新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による観光客の減少を受け、タイではヤドカリの個体数が急増。その結果、「宿のないヤドカリ」が多数生まれています。この事態を重く見たタイ政府は貝殻をバラまくという対応を行いました。

Homeless Hermit Crabs in Thailand Scramble for Shelter

https://www.vice.com/en/article/n7vbad/homeless-hermit-crabs-in-thailand-scramble-for-shelter

Thai Hermit Crabs Are Facing an Unexpected Housing Crisis

https://www.sciencealert.com/thai-hermit-crabs-are-facing-an-unexpected-housing-crisis

Unshellfish love - The Thai authorities find shelter for homeless crustaceans | Asia | The Economist

https://www.economist.com/asia/2020/12/12/the-thai-authorities-find-shelter-for-homeless-crustaceans

タイ南部のアンダマン海に浮かぶランタ島は世界有数のシュノーケリング・ダイビングスポットとしても知られる観光名所です。諸島全域は海洋国立公園にも指定されており、年間約4000万人が訪れるという南国の雰囲気豊かなリゾート地でした。

しかし、2020年から本格化したCOVID-19の世界的流行によって、同地を訪れる観光客は急減すると同時にヤドカリの個体数が急増するという現象が生じました。そして、この現象は同時に「ヤドカリの住む貝殻不足」をも引き起こしました。この貝殻不足によって、人間の捨てた缶やビン、キャップなどのゴミに住んでいるヤドカリも多数確認されたとのこと。



by Rob Briscoe

ランタ諸島海洋国立公園当局は2020年10月末に貝殻不足について認識し、その約一週間後の11月6日にタイ国民に対して貝殻を郵送するように呼びかけました。この呼びかけによって集まった200キログラム超の貝殻は、12月5日の故ラーマ9世(プミポン国王)の誕生日を祝う式典で海洋国立公園周辺にまかれました。

観光客減少を機にタイ政府は「自然を取り戻す」という試みを行っており、タイ天然資源環境省のVarawut Silpa-archa大臣は国内の全国立公園に対して自然を取り戻すという目標達成のために必要なことは何でも実行に移すように指示しています。一連の取り組みによって、ツマグロがタイの海域に戻ってきたり、絶滅危惧種のオサガメがタイ海岸で確認されたり、パンガー県とプーケット県の沿岸におけるカメの産卵数がこの20年間で最大数に達してたりしているそうです。



by Taso Viglas

タイのラムカムヘン大学に所属する海洋生物学者のThamasak Yeemin氏は、「ヤドカリは観光客が周辺環境に与える影響を評価するための良い指標になり得ます。観光客の数を制限して、我が国の観光事業が生態系に優しいことを確認すべきかもしれません」と提言しています。