新型コロナウイルス検査で陽性だった受刑者約3300人のうち96%が無症状だった
新型コロナウイルス感染者が大量発生した空母の乗組員の「大半が無症状」だったことが2020年4月17日に報じられましたが、新たに、アメリカの刑務所で受刑者を対象に大規模な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査が行われたところ、陽性反応を示した約3300人のうち、96%が無症状だったことが明らかになっています。
In four U.S. state prisons, nearly 3,300 inmates test positive for coronavirus -- 96% without symptoms - Reuters
オハイオ州更正・矯正施設局長のアネット・チェンバース・スミス氏が、新型コロナウイルスの感染者が刑務所で発生したことを受けて、ウイルスの感染状態を調べるべく、大規模な検査を実施しました。2500人の囚人を収容するマリオン矯正施設で検査を行ったところ、検査を行った2300人のうち2028人で陽性反応が示されたとのこと。これは全体検査数のうち95%にあたります。なお、マリオン矯正施設の収容者のほとんどが、健康な高齢者です。
その後、別の4州の刑務所でも検査が行われたところ、陽性反応を示した囚人3277人のうち96%が無症状であることが判明しました。なお、総検査人数は4693人でした。
この報告は、刑務所だけでなく世界中のコミュニティでウイルスが広まっている可能性を示唆しています。ロイターの調査に対し、ジョージワシントン大学で救急医学について研究するLeana Wen博士は、検査数とモニタリングが不足しているために症例数が実際に把握している数よりもはるかに多くなっていることを指摘。また、COVID-19は特に潜伏期間が長いため、検査時点で症状がない受刑者も後々発症する可能性があります。
ロイターの調べによると、アメリカ50州の刑務所のうち調査に応じた30施設のほとんどでは、症状を示す人のみに対して検査を行っているとのこと。このため、刑務所での感染については、過小評価されている可能性があります。COVID-19の感染拡大が問題視されるニューヨークでは、5万1000人の受刑者のうち陽性と報告されているのはわずか269人です。なお、ニューヨークの更正・矯正局は、症状のある囚人のみを検査するという現行の方針は「一般市民に対する検査手順を反映しているもの」だと述べています。
一方で、ミシガン州のレイクランド矯正施設には、高齢かつ健康に問題を抱える受刑者が多く収容されており、1400人の受刑者のうち半数が慢性的な基礎疾患を抱えており、車いすに乗っている人も多くいます。レイクランド矯正施設では4月23日時点で9人の受刑者がCOVID-19で死亡しましたが、これはミシガン州にある29施設での死者数のうち3分の1を占めたとのこと。またミシガン州南部には高齢受刑者のための老人病棟がありますが、これまでに検査が行われた老人病棟の受刑者971人のうち、642人がPCR検査で陽性でした。なお、州当局は無症状患者の数をロイターに対して公開することを拒否しています。
検査を行った受刑者は、結果が出るまでの間、約24時間にわたって隔離されます。その後、陰性反応が示されたら一般受刑者と同じ扱いを受けることになるとのことです。