消毒を終え、すでに3月25日に横浜港を発っているダイヤモンド・プリンセス号

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「クルーズでかかった費用は全額、すでに返金されています。私たち夫婦は16日間の旅で2人分の旅行代50万円のほかに、食事代、酒代、お土産代などの20万円。合わせて約70万円のすべてが、すでに振り込まれています」

【写真】船内でPCR検査を受ける育子さん

 そう話すのは、静岡県在住の海野忠雄さん(仮名)。

 乗船していた日本人およそ1200人のうち、新型コロナウイルスによる感染者723人と、死者13人を出した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」号の元乗客だ。

船内で感じていた不安

 こんな“迷惑料”も払い込まれたという。

「クルーズ船までの交通費や途中、宿泊したホテル代のほかに50万円相当のクーポンもついてきました。来年2月までにクルーズ旅行に予約すれば充当でき、別の旅行にも使えるようです」(忠雄さん)

 夫妻は1月20日から16日間の予定で乗船したが、2月3日に沖縄で船内に感染者が出たために急きょ、横浜港に寄港することになった。

「どの部屋から感染者が出たとか、何人出たとか、現場にいるのにまったくわからないのが不安でした。そういう情報は、テレビやインターネットで知る程度でした」(同)

 当初は部屋の外に出ることは禁止され「隔離」の状態が続いたが、徐々に緩和され気分転換もできたという。

 当時、船内に入った医療チームの発表では、「死にたい」「飛び降りたい」と不調を訴える客もいたようだが、妻の育子さん(仮名)は振り返る。

「私たちは、精神的にまいったような人は見かけませんでした。でも、“あの人は今日、見ないね。感染したのかな?”という心配はありましたね。後は、PCR検査を待つ期間も、不安は正直、ありました」

 下船後は2週間の自宅待機となったが。育子さんは、とりわけ1週間が山だと考えていたそう。

「その間、発病しなければ大丈夫だろうと。それを越えて2週間も過ぎて、ようやく安心しました」

 しかし、忠雄さんはさらに2週間が必要だと考えていた。

「用心に用心を重ねてね。それも無事に過ぎて、よかったですよ。このゴールデンウイークに、近場にいる娘と孫にようやく会えるんです」

 そう期待を膨らますが、外出自粛要請が続くなか、さらなる我慢が必要かもしれない。

 さらに、クーポンがあるからというわけではなく、クルーズ旅行もあきらめていない。

「何よりクルーズ船は設備も食事も整っていて楽しいんですよ。大変な目にはあいましたけど、クルーは本当によく働いてくれて私たちを励ましてくれました。だから、もう1度、乗ってみたい気持ちはあります」(忠雄さん)

 再びダイヤモンド・プリンセス号に乗れる日まで、海野さん夫妻は粘り強く、待ち続けるつもりだ。