全国47都道府県すべてに陸海空、いずれかの自衛隊の基地や駐屯地が必ずあります。地元の人にとっては馴染み深い名称であっても、そうでない人には読み方すらさっぱり想像がつかないものも。航空自衛隊基地から5つ、見て行きます。

読み方が独特 漢字が難読…自衛隊基地 駐屯地

 航空自衛隊の基地は、分屯基地を含めて全国に70か所以上あります。北は北海道の稚内から、南は沖縄県の宮古島まで列島各地に配置されており、なかには島の名前や市町村名と異なる地名を基地名に用いていて、馴染みのない人にとってはさっぱり読めないであろう基地名も見られます。そうした基地名を5つ挙げてみました。


新田原基地に配備されている第305飛行隊のF-15J「イーグル」戦闘機(柘植優介撮影)。

新田原基地(宮崎県新富町)

 新田原は「にゅうたばる」と読みます。九州には「原」を「ばる」と読む地名が結構多く、同じく宮崎県西都市にある「西都原古墳群」などは「さいとばる」と読みます。ほかにも佐賀県には陸上自衛隊の目達原駐屯地もあり、こちらは「めたばる」と呼称します。

 新田原基地には、航空自衛隊西部航空方面隊隷下の第5航空団などが置かれ、F-15J「イーグル」戦闘機を装備する第305飛行隊がスクランブル任務に就いています。ほか、F-15Jパイロットを育成するための教育専門部隊である第23飛行隊があり、過去には日本初のF-15J飛行隊もこの地で新編されたことなどから、全国のイーグルパイロットのマザーベース的存在になっています。

饗庭野分屯基地(滋賀県高島市)

 饗庭野は「あいばの」と読みます。饗庭野分屯基地は陸上自衛隊饗庭野演習場に隣接しており、住所は滋賀県高島市新旭町饗庭になります。日清戦争前の1886(明治19)年に旧日本陸軍が演習地として一帯を買収した際に、「饗庭(あいば)」にある野原なので、「饗庭野陸軍演習場」と名付けました。

 陸上自衛隊発足後に「饗庭野演習場」として再整備し、その一角に航空自衛隊の地対空ミサイル基地として饗庭野分屯基地が開設され、現在に至っています。

 饗庭野分屯基地には地対空ミサイル「ペトリオット」を装備する第4高射群第12高射隊が置かれています。この基地は琵琶湖の西岸に位置することから、大阪と名古屋の中間地点の地対空ミサイル部隊として、おもに本州中央部の防空任務に従事しています。

 なお、愛知県にも同じ地名があります。三河湾に面した西尾市の吉良町饗庭地区で、ここも同様に「あいば」と読みます。

多用する読み方だとうっかり間違えてしまいそう

 使われている漢字はそれほど難しくなくても、慣れた読み方ではない場合があります。

築城基地(福岡県築上町)

 築城は「ついき」と読みます。城や陣地を作ることを「築城」というため、地名を知らないと「ちくじょうきち」と読んでしまいそうです。なお基地のある築上町は「ちくじょうまち」と呼称します。


築城基地航空祭でエプロンに展示された第6飛行隊のF-2戦闘機(柘植優介撮影)。

 築城基地の前身は、太平洋戦争中に旧日本海軍が開設した築城飛行場です。名称は、この地域の古くからの地名と、近くに築城駅(ついきえき)もあったことから名付けられたものです。近傍には旧築城村(のちの築城町)もありましたが、実際に飛行場が設けられたのは旧椎田町の方でした。

 そのため、1957(昭和32)年に航空自衛隊築城基地が発足すると、基地の住所は福岡県築上郡椎田町になります。そののち、2006(平成18)年に旧築城町と旧椎田町が合併し、現在の築上町ができたことで築上町(ちくじょうまち)にある築城基地(ついききち)となりました。

 築城基地には、航空自衛隊西部航空方面隊隷下の第8航空団などが置かれ、国産のF-2戦闘機を装備した第6飛行隊および第8飛行隊の2個飛行隊が、スクランブル任務に就いています。

経ヶ岬分屯基地(京都府京丹後市)

 経ヶ岬は「きょうがみさき」と読みます。経ヶ岬は若狭湾に突き出た丹後半島の先端で、京都府並びに近畿地方の最北端に位置します。

 航空自衛隊経ヶ岬分屯基地は、この経ヶ岬から3kmほど離れた西側にあり、日本海に面した山の頂上に設置されたレーダーサイトで、第35警戒隊が24時間365日絶え間なく周辺空域の監視にあたっています。

 なお日本海の対岸に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がある地理的関係から、弾道ミサイルの探知や追尾を目的にアメリカ陸軍の通信所も経ヶ岬分屯基地に隣接して設けられています。こちらの名称は「経ヶ岬通信所」といい、約150名程度の在日米軍関係者が勤務しています。

同じ漢字でも自衛隊と自治体で読み方が異なる

 離島名称には、馴染みがなかったり日常でほとんど使わなかったりする漢字が含まれて読み方が難しい場合もあります。

下甑島分屯基地(鹿児島県薩摩川内市)

 下甑島は「しもこしきじま」と読みます。「甑」の読み方を知らないと、とまどう基地名です。


下甑島分屯基地に設置されているものと同型のJ/FPS-5レーダー(画像:航空自衛隊)。

 この基地は、その名のとおり下甑島にあります。島は鹿児島県の、薩摩半島西側の沖合約45kmに位置する離島で、近くの上甑島や中甑島などと合わせて甑島列島と呼ばれます。2004(平成16)年に、いわゆる「平成の大合併」で周辺市町村とともに薩摩川内市となりましたが、本土との交通手段であるフェリーは隣のいちき串木野市に本土側の港があります。

 下甑島分屯基地は東シナ海に面したレーダーサイトとして、第9警戒隊が24時間365日絶え間なく周辺空域の監視にあたっています。

 ちなみに、基地名は前述の通り「しもこしきじま」ですが、2014(平成26)年に薩摩川内市が甑島列島の読み方を「こしきしま」に統一したため、それ以降、自治体が発行する文書などでの島名は「しもこしきしま」と濁らない読み方になっています。

 自衛隊の基地や駐屯地は、駅名や地域名と同様、所在地の歴史的経緯などに由来した名称がつけられていることが多いです。今回挙げた5か所以外にも様々な基地名称があり、難読でなくとも所在する自治体や地区名称と異なる場合もあります。

 航空祭などのイベントで訪れた際は、なぜその名称なのかも掘り下げてみると、より一層楽しめるかもしれません。