兵庫・生野銀山の坑道で熟成された「シュトーレン」とは...? 人気スイーツの秘密に迫る
生野銀山の「坑道」で熟成されたシュトーレン(画像提供:カタシマ)
シュトーレンというお菓子をご存じだろうか。ドイツではクリスマスを待つ間、少しずつ切って食べる伝統菓子だ。
小麦粉生地にドライフルーツやナッツなどが練り込まれ、発酵させたパン菓子で、表面に粉砂糖などをまぶしている。その真っ白な外観が、おくるみに包まれた幼子、イエス・キリストに見えると言われている。
もっともシュトーレンとは、ドイツ語で「坑道」を意味することから、トンネルのような形からこの名前がつけられた、という説もある。
いま、兵庫県朝来市にある生野銀山の坑道で熟成され、蔵出しされたというシュトーレンが話題となっている。写真上が、その生野銀山蔵出しシュトーレンだ。いったい、どんなお菓子だろう。
歴史ある坑道の中で、3か月熟成!
果実の旨味が濃縮されたドライフルーツ(画像提供:カタシマ)
生野銀山は、古くから銀などの採掘が行われた場所として知られている。明治時代には国の直轄となり、海外から最先端の採掘技術を取り入れて発展してきた。現在でも、地下880メートルに採掘跡などが残っており、観光坑道として活用されている。
この生野銀山の坑道で熟成させたシュトーレンを作り上げたのは、朝来市に隣接する養父市の洋菓子店「カタシマ」だ。Jタウンネット編集部は2019年11月26日、電話で詳しい話を聞いた。答えてくれたのは、「カタシマ」取締役の廣氏(ひろうじ)隆之さんだ。
「シュトーレンを作るきっかけは、2010年頃、ワインや日本酒の貯蔵庫として生野銀山の坑道を利用している、知り合いの酒屋さんから勧められたからです」
生野銀山の坑道は、年間を通じて温度が13度前後に保たれている。天然の熟成庫として最適な環境だという。「1か月刻みで熟成期間を試してみたところ、パン生地の中にドライフルーツの旨味が溶け出してくるのに、3か月がベストでした。しっとりと深みが出てくるのです」と廣氏さんは語る。
ギフトにも喜ばれる(画像提供:カタシマ)
「弊社の創業者は、神戸の『フロインドリーブ』で修行をしたパン職人で、シュトーレンは『フロインドリーブ』で学んだと聞いています。クリスマス菓子としては一見地味なのですが、以前から少しだけ作っていました。ところが、生野銀山の坑道で熟成させ、蔵出しシュトーレンとして販売するようになってから、売れ行きがどんどん伸びてきました。今年は600本限定で販売しますが、12月上旬には完売するかもしれません」(廣氏さん)
「カタシマ」のシュトーレンの特徴は、ドライフルーツに地元の食材を使っていることだという。今年は、貴腐ワインに漬けた養父市特産「天滝ゆず」が、レーズン、イチジクなどと共に練り込まれているそうだ。「まろやかで深い味わいを楽しんでいただきたい」と廣氏さんは話した。