40代、50代といえば働き盛り、会社での地位も上がってくる年代。若い時とはまた違った仕事の面白さが出てくる時期である。

 しかし、そんな働き盛りの彼らに恐ろしい病魔が広がりつつあるという。その名もピック病。アルツハイマー病で知られるような、初老期に訪れる認知症のひとつだ。この病気の患者数のピークは40代〜50代にあり、アルツハイマー病よりも若い時期にかかりやすい。

 ピック病のケア、介護について専門的に取り組んでいる岡山県にあるきのこエスポワール病院の藤沢嘉勝先生にピック病の現状について教えてもらった。

 「ピック病については、今まで診断が難しく誤診されていたということも、現在の増加の原因のひとつと言えます。診断基準もあいまいですしね。研究は数多くされていますが、発症の原因は解明されていません」(藤沢嘉勝先生)

 ピック病の初期症状には、もの忘れはあまり見られない。特徴的なのは人格障害が起こるということである。ささいなことで怒りっぽくなったり、徘徊・窃盗、なんでも口に入れたりと異常行動が頻繁に見られるようになるのだ。

 「もし言っていることの意味がわからなくなったり、言葉を発しなくなったら、ピック病の疑いがあります。反社会的な行動も症状のひとつです。そして、毎日同じルートで散歩をし、同じ喫茶店にいったり、行動がワンパターン化することもピック病の特徴的な症状です」(同)

 もし、ワンパターンな行動を邪魔したり指摘すれば怒り出す。ピック病は人間を変えてしまうのである。

 本人が自覚することも難しいため、ピック病であることに気づかずに会社勤めをし、トラブルを巻き起こしてしまう人も多いんだとか。周りの家族や、仕事仲間などが、注意深く観察することが重要である。

 現在、研究が進んでいるが具体的な治療法は見つかっていない。また、予防策も探っている状態だ。働き盛りの男性をひそかにむしばんでゆくピック病、一刻も早い原因究明が待ち望まれる。(加藤克和/verb)

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40、50代襲う『ピック病』 - 東京新聞
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