長引くコロナにより、運動不足で太ってしまったり体力が落ちてしまったりと実感している人は多いのではないでしょうか? でも、スポーツジムには行けないし、おうちの中でも激しい運動は続く気がしない…。最低限、なにをすればいいのでしょう?
フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんに教えてもらいました。


本気で運動しなければ…わかってはいるんだけど…(※写真はイメージです。以下同)

自宅で運動不足を解消する方法。下半身だけでOK!



コロナ禍で思うように外出できず、運動不足や体重増加に悩む人も増えています。在宅中心のあまり動かない生活スタイルでは、運動不足によって筋肉量が減り、基礎代謝や糖代謝にも影響が出るといった、よくない循環が起きやすいといいます。
そんな悩みを解消するため、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんに、家の中でも行うことができる運動や、運動を取り組む時間について聞きました。

●外出できない今、自宅でできる効果的な運動はスクワット



――現在、前のように外出できなかったり、ジムも時短や休業といった対応で思うように運動できない人が増えています。自宅で体型や健康維持のためにできる運動があれば、教えてください。

中野さん:人の体は、下半身(お尻から太ももにかけて)に、いちばん大きな筋肉群がついています。運動不足で落ちやすい筋肉は下半身です。自宅でのトレーニングも、この下半身の筋肉をきたえる運動から始めるのがいいです。

下半身のトレーニングと聞くと、おそらくスクワットを想像する方が多いと思いますが、日常動作が問題なくできている方にとっては、一般的なスクワットでは強度がちょっとたりません。そこでぜひ取り組んでほしいのが、片足でおこなう「スプリットスクワット」や「シングルレッグスクワット」です。

・スプリットスクワット


(1) 背筋を伸ばし、足を肩幅くらいに前後に大きく開きます。

(2) 前に出した足に体重をかけ、腰を下げます。このとき後ろの足も曲げていきます。

(3) 後ろの膝が地面につかない程度に限界まで腰をおろし、前の足に力を入れながら腰を上にあげ、元の位置に戻します。

(4) 足を入れ替え、それぞれ20回(1セット)おこないます。

・シングルレッグスクワット


(1) 自分の膝の高さくらいの椅子やベンチを用意し、体の後ろに置きます。

(2) 真っ直ぐ立った状態で、片足のつま先を後ろのペンチにかけます。

(3) 背筋を伸ばし、ベンチにかけていない足をゆっくりと曲げます。

(4) 太ももとふくらはぎが90度になったら止め、ゆっくりと(2)の状態に戻していきます。

どちらも片足ずつ20回を、できる方は1日2〜3セットを目標におこないます。難しい方は、最初は片足5回ずつでも大丈夫。少しずつ回数を増やせるよう頑張りましょう。
これらスクワットは、毎日行うのが理想ですが、週3〜4回のトレーニングでも効果があります。

スクワットが苦手な方や強度が高く感じる方は、踏み台昇降運動をテレビを観ながら行うのもいいでしょう。健康増進のためには、運動は週150分が理想といわれています。これは1回で150分連続して行うよりも、1回30分を週5日などと、こまめにおこなった方がいいです。今まで通勤にかけていた時間を運動にちょっと使ってみる意識で、取り組んでみてはいかがでしょう。

――自宅運動をやるとき、女性ではヨガをおこなう方も多いように思います。こうした負荷の少ないトレーニングも、30分の運動時間に含んでいいのでしょうか?

中野さん:ヨガは気持ちのコントロールを目的に行うならとてもいいのですが、筋肉をつける目的でやるなら最適な方法ではありません。勉強に置き換えて考えてほしいのですが、頭がよくなりたいといっても、読解力を上げたいのか計算力を高めたいのかで取り組む科目は異なりますよね。体も同じで、筋肉をつけたいなら筋トレがいちばんだし、精神的なコントロールならヨガといったように使い分けることがベストです。

●運動は食後30分以内がおすすめ




――運動を行う時間について、ダイエット目的は空腹時がいいとか、夕方や午前がいいとか、取り組む時間についてもさまざまなことが言われています。最適な運動の取り組み時間についても教えてください。

中野さん:時間は自分が続けやすい時間であれば、いつでもいいと思います。ただもう一歩踏み込んで目的を意識して時間を決めたいのであれば、今体についている脂肪を落とすなら空腹時、食べた糖の消費を目的にするなら食後30分程度と覚えておいてください。

食後30分程度で食べたものがブドウ糖となり、血中は高血糖になっています。このタイミングで糖を消費しきってしまえば、理論上私たちは食べても太りません。よく食後の運動は横っ腹が痛くなるといった話がありますが、先程ご紹介した家でできるレベルの運動では、おそらく大丈夫です。痛くなるようでしたらご自身の体に負荷がかかりすぎている証拠ですから、運動レベルを下げて行ってください。

一方で、空腹時の運動では、体にすでについた体脂肪から消費されやすい傾向があります。今ある内臓脂肪に困っている方は、空腹時の運動でもいいかもしれません。

――運動習慣というと、外へ出て汗をかいたり、長時間動き回ったりすることが運動と思われがちです。しかし自宅で行う運動もきちんとした効果は実感できますし、小さなスタートを効率的にきることから始めることが、習慣化を身に着け、確実な変化につながりそうですね。

<取材・文/おおしまりえ>

●教えてくれた人
【中野ジェームズ修一さん】



フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くから「モチベーション」の大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍を続けている。著書多数、近著に『フィジカル×メンタル 最新研究が実証した疲れない体大全
』(SBクリエイティブ刊)、『60歳からは脚を鍛えなさい 一生続けられる運動のコツ
』(PHP研究所刊)がある