旅行ジャーナリスト小野アムスデン道子さんが、世界中・日本中を巡って出合った「名店の味」のなかから家でも簡単に再現できるレシピをご紹介します。

今回は、京都・嵐山にある水辺の私邸がコンセプトの「星のや京都」で、ひと味違う朝鍋のだしのひき方を教えてもらいました。おまけの一品では、だしをひいたあとの昆布も使います!


星のや京都のレシピ

星のや京都の絶品「だし」レシピ




「星のや京都」へは、嵐山の渡月橋たもとから専用の舟に乗って行きます。四季折々に美しい嵐峡をのんびり眺めての別世界への旅のようです。「星のや京都」は、この舟が遡る大堰川(桂川・保津川)や高瀬川を開削した京都の豪商“角倉了以”が別邸をかまえた場所にあります。


すべての部屋から、この大堰川と嵐峡の素晴しい眺めを見ることができます。京唐紙が壁を彩り、障子や欄干など美しい日本建築の空間で、畳ソファに座って寛いでいると時間を忘れそう。


野点や聞香など、京都らしい文化に触れるアクティビティや、専用の屋形舟での舟遊びなども用意され、世離れた時間が過ごせる贅沢な宿。ミシュランガイドで最高ランクにあたる「5パビリオン」の宿として11年連続で掲載されています。


朝食は、緑を眺めてゆったりとお部屋でいただきますが、手づくりのお豆腐や焼き鮭などとともに朝から「京都の朝鍋」が! 具材は京野菜やお揚げとシンプルなのですが、おだしが抜群においしくて、体にしみ入るようです。


いったいどうやったら、こんなにおいしいおだしが引けるのか? 今年、料理長に就任した高橋利治さんにその秘訣をお聞きしました。



●「星のや京都の朝鍋」のだし



【材料とつくり方】

(1) 前日夜に、鍋に水と昆布を入れて一晩おく。水1リットルに対し昆布は約25g。

(2) 鍋を火にかけて沸騰直前で昆布を抜き、好みの量の鰹節を加えて火を止める(水1リットルに対しカツオ節は約20g)。
※専門店では昆布の色が出てしまうことを嫌うため、火にかける前に昆布を抜きますが、家庭であれば沸騰直前に抜くので問題ないとのこと。えぐみが出ないよう、鰹節をいれたら火を止めるのがコツです。

(3) (2)のだし:みりん:薄口しょうゆ=10:1:1の割合でととのえて完成。みりんが入ることで、味がまろやかになり、だしの香りがたちます。

さらに星のや京都では、季節に合わせて昆布とカツオ節の配合を変えるなどしており、味の奥行きがひと味違います。
ちなみに昆布屋さんでは、毎朝水出しの昆布だしをコップ1杯のむのが日課だそう。前日から漬けることで、ゆっくりと昆布の芯まで水がいきわたり、うま味やミネラルを引き出してくれるとのこと。

だしをひき終わったあとの昆布でつくる佃煮のつくり方



さらに、高橋料理長からもう1品ということで、だしをひき終わったあとの昆布でつくる佃煮のつくり方も教えていただきました。



●昆布の佃煮



【材料とつくり方】

(1) だしをひき終わった昆布を冷凍しておく。

(2) 500gほど昆布がたまったら、まとめて一口大に切る。

(3) 鍋に(2)を入れ、酒と水を1リットルずつ加え、圧力鍋に30分かける。

(4) 砂糖を50g、みりんを100g、薄口しょうゆを300gを加えて炊き上げて完成。

お好みで山椒やふきのとうなど香りがあるものと一緒に炊き上げたり、春先はタケノコ、秋はシイタケやマツタケなど、旬の食材をその時々で合わせると、まさに季節を感じる一品に!

この佃煮は星のや京都ダイニングで出されています。
贅沢なお宿でも「食材を余すことなくおいしく使う」日本料理の心意気を感じてほしいレシピです。

<取材協力/星のや京都 撮影・取材・文/小野アムスデン道子>