鷹の育成出身だけで史上最多“6冠”制覇 盗塁王の周東が語った“なぜ育つか”
千賀、石川、モイネロ、周東の4人で12部門中6部門を制覇
ソフトバンクは9日、本拠地PayPayドームで西武と今季最終戦を戦い、6-2で快勝した。この日でパ・リーグのレギュラーシーズンは全日程が終了。各個人タイトルが確定し、ソフトバンク勢は投打計12部門のうち7部門でタイトルを獲得した。
この日、2点リードの4回から登板して3イニングを無失点に封じた石川柊太投手は今季11勝目をマーク。最終戦で千賀滉大投手、楽天の涌井秀章投手に並び、最多勝のタイトルを分け合う形に。さらに最高勝率にも輝き“2冠”に立った。
千賀は最多勝とともに最優秀防御率、最多奪三振も獲得して“3冠”を獲得。リバン・モイネロ投手は40ホールドポイントをマークし、最優秀中継ぎのタイトルに輝いた。打者では柳田悠岐外野手が146安打で最多安打を手にし、この日の3回に今季50盗塁目を決めた周東佑京内野手は最多盗塁の座を掴んだ。
12部門のうち7部門のタイトルを手にしたソフトバンク勢。その中でも目を見張るのは、そのうちの6部門が育成出身者たちによるものだということ。3冠の千賀をはじめ、石川、周東、そしてモイネロも入団時は育成選手としての加入だった。
育成出身者として初の50盗塁、そして盗塁王を手にした周東は「嬉しいです。育成だった時の気持ち、去年なかなかスタメンで出られなかったという悔しさを忘れずに今シーズンやってきたので嬉しいですね」と喜びを口にした。
周東の言葉が表す育成選手が育つ土壌「やったらやった分だけ繋がってくる」
この4人だけでなく、正捕手の甲斐拓也やこの日遊撃手として出場していた牧原大成など、今やチームの柱となるほどの選手を輩出したソフトバンクの育成システム。総合力では支配下指名に及ばなくても、例えば周東の脚、甲斐のスローイングなど、一芸に秀でた選手を育成ドラフトで指名。数年かけて徹底的に鍛え上げて、球界を代表する選手に育成している。
とはいえ、結局は選手当人の努力が最後はモノを言う。9日の試合後の周東の言葉が印象的だ。「やったらやった分だけ繋がってくるな、と思います」。育成で指名されても、背番号は3桁。いくら頑張っても1軍の公式戦には出られない。支配下選手とは一線を画して扱われ、厳しい言葉も浴びせられるという。
そこで支配下選手たち以上に練習し、考え、才能を開花させた者が千賀であり、石川、周東、甲斐のようになれる。ソフトバンクの育成出身者は確かに華々しい活躍を見せているが、彼らはやはり人一倍の努力を積み重ね、並居る支配下指名の選手たちを追い抜いて今の地位に辿り着いたのだ。
育成出身選手だけで6つのタイトルを占めるのは、プロ野球の長い歴史の中でもちろん史上最多となる。「やったらやった分だけ繋がっていく」。ソフトバンクの育成だから、だけで育つわけではない。努力を積み重ね、武器を磨き上げることができた者だけがスポットライトを浴びる。ソフトバンクの育成出身選手たちの躍進の真実は、まさにこの周東の言葉に“凝縮”されている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)