【ファンキー通信】エッ・・・剃り損ですか!? 〜「剃毛」の真実〜

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 「アンダーへアを剃る」という行為は、一部のマニアの方を除けば、喜ばしいことではない。特に女子の場合、ボーボーに生えていれば「私ってもしかして・・・濃い? 恥ずかしい!」と思うが、剃ったら剃ったで「全部剃るのは・・・恥ずかしい!」という状態になりかねない。しかし、そんなことはお構いなしに陰毛を処理しなければならない場面がある。それは手術前の「剃毛」(ていもう)だ。
 
 盲腸など下腹部の外科手術を施すとき、「手術中、傷口に毛が混入して細菌感染する恐れがあるので・・・」というような説明を受けて、陰毛を剃り落とすわけだが、実はこの「剃毛」の処置、逆に感染を引き起こしやすくなるらしいのだ。神経内科医で医療社会学者の美馬達哉先生のお話によれば、「剃毛の感染予防結果について、科学的な客観評価をしたところ、無意味どころか有害だという結果がでている」(日経BP社サイト「SAFETY JAPAN」のコラムより)のだとか。その上、術後の傷口の細菌感染リスクが、毛を剃らない場合の10倍に跳ね上がるという結果も出ている。

 「人間の皮膚には表皮ブドウ球菌という常在菌があり、それがカミソリを使ったときの目に見えない小さな傷口に入り込んでしまう場合があるのです」(美馬先生)

 人に恥部の毛を剃ってもらうこと自体屈辱的なのに、細菌感染の恐れがあるとは・・・。なんとも踏んだり蹴ったりである。では、なぜ毛を剃らなければならないのか? それは医療者の「ゲン担ぎ」や、毛に対する宗教的な意味づけが絡んでいるのだという。昔から人間の毛は「不潔」だという考え方があり、出家する時に髪を剃り落として身を清めるのと同じように、剃毛することで象徴的に身を清める作用があるそうだ。

また、手術は人の生死に関わる、非常に大きな責任がのしかかる行為。そんな状況の中で医療者は多大なストレスを感じるのだそう。それを少しでも軽減するために、医学的に有効か否かは置いといて、これまで手術の慣例となっている「剃毛」を「ゲン担ぎ」的に行っているという理由もあるらしい。

 ちなみに現役医大生に、学校で剃毛の仕方や細菌感染リスクについて習うのかどうか聞いてみたところ、実際に病院で研修に入るまでは、剃毛については一切習わないとのことだった。現役看護士にも同じ質問をしてみたが、こちらも同じ答えが返ってきた。「剃毛」は、あまり重要視されていないようである。

 余談だが、一般的には「ナースさんが剃毛する姿」を想像する人が多いと思われるが、実際は男性患者の毛は男性医師が処理するのが普通らしい。ちょっと残念?(遠藤麻衣/verb)