は、対立が深まる米国へのけん制だろう。しかし、北朝鮮情勢を材料にした中国の対米けん制は、いずれ痛烈な反撃を招く可能性がある。北朝鮮と中国の間には、この「拷問人形」だけでなく、強制労働と制裁破りの疑いが持たれている北朝鮮労働者の受け入れや、脱北者の強制送還など、国際社会の注目を引くとマズイ問題が、少なからず存在するからだ。