『オプーナ』はこんなに面白いのになぜ「ネタゲー」扱いなのか【livedoornewsゲーム紹介】

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皆さんは、『オプーナ』というゲームを知っているでしょうか?
2007年11月1日に発売されたWii用のソフトであり、ヌンチャクによるシンプルかつテンポの良い戦闘(アクティブボンボンバトル)が楽しめる、ハードの特性を活かした斬新なシステムなどが特徴の「ライフスタイルRPG」です。


© 2007 ARTEPIAZZA/コーエーテクモゲームス ©HITOSHI SAKIMOTO

WiiにはあまりRPGのタイトルが多くなかったことや、『ドラゴンクエスト』シリーズの制作に携わった実績を持つ「アルテピアッツァ」による企画・開発(原案/アートディレクション:眞島真太郎、シナリオ/ゲームデザイン:杉村幸子)だったこともあり、発売前から大きな注目を集めていましたが、残念ながら売上は伸び悩んでしまいました。

ゲームだけに限らず、商品が売れないことの原因は「内容」だけでは断じてありません。
本作『オプーナ』は間違いなく面白いです。
確かに主人公はかっこよくないし、ネットの評判的に面白くなさそうだし、と購入意欲が削がれる要因もありますが、
暖かでほのぼのした世界観やその見た目からは想像もつかないほどシリアスかつ奥深いシナリオと、素晴らしいBGMやアート作品など、どれも丁寧に作り込まれています。
ボリュームが薄いわけでもなく、内容も面白いにも関わらず売上が伸び悩んだこともあり、多くの「売れなかった理由」がネットなどで論じられていた中、

そもそも「オプーナを買う権利」を持っていなかったから「買えなかった」のでは

などという「謎の憶測」が広まってしまったり、主人公のオプーナがAA(アスキーアート)にされてしまったりなどといった経緯もあり、「ネタゲー」として扱われるようになってしまいました。(※もちろん「オプーナを買う権利」などありません)
現在では「実は面白い」という情報が少しずつ浸透しつつあるものの、いまだに「ネタ扱い」を完全に拭い去ることはできていません。

ソフトの売上以上にネットでの知名度は高いものがありますが、その扱いのせいで不当な評価を受けていると言えるのが本作『オプーナ』です。

では、どのような作品なのか。

主人公・オプーナは家族と宇宙旅行に行くも、事故に見舞われてしまい、危険を察知した両親に脱出ポッドに入れられ「ランドロール星」に着陸します。この事故で両親は大ケガを負ったと聞かされ、両親だけでなく弟や妹ともはぐれてしまいました。
ランドロール星は、その人の持つ能力によって職業や住む場所が分かれており、何をするにも「ライセンス」が必要でした。
このライセンスを取得すれば別の居住区にも移動できるようになるということを知ったオプーナは、家族と再会し自分の星に帰るため様々なライセンスの取得を目指す、という物語です。
ちなみに上記の「買う権利」はこの「ライセンス」にもかかっています。作品愛のあるネタだったんですね。
最初の街「トキオネ」はタワー型の未来都市のようなビジュアルであり、かつ子どもであるオプーナの目線に合わせた低いカメラワークになっているため非常に迷いやすいですが、「なんだかめんどくせえや」と頓挫しないでください。
これは不時着した星での戸惑いを表現し、世界の隅々まで「ロールプレイ」してほしいという意図があって作られたものだと思えば苦ではありません。(超好意的解釈)

本作の世界では「ランドロールガード」という平和を守るために戦う職業があり、オプーナの父・ダディーナは故郷ティティア星で一番の「コスモガード」であることを示す称号「スターティティアン」に選ばれるほどの実力者でした。(表向きはそのお祝いで家族旅行に行き、事故に遭います。)
ランドロール星で生活していく上で職業に就くことになった(この星の住人は生まれながらにして適正を見出され、それぞれの職につくための学習を行う)オプーナは、実戦経験こそなかったもののその父譲りの高い能力を見出され、「ランドロールガード」として実績を重ねていくことになります。
ランドロールガードとして働きながら、副業でアイドルになったり、農夫になったり、探偵になったりしてライセンスを集め、生活範囲や交友関係を広げていくことが「ライフスタイルRPG」と呼ばれる所以ですね。
世界が広がっていく感覚は、RPG特有の喜び・面白さがふんだんに感じられます。

ここまではあらすじと「おつかいゲー」としての側面を紹介しました。
(「おつかい」といっても、シナリオ本編と融合するよう緻密に設計されているため作業感はなく、むしろ世界観を理解する上で重要なものばかりです)

さて、ここからはさらに『オプーナ』の物語の真髄です。(ネタバレ注意!)









オプーナたちが不時着したランドロール星は、もともと緑豊かな惑星だったものの、数百年前に隕石が落下したことや、敵の侵略によって星の半分が闇のフォースに侵略されています。
そのため住人の多くはもう半分に作られた安全なドーム内で生活を続けています。

そしてこの星の住人は、与えられた職業の生涯のノルマを達成すると、
「楽園『パラディソ』に行く権利」を得ることができます。(これが「買う権利」の元ネタという説が有力)
楽園では勤労の義務はなく、天国のような暮らしができるという教えがこの星には浸透しています。
その「思想」を浸透させた1つの要因が、ランドロール星の「テレビ」です。
本作ではメニュー画面からいつでも「テレビ」を視ることができ、その番組もアニメやスポーツまで多種多様です。(なかでもおすすめはアニメ『科学少女ハイテクちゃん』と『超マン』)
番組中ではたびたび「聖者」を礼賛するような表現が出てきます。
「聖者」は上空に浮かぶ島で自給自足で生活しており、一切の娯楽も副業も許されず、楽園「パラディソ」に行くこともできません。
しかし、彼らはそれに不満を言うことなく従事しており、そんな彼らを礼賛し、パラディソに行けることがどれほど素晴らしいか、ということを声高に訴えている番組を流しているのがランドロール星の「テレビ」です。

ここまでお読み頂いた方なら、この「ランドロール星」は何者かの思想が強く働き、社会を形成していることが推察できるのではないでしょうか。
昨今の日本で「メディアの印象操作」などという言葉が広まりつつありますが、本作『オプーナ』はその一端を示した最先端のゲームだったと言えますね。(暴論)

事故により別の星から現れて生活を始めることとなったオプーナ一家は、ランドロール星にとっては「異質」な存在です。
この星の住人は生まれながらに職業を決められ、最低限の生活を保証されながら、いつかノルマを達成して楽園に行きたいというモチベーションのもとに働いています。そしてそこに違和感を覚える人は「ほとんど」いません。
戦闘が得意な遺伝子だと判断されたがために、生まれながらに「ガード」として生活することになるも、戦うことが嫌いなためいつまでも「幼稚園児」のままの老人もいますが、決して不幸そうには見えません。生活には困らないし、それが当たり前だからです。
そんな星に「異質」なオプーナ(=プレイヤー)が生活を始めたら、何を感じるでしょうか…?

本作は、「この世界をどう思いますか?」と語りかけてくるような描写がたびたびあります。
この世界の人々との交流の中で感じる小さな疑問や違和感を、決して忘れることなくプレイしてください。
そして、この世界の「真実」と「思惑」を目の当たりにし、驚愕してください。
あなたが当たり前に享受し、受け入れているものは本当に「当たり前」なのでしょうか…?

きっと、心に響く何かを感じ取ることができるでしょう。

続いて、戦闘システム「アクティブボンボンバトル」を説明します。
オプーナには頭に「エナジーボンボン」という球体があります。これをWiiのヌンチャクを使って操作し、敵にぶつけていくというリアルタイムの戦闘システムなのですが、片手でかんたんに操作でき、爽快感も抜群!
そして戦闘には2分という制限時間(ティティア星人は、エナジーに制限があり長時間戦えないという設定)があります。(ボス戦では魂が奮い立ち制限時間アップ)
この時間制限もテンポの良さに一役買っています。
また敵の配置や弱点なども重要です。ただ直線的に敵にボンボンをぶつけるだけでなく、カーブさせて複数の敵を一掃したり(ある装備アイテム必須)、配置によって倒す順番を考えたりなど、戦略性もポイントとなってきます。
名前はなんだか「ネタっぽい」ですが、意外と奥が深い唯一無二の戦闘システムは一見の価値あり!

個性的ながら優しく暖かな世界観と、片手で操作できるお手軽感、爽快感あふれる戦闘システムと思わずニヤリとしてしまう小ネタの数々、そして物語中に感じる「妙な違和感」とSFチックなシナリオとその結末、などなど上げればキリが無いほどオプーナには魅力が詰まっています。(ボス戦のBGMも素晴らしい)
さらに、昨年突如『オプーナ』の公式Twitterが開設され、2018年9月4日につぶやきが投稿されました。(参考リンク:https://twitter.com/opoona_jp/status/1036882260773953536)
今後、もしかしたら、なにか動きがあるのかもしれませんね…!

本作に限らず、ネット上の情報や他人の評価を見て「やった気」になってしまうと、「実は自分にはものすごく合っていた」などといった感動や衝撃を味わうことができません。

百聞は一見にしかず、気になった方はこの機会に是非『オプーナ』を自分の手でプレイしてみてはいかがでしょうか。