社員が「ホンネ」を言える組織作り 経営側が考えるべきこと

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どんな人でも、自分が勤める会社や組織に言いたいことはあるはず。でも、いち社員の立場で組織に対して「物申す」のは勇気がいるし、自分と同じような意見を持っている人が他にいるのかもわからない。だから、こうした問題意識はほとんど表に出ることなく、居酒屋や家庭内での「グチ」として人知れず消えていく。

この「グチ」を「社員のホンネであり、組織変革・業績向上を実現するカギ」だとして、積極的に活用する手法を解説しているのが『「グチ活」会議 社員のホンネをお金に変える技術』(日本経済新聞出版)だ。今回は著者の仁科雅朋さんにインタビュー。日本の組織が「タテマエ」ばかりになってしまう理由や、仁科さんが提唱している「グチ活」についてお話をうかがった。その後編をお届けする。

■社員が「ホンネ」を言える組織作り 経営側が考えるべきこと

――社員のホンネを引き出せる組織にするために、経営側はどんな点を変えるべきでしょうか?

仁科:同じ人員で翌年の売上を伸ばそうと考えたら、今いる従業員が成長させないといけません。今の従業員が成長したぶんだけ業績が上がるというのと、成長の原動力はモチベーションだというのをまずわかっていただきたいと思います。

そしてモチベーションを高めるためには「言いたいことがあるけど言えない」という状態は良くなくて、不満や考えていることを出させないといけません。というのも、言いたいことを溜めている状態で仕事をすると「やらされている感」が出てしまうので。

この本で解説している「グチ活」は、グチを出して終わりではなくて、そのグチによって組織の問題を炙り出して、解決して、最終的に個人と組織の生産性を高めて業績の向上に結びつける取り組みです。グチは目的ではなくて「始まり」なので、組織のボトルネックを見つけて、解消するために試してみていただきたいです。

――仁科さんは大企業にも中小企業にもグチ活を取り入れることは有用だと説いています。大企業のグチと中小企業のグチに違いはありますか?

仁科:グチそのものの違いはあまりないのですが、大企業の方がそのグチを組織の改善につなげやすいというのはあります。というのも中小企業は、いわゆる「オーナー企業」が多いんですよね。

そういうところのオーナー社長は、自分のリーダーシップがあってここまで会社を引っ張ってこれたという自負がありますし、実際カリスマ性がある方も多いんです。だけど、そういうところだからこそ、社員からすると言いたいことがあっても言いにくいんですよ。

――そういう会社は、内部から組織改善の声をあげるのは難しいかもしれませんね。それこそコンサルタントなど外部の人の意見が必要になるのではないかと思います。

仁科:そうですね。実際現場に入ってみると「オーナーには言えないけど・・・」といってたくさん意見が出ます。

ただ、問題意識を持っていたとしても、一人では言いにくいというのは組織の規模関係なく同じなのでそれを「みんなの声」にまとめるというところで外部の人間は必要なのかなと思います。

――周りの応援なしに、一人で組織の問題点を発信するのは、会社によっては「自分の首を賭ける」みたいな雰囲気が出てしまいますからね。

仁科:そうですね。だからこそ、上司や経営者はその不満やグチについてのジャッジをしないで聞いていただきたいです。いったん相手の言い分をすべて聞いて、じゃあどうやって問題点を解決していこうか、と聞くと、グチや不満を言った相手も他責思考だけではいられなくなるので。

――組織の風通しを良くしたり、下のものが上に意見を言えるようにするための取り組みをしている企業は多々あります。こうした取り組みのなかで、仁科さんから見てまちがっているものがありましたら教えていただきたいです。個人的には、「経営者への意見を募集するアンケート」のようなものは、みんな建前しか書かないだろうなと思っています。

仁科:確かに、上の人から「意見を言え」と言われても、当然みんな忖度した答えしか書かないですよね。

僕だってコンサルティングに言った会社でいきなり「このチームの問題点を教えてください」と言ってもなかなかみんな本当に考えていることは言いません。そこはハードルを下げないといけなくて、「グチでも悪口でもいいので何でも言ってください」というと、結構みんな思っていることを言ったりします。

――グチを組織の改善につなげることは理解できますが、それが業績向上にまで結びつくまでにどれくらいの時間を要するものですか?

仁科:業種にもよりますが、多くのケースでは三カ月ほどで変化は出てきます。というのも、グチや不満が持っているエネルギーにはものすごいものがあって、それが解消された時は大きなパワーが出るんです。グチや不満の中には組織のボトルネックに直結するものが含まれていて、それらに対処することでボトルネックが外れるんですね。

業績というのは曖昧な表現ですが、売上アップやコスト低減、生産性向上のどれかを業績アップというのであれば、「グチ活」で組織の問題点を見つけ出して、その問題を対処するためのPDCAを回し続ければ必ず業績は上がります。

――最後になりますが、本書の読者となる方々にメッセージをお願いいたします。

仁科:大きな話ですが、「グチ活」が日本企業の生産性を上げる一助になればいいと思っています。繰り返しになりますが、組織の生産性を決める一番の要因は、働く一人ひとりのモチベーションです。「この会社で働いていれば自分の可能性は拓ける」「ここにいれば自分は成長できる」と思えればみんながんばって働くわけで、そのためには自分も言いたいことを言えて、まちがったことはまちがっていると言ってもらえる組織にするのが一番なんです。そういう組織を作りましょうということを言いたいですね。

一方で、「グチ活」といっても、従業員が上司や経営者に言いたいことを言える組織にすればそれでいいということではありません。上司や経営者から見て、従業員の至らない点もたくさんあるはずです。だからこそ人材育成が必要で、人材育成をやっているからこそ「グチ活」も生きてきます。この両輪を意識して、生産性の高い組織にしていただきたいです。

(新刊JP編集部)

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