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新型コロナウイルスの流行が長期化し、人々の生活や価値観が変わる中、離婚に踏み切るカップルが増えているという。多くの相談を受ける弁護士は「以前から抱いていた違和感が、家でともに過ごす時間が多くなったことで顕在化し、結果的にコロナが『最後の一押し』となったケースが多い」と話す。こうした「コロナ離婚」に至りやすいカップルには、どんな特徴があるのだろうか。

「コロナで夫が在宅勤務になり、私も娘も大きなストレスを抱えるようになりました。夫が定年退職したら、こんなしんどい毎日がずっと続くのかと想像してしまったのです。そして、ある言葉を言われて...決断しました」

在宅勤務でストレス、当たり散らす夫に妻は「切れた」

J-CASTニュース記者にそう打ち明けたのは、夫(48)との離婚協議を2020年7月に始めた東京都練馬区の派遣社員の女性(45)だ。21年4月に娘(15)が高校に進学するまでには離婚を成立させ、娘と新しい生活を始めたいと願う。

大手不動産会社に勤める夫はコロナ禍で緊急事態宣言が出る前の20年3月から、女性も4月から、在宅勤務となった。娘の中学校も休校。以来2カ月間、一家3人は毎日、3LDKの自宅で過ごす生活に。妻は主にリビングで仕事をし、夫は空いていた4.5畳の部屋にパソコンを持ち込み、朝から夕方までこもるようになった。

かつて夫は、接待や職場の同僚らとの飲み会などで平日はほとんど夕食を外で済ませていたが、在宅勤務になってからは昼も夜も家で食事をするようになった。娘も給食がなくなり、女性は朝昼晩と3人分つくる毎日に。仕事と家事の合間に、中学校にも塾にも通えず、高校受験を控えた娘の勉強の面倒も見る。でも、夫はそれらを何一つ手伝わなかった。

夫は、在宅勤務のストレスからか、女性や娘にきつく当たるようになった。女性がテレワーク中なのに「昼過ぎからウェブ会議があるから、早めに昼飯つくれよ」と命令口調で言ったり、娘が受験の英語の勉強で電子辞書の音声機能を使っていると「うるせぇ、集中できねぇだろう」と怒鳴りつけたり。

女性も、在宅勤務や家事に加え、夫からの強い当たりなどにストレスを感じていた。ある日、気晴らしにと休憩中に1人でマスクを着けて数十分ほど、人気がない公園まで散歩して帰宅すると、いらついた夫に怒鳴られた。

「ウイルス感染して俺にうつしたらどうするんだ」 そして発したある言葉

「なんで勝手に外に出るんだよ。もしウイルスに感染して、俺にうつしたらどうすんだよ。会社で評価落とされんだろ、周りから白い目で見られんだろ」

散歩に出る前に一言、夫に言わなかったのは悪かったが、なぜそこまで言われなければいけないのか。しかも、家族の健康の心配ではなく、自分の外での体面を理由に怒っている――。女性は思わずこう言い返した。

「何なのよ、私だってちょっとくらい気晴らしをしたっていいでしょう」

すると夫はさらに激高し、こう吐き捨てた。

「ふざけんなよ。誰に食わしてもらってると思ってるんだ」

女性は、どこかで「プチッ」と何かが切れるような音を聞いたような気がした。

夫はこの台詞を、コロナ前から気に入らないことがあると、よく女性にぶつけていた。女性は、結婚・出産を機に勤めていた会社を辞め、育児と家事を優先してほしいと夫に求められて、派遣社員の立場で仕事に復帰した。なのになぜ、そんな言われ方をされなくてはいけないのか――。

翌日から5月末に緊急事態宣言が解除されるまで、女性は夫に内緒で弁護士にメールや電話で相談し続けた。その過程で、弁護士から言われた言葉がずっと心の中に残った。

「コロナはいつか収束し、元の生活に戻りますが、老後は夫婦2人だけの生活がずっと続きますからね」

6月になって夫は職場に通勤するようになったが、女性は気持ちを固めた。「今年中に離婚したいです」。対面で相談できるようになった6月中旬、弁護士にそう伝えた。

嫌々応じていたセックス、気づいていなかった夫

「離婚しましょう」

6月下旬、女性がそう切り出すと、夫は狼狽しながらこう言ったという。

「どうしてだよ。お前たちがいい生活ができるよう、俺はずっと頑張って稼いでるじゃないか。浮気だってしていないし、今でも俺たちセックスしてるじゃないか」

女性は幻滅した。この人はどうしてこうも自分本位なのだろう。セックスだって本当は嫌だったのに、我慢して応じていただけなのを気づいてなかったのだ――。

7月に入り、渋る夫を何とか説得し、弁護士同席で離婚について協議する場を持った。「絶対に離婚しない」と頑なだった夫だが、弁護士に諭され、話し合いには応じるようになった。女性は遅くとも来春以降、正社員として働きたいため、コロナ禍で厳しい状況だが、転職活動もしている。女性は言う。

「コロナがなければ、こんな決断はできなかったと思います。まだかろうじて働いて自分で生活を支えられる歳で(離婚に)踏み切って、良かったと思っています」

こうした「コロナ離婚」は増えているのか。

厚生労働省が発表した人口動態統計速報では、緊急事態宣言が出された20年4月の離婚件数は1万6493件で前年同月の2万1061件から21.7%減、5月も1万1483件で前年同月の1万6698件から31.2%も減少している。

年間400件の離婚相談を請け負う中里妃沙子弁護士によると、緊急事態宣言の発令中は相談は少なかったが、解除された20年6月になってから離婚の相談が増えたという。

「目立つのは、いわゆる『モラハラ夫』が原因のパターンです。コロナ前から、家族にまで『マウント』をかけようとする夫にストレスを感じていた女性が、コロナ禍での在宅勤務で耐えられなくなり、離婚を決意する事例が多いです」

「コロナ離婚」、相談者の実態は

相談者の大半は女性からだという。そして多いのは30代から50代。20代以下は婚姻期間が短い上、「見極めが早い」(中里弁護士)ため、相談せず別れることが多い。一方、婚姻期間が長く、子どももいる場合は、財産分与や親権をめぐってもめることが多く、相談も多いという。

「特に多いのは40代ですね。30代はまだ子どもが幼い夫婦が多く、なかなか決断できないのですが、40代以上になって子どもが中学生や高校生くらいになれば踏み切りやすくなるのです。コロナ禍の長い自粛期間中にじっくり気持ちを固めてから相談に来る方も多くなりました」(中里弁護士)

中里弁護士の事務所では今のところ、コロナ禍に伴う経済的、社会的な理由による離婚案件はまだないという。