ブンデスリーガが再開された。これから再開を目ざしているJリーグにとっては、勇気や希望を抱かせてくれるニュースだ。

 とはいえ、いくつかの課題も見えている。

 ひとつはケガ人である。

 再開第一週のブンデスリーガでは、ケガによる選手交代がいつもより多いように感じられた。前回の記事でも触れたが、Jリーグ再開に当たっては少なくとも4週間の準備期間は必要だろう。それでも、各クラブはかなり急ピッチで仕上げなければならない。少人数によるグループ練習からスタートし、チーム全体での戦術練習から練習試合へ段階を踏んでいくなら、再開決定から6週間あってもいいだろう。

 ふたつ目は試合中の距離感だ。

 ゴール後のパフォーマンスや祝福については、選手同士が密接に接触しないようにとの指針が出されていた。ところが、一部の試合で選手同士が得点後に頬にキスをする、抱き合うなどの場面があった。

 私たち日本人の一般的な習慣として、頬にキスをするには例外的と言っていい。しかし、試合中に抱き合うのは良くある行為だ。ハイタッチも得点や試合後だけでなく、決定的なシュートのストップやクリア、CKやFKの獲得などの場面でも見受けられる。

 それらすべての場面で選手同士が接触をしない、というのは実質的に不可能だろう。気持ちが高まっている場面では、身体に染みついた動きが無意識のうちに出てしまうものだ。

 給水も難しい。これまでのようにタッチラインの外に用意されたボトルを、両チームの選手が無作為に使うことはできないだろう。そうかといって、合計22人に対して専用のボトルを用意したら、タッチライン際がボトルでいっぱいになってしまう。

 給水前後にはうがいをして、口から水を吐き出す。喉に詰まった痰や唾を吐くなども、ひとりの選手が1試合に何度かするものだ。そういった行為を禁止することはできないが、いままでどおりに認めるのはリスクがある。

 ひとつの方法として検討したいのが、給水タイムの拡大解釈だ。飲水タイムともクーリングブレイクとも言われる熱中症予防で、これまでは基準を超えた暑熱化の試合で、前後半の真ん中を目安に主審が指示を出してきた。

 たとえばこれを、前後半それぞれ15分前後と30分前後の2回設ける。その代わりに、個々の給水をできるだけ減らす。

 給水タイムに頭から水をかぶった選手は、そのままにしないで髪の毛をタオルで拭く。アルコールによる手の消毒もして、汗を含んだユニフォームは着替える。
前半だけで2度も中断したら、サッカーという競技のスピード感が損なわれてしまうだろう。中断によって試合の流れが変わるのは、誰にとっても本意ではない。試合がブツ切りになってしまうことも。

 しかし、いまは非常時だ。これまでの常識をいったん脇へ置いて、選手の安全を確保しながらリーグ戦を行なっていく、という考えに立つべきだ。個人的には10分置きの中断でもいいのでは、と考えている。中断のたびに選手が手を洗い、うがいをして、着替える。新型コロナウイルスの影響下でも通常どおりにリーグ戦が開催できるまでは、あらゆる手立てを柔軟に講じていきたい。