自己肯定感が低くなる理由と、心のクセの直し方「誹謗中傷にも強くなる」
ズバリ、自己肯定感が低い人の原因は“メンタルノイズ”のせいだと説くのは、今まで8000人の悩みを解消してきた人気心理カウンセラーの山根洋士さん。
“メンタルノイズ”とは、自分の心の邪魔をする無意識の心のクセ=心のノイズのことを山根さんが表現した言葉だ。「どうせ私なんか」「無理、できない」「失敗したらどうしよう」「嫌われたくない」と思いためらってしまうことは誰にでもあるもの。
山根さんによれば、人の行動の9割は無意識に行われているとされ、6歳までの体験や記憶が潜在意識に蓄積されてノイズの素になるのだそう。そして、ノイズはその後も生きる過程で、どんどん増えていく。
「自己肯定感の低い人に必要なのは、自己肯定感を高めることではない」と山根さんは言う。大事なのは、まず自分の“メンタルノイズ”に気づくこと(自己認知)であり、悩みや問題に直面したときに、いい面も悪い面も含めて、今の自分に納得できる“自己納得感”だと──。
ここでは、まず自己肯定感が低くなる理由と、その心のクセの直し方を紹介しよう。(※本稿は、『「自己肯定感低めの人」のための本』(山根洋士=著、アスコム)の一部を再編集したものです。)
なんでもジャッジしてませんか?
人は誰でも、物事の良い・悪いを自分なりに判断して生きています。泥棒は悪いことだと思いますか? と質問をすれば、ほとんどの人は悪いことだと答えるでしょう。そうやって常に〇と×というジャッジを下しているんですね。
でも、あなたの自己肯定感が低くなるのは、そのジャッジのせいだということに気がついているでしょうか?
あなたのジャッジの基準は、かなりノイズの影響を受けています。例えば「兄弟では年上が我慢しないといけない」とか「言いたいことを言うのは悪いこと」などという基準を勝手に作ってしまいます。
まわりがジャッジしているわけではないのに、潜在意識にある記憶や経験から、「そうすべきなんだ」と思い込んでいるのです。
ですから、メンタルノイズに気づくことができたら、その偏ったジャッジの呪縛から逃れることができます。
こんなふうに、どっちかが〇だ×だと決めるのはノイズの影響です。
痩せている=〇 太っている=×
自分を抑える=〇 言いたい放題に言う=×
自信満々=〇 気弱=×
決めるのが早い=〇 優柔不断=×
話がうまい=〇 口べた=×
では今度は次のジャッジを見てください。
ガリガリ=× ふくよか=〇
主張が弱い=× はっきりしている=〇
傲慢=× 謙虚=〇
せっかち=× 慎重=〇
おしゃべり=× 思慮深い=〇
どうですか? ちょっと見方を変えたら、○と×なんて簡単に入れ替わるんです。あなたもジャッジをしそうになったら、「またノイズが出てる」と思って、やめてみてください。
世の中の大抵のことは「どっちでもいい」んです。
ネガティブなジャッジを防ぐコツ
ジャッジをやめようといっても、そう簡単にはできないかもしれません。そんなあなたにオススメなのが「インナー舎弟」です。
自己肯定感が低めの人は、どんなジャッジにせよ自分を×にしてしまう傾向があります。このインナー舎弟は、そんなネガティブなジャッジを防いでくれる、ちょっとした思考のコツです。
あなたの中に、なんでも自分を持ち上げてくれる子分のような人がいると思ってください。わかりやすくいうと、ものすごい太鼓持ちです。
そしてなんでも褒めてもらう。例えば、手にコップを持ったら「コップ持ったよ、すげえ!」 、ジュースを飲んだら「ジュース飲んだ、素晴らしい!」 、窓を開けたら「窓を開けるなんてすごい!」 、箸を使ったら「箸が使えるんだ!かっこいい!」という具合に、些細なことをなんでも褒めてもらうんです。
くだらないと思うかもしれないですが、心のクセを直すには反復が一番です。繰り返すうちに、少しずつネガティブジャッジをやめられるようになります。
どっちでもいい精神で誹謗中傷に強くなる
ジャッジをやめることには、誹謗中傷に強くなる効果もあります。
社会問題化してきている、ネット上の誹謗中傷。自分が誹謗中傷を受けるのは当然つらいですが、人が被害を受けているのを見るのも嫌ですよね。
悪いのは、もちろん誹謗中傷する側ですが、それを自力で止めるのは無理です。今のところは、アカウントを閉鎖してSNSを止める、くらいしか方法がありません。でもそれって、どこか納得いかないですよね。
そんな誹謗中傷に対して、覚えておいてほしいことがあります。
まず、誹謗中傷する人は、自己肯定感が低いということ。むやみに他人を攻撃したり、ムキになったりするのは、自信のなさやコンプレックスの裏返しです。ですから仮にあなたが攻撃を受けたとしても、自己否定する必要はありません。相手も弱いのです。当事者のつらさは本人にしかわからないので、あまり勝手なことは言えません。でも相手も自己肯定感が低いのだと思えば、少しは心の逃げ場ができるかもしれません。
そして、誹謗中傷に傷ついてしまうのは、たくさんの人に認められたいという欲求があるからです。認められたいという承認欲求は誰にでもありますが、それが大きすぎると、反動で心にダメージを受けてしまうことがあります。
そんなときこそ、ジャッジをやめて「どっちでもいい」精神になることです。一方で否定されていることも、一方では肯定されることは、多々あります。見方を変えればジャッジは変わる。だから、あなたが否定されることも、肯定されることも、どっちもあるのが自然なのです。
もちろん、悟りでも開かない限り、承認欲求がまったくなることなんてありません。好かれたいし、ちやほやされたいし、人気者になりたいのが人間ですからね。だから、インナー舎弟や、ごくごく身近な人にだけ認めてもらっておきましょう。
SNSに投稿する前に、友だちや家族に話して「すごい」と言ってもらう。これだけで、承認欲求を軽くすることができます。
《PROFILE》
山根洋士 ◎これまでに8000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラー。心理学だけでなく、数多くの経営者やプロスポーツ選手、芸能人等への取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れた、メンタルノイズメソッドを開発。実践中心のカウンセリングで一線を画す。すぐに実践できるワークと、論理的なセッションで好評を博している。