個性豊かな麻薬捜査班の5人組!
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 韓国歴代興行収入ランキングで第1位に輝いた大ヒット作『エクストリーム・ジョブ』(2020年1月3日公開)のイ・ビョンホン監督がインタビューに応じ、ハリウッドリメイク化の知らせを聞いた時の心境や作品に登場する重要な料理について語った。

 2015年の『二十歳(ハタチ)』でもウィットにとんだセリフで観客を引き込んだイ・ビョンホン監督は本作でもその手腕を発揮しているが、「個人的にはここまで正当派なコメディー、伝統的なコメディーというのは初めて」だったそうで、本作を撮ること自体が新しい挑戦だったと語る。

 「以前手掛けたコメディー作品というのは、状況よりもまずキャラクターありきで、キャラクターの情緒へのアプローチを重点的に描いていました。内側に否定的な感情があったら、それを表に出すようなちょっとブラックコメディー的な作品が多かったんです。でも今回の作品はそれとはまったく違って、シチュエーションコメディーが基本になっています」

 劇中に登場する麻薬捜査班の面々は非常に個性豊か。麻薬組織を検挙するためアジト前のチキン屋を買い取って潜入捜査に勤しむも、思いがけずチキン商売が成功してしまい、捜査が後回しになるほど大忙しに……そんななか繰り広げられる彼らのセリフの応酬は実に小気味よい。

 そうしたセリフのリズム感はシナリオの段階から意識して作り込んでいたが、監督は「まずは俳優陣の演技を見てみたい」という思いから、今回は直接現場で撮影進行の進路を判断することにした。その結果、俳優陣の立派な芝居はとても楽しくて言うことなしだったそう。「シナリオで決めたものを俳優さんたちにやっていただいて、あとは少しアイディアを付け加えたり現場で意見交換をしながら作っていきました」と振り返っており、『7番房の奇跡』などで知られるベテラン俳優リュ・スンリョンをはじめ、実力派俳優陣のケミストリーは作品に大きな力を与えたようだ。

 俳優陣の軽快なセリフ回しに加え、スピーディーで痛快なアクションによってさらに作品のテンポ感が増している。なかでも40℃近い酷暑のなか撮影されたオープニングシークエンスと、麻薬捜査班の5人組を含む出演者と武術チーム100人が入り乱れる後半の肉弾アクションシーンは圧巻だが、意外なことに監督自身は「怖いのが嫌いで、誰かを殴って出た血を見るのも苦手」で普段まったくアクションに関心がないという。「だからあまりアクションものはたくさん観てこなかったんです。でも、これを撮る前にそういう作品も観ましたし、武術監督やアクション監督にいろんなことを聞いたり、意見の交換をしたりしました」

 映画のもう一つの主役といえるのは、まさかの絶対味覚を持っていたマ刑事の手から作り出されるフライドチキンだ。フライドチキンは国民食といっても過言ではないほど韓国で愛されている料理で、監督いわく「この映画において最も適切なメニューだった」そう。「小市民がヒーローになるというファンタジーがあり、そこからくる快感や痛快さも見せる必要がある作品だったんですが、そう考えるとチキンは大衆的に、気楽に、身近にアプローチできる食材だったと思います。身近な人たち、家族、友だちのような存在を食べ物に例えるとすると、やはりチキンが最も身近。これ以上身近な食べ物はないんじゃないかと思います」と料理に込められた思いを説明した。

 本作はハリウッドリメイクも決定しているが、となるとそのチキンがリメイク版では何になるのか気になるところ。監督は「私が決めるわけでもなく、アメリカの事情も分からないんですが、もしかしたらハンバーガー屋さんとかになるかもしれないですね」と苦笑しながらも、リメイク決定に「本当に嬉しかったです。英語圏、つまり外国の方に観てもらえることになるんですが、やはり文化の違いもあり、コメディーというのはなおさらアピールするのが難しいジャンルだと思うんです。それがリメイクされて、またみなさんに笑ってもらえるだろうと思うだけでも胸がワクワクしました」と感激をにじませていた。

 次回作では、「サム、マイウェイ 〜恋の一発逆転!〜」『ミッドナイト・ランナー』などドラマや映画で大活躍の若手俳優パク・ソジュンとタッグを組む。ホームレスの人たちが選手として出場するストリートサッカーの世界大会「ホームレス・ワールドカップ」に参加した韓国の実話を基にした作品で、パク・ソジュンは元サッカー選手のコーチ役を務めるという。

 「いまシナリオを書いているところなんですが、社会から落ちこぼれてしまった人たち、外部の人たちによって社会から離脱せざるを得なかった人たちが、もう一度社会の枠の中に戻るというとても心温まるヒューマンドラマになりそうです」。『エクストリーム・ジョブ』で笑いとアクションを届けたイ・ビョンホン監督が、ヒューマンドラマをどのように自身の色に染め上げるのか、今から待ちきれない。(編集部・吉田唯)