殺人犯の少年に共通する“猫虐待”の過去、動物を傷つけるわが子に親がすべきこと
凶悪犯罪者には殺人の前に猫を殺しているケースが多いといわれている。その時点で親が止められるのではないか。そもそも猫を殺す前に予兆があるのでは? アリやセミは大丈夫?不安になったお母さん、一緒に考えてみましょう。
動物殺傷は凶悪犯罪を引き起こすサイン?
「猫を殺した時点でどうにかできなかったのか─」
5月、茨城一家殺傷事件で、死亡した夫婦に対する殺人容疑で逮捕された岡庭由征容疑者(26)。彼の凶悪な素顔が報道されるとSNS上では冒頭の声があふれた。
「岡庭容疑者は、平成23年の16歳だった当時、女子中学生の顔を刃物で切りつけたとして殺人未遂容疑で逮捕されています。当時の供述で“最初は遊びのつもりで猫を殺していたが、対象が動物から人間、女の子に変わった”と言っています。通り魔事件を起こす前には、高校に切断した猫の生首を持ち込んでトラブルになったこともあり、この段階で周囲が対処できたのでは、と思う親御さんは多くいる」(全国紙社会部記者)
猫を痛めつけるのは凶悪犯罪を引き起こすサインなのか。
「必ずしも凶悪犯罪に結びつくわけではないですが、動物をいじめていたケースが多いです」
とは犯罪心理学に詳しい碓井真史教授。そのうえで、
「神戸児童連続殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗は猫を殺すだけではなく、接着剤で目をくっつけて開かなくしたり、猫の舌を切ってコレクションしていました。'14年に名古屋で77歳の女性を殺害した女子学生、佐賀バスジャックの事件の少年もそう。凶行の前に猫を痛めつけ、殺しているのです」
と、動物をいじめていた過去の犯罪者をあげる。岡庭容疑者についても、
「茨城で殺人を犯す前に3つの機会がありました。1つ目は、猫の首を学校へ持って行きトラブルになったとき。このときにもっと話を聞いてあげるべきだった。また、専門機関に相談することを選択してほしかった。その後すぐに通り魔事件を起こして次は医療少年院に入りますよね。ここでも機会があったのに矯正が不十分だったといわざるをえない。
最後に、医療少年院を出た後。家でフラフラしている状態でアフターケアがまったくできていなかった。ここでしっかりとケアができていれば茨城の小林さん夫妻が亡くなることはなかったのでは。悔やまれます」(同・前)
犯罪の児童心理に詳しいジャーナリストの渋井哲也さんは、
「未成年の凶悪犯罪者のニュースがあると、同じ年ごろの子どもを持つ親御さんから相談がきます。自分の子どもが猫を殺していたらどこに言えばいいんですか?と。警察に言ったら子どもが逮捕されてしまうかもしれないし、学校に言ったら進路に影響しかねない。ひとりで抱えているお母さんは意外と多くいるんです」
と言う。続けて、
「でもちゃんと子どもを見ていれば、猫を殺す前の段階で止められます」
と力強い。わが子を猫殺しにさせないためにできることとは?
アリ・セミなどの昆虫を傷つけていたら
「幼い子どもが生き物を殺すことは好奇心であって、普通といっていいでしょう。大人から見たら残酷でかわいそうと思うことでも、まだ知識が芽生えていないうちにそういった経験をして成長していく。目くじらを立てる必要はありません」
ここで気をつけるべきポイントを碓井教授は、
「殺し方を見てください。いつも注意深く見ていれば、子どもの危険な表情を見逃しません。大人が見ても怖いと思うような場合は優しい声かけをしてみてください」
“誰とやっているか”を注視したほうがいいとは渋井さん。
「対等な関係の友達とやっているならば問題ありません。小学生が幼稚園児と、中学生が小学生と、など自分よりも下の子とやっていたら問題です。力を誇示したくてやっている可能性が高いからです」
どのような声かけをすればいいのだろうか。
「頭ごなしに叱ったりするのはやめて、まずは何をしているかを聞かなければいけません。この時点で親子で言い合えるような関係性ならば問題はさほど大きくないです。普段から会話がない関係性の場合、相談機関(※)に連絡したほうがいいでしょう」
哺乳類を傷つけていたら
「哺乳類に残酷なことをするとこれは捨て置けない。全部が危険なわけではありませんが、子どもが何らかのメッセージを発しています。その子自身がいじめられている鬱憤を動物に向けている可能性が高いです。
その際にイライラしながら動物にやつ当たりしているなら“どうしたの?”と聞きながら親も一緒に考える。その場で終わりにすることはせずに、子どものストレスを取り除く解決策を探したほうがいいです」
と、碓井教授。そのときに気をつけるべきポイントがあるという。
「親が子どもを化け物を見るような目で見ては絶対にいけません。子どもは汚らしいものを見る目で自分を見ている、ということを感じ取ります。その場合はエスカレートしていってしまいます。このときの親の反応が非常に大切になってきます」(碓井教授)
子どもがストレスを小動物にぶつけていてもどんと構える覚悟が必要だ。
動物をいじめている時の表情に注意
未成年の凶悪犯罪者の供述でよくあるのが「人を殺してみたかった」というものだ。
前出の碓井教授は、
「動物をいじめていることに喜びを感じている場合、苦しむ姿を見てうれしそうにしていたら専門機関(※)に相談してください。その場合は性的嗜好の可能性が高いので、親の力では限界があります。
また、自分の子に“あれ?”と思うことがあっても、わが子を信じたい親御さんが多いので心配の芽が出ているのに安心したくてつぶしてしまう方が多いです。相談することは恥ずかしいことではありません。むしろ正しい道に戻せるチャンスと思ってどんどん相談してください」と、語気を強める。
前出の渋井さんも、
「猫を殺すところまで行き着いていたら親御さんも病んでいる場合が多いです。親子でメンタルクリニックを受診するという選択肢も忘れないでください。ひとりで抱え込まないことが大事です」
人の命より重いものはない。わが子に異変を感じたら迷うことなく相談することが多くの人を救う。
月曜日から金曜日の9時から17時まで(祝祭日除く)無料
「家庭内でのしつけについて悩んでいる、などの相談を心理学等の専門的知識を有する職員が丁寧に聴き出します」