9月10日に行われたミャンマー戦には、いくつかの意見が成り立つ。
 
 カタールW杯アジア2次予選は、負けてはいけない公式戦である。問われるのは内容よりも結果だ。勝点3を獲ったのだから、決して悪い試合ではなかったという意見がある。
 
 通常よりも緊張感の増すアウェイゲームであり、日本にとってはW杯予選のオープニングゲームでもあった。W杯予選を戦ったことのない選手は、14年、18年大会の予選より多い。そういった背景を踏まえると、勝利したことが評価に値する。
 
 2次予選全体を見渡すと、ちょっとした驚きを覚える。FIFAランキングでアジア最上位のイランが、香港とのアウェイゲームを2対0で終えている。トルクメニスタンのホームで予選第1戦を戦った韓国も、2対0で試合を終えた。

 現アジアカップ王者のカタールは、ホームでインドとスコアレスドローを演じた。18年のロシアW杯に出場したサウジアラビアは、格下のイエメンと2対2で引き分けている。最終予選進出が予想される国々が、漏れなく大勝を飾っているわけではない。

 ミャンマー相手に勝つのは当たり前だ、という意見もある。ブックメーカーがミャンマーの勝利にどれほど魅力的なオッズを提示しても、日本の負けを予想する人はいなかっただろう。

 だとすれば、2対0というスコアは物足りない。16分に先制し、26分に追加点を奪ったところまでは申し分なかった。アジアを渡り歩くミオドラグ・ラドゥロビッチ監督率いるミャンマーが、0対0の時間をできるだけ長く保ち、日本の焦りを誘うことに活路を見出そうとしたのは明らかだったからだ。 

 現地で配られるアジアサッカー連盟(AFC)の公式記録には、シュート数などのデータが記載されていない。おそらく25本は打っているはずで、決定機も得点場面を除いて9回ある。

 それで、2対0はどうなのか。

 相手GKが好セーブを見せた場面を差し引いても、4、5点は取れるはずだった。ミャンマーとの力関係では2対0はセーフティリードだが、実力差をスコアに反映させなければならなかった。

 直前のパラグアイ戦でも、3点目を奪いきれていない。相手の希望を断ち切ることができていないことに、物足りなさが募るのは確かである。
 
 個人的には勝利に価値を見出す。決定機を生かし切れなかったのは、もちろん反省材料である。ただ、日本代表としての活動は6月以来であり、準備期間が限られていたことも含めると、白星発進は評価できると思うのだ。

 いくつかのオプションにもトライした。

 パラグアイ戦では冨安健洋が後半から右サイドバックで、ミャンマー戦では大迫勇也が後半途中からトップ下でプレーした。冨安はボローニャで右サイドバックを務めており、大迫はブレーメンでトップ下を任されることがある。所属クラブでの役割に基づいた配置だったが、彼らが異なるポジションで起用されることで、チームとして違ったメカニズムを持つことができる。これまで2列目右サイドで使われてきた伊東純也が、久保建英に右サイドを譲って左サイドへ回る時間帯もあった。

 いずれも試用段階ではある。そのうえで言えば、森保一監督は勝利をつかみ取るだけでなく、今後を見据えたトライをしている。現時点でどのポジションも複数の選択肢を持てているのは、就任から1年あまりの成果と言っていい。

 ロシアW杯後に世代交代を課せられた指揮官は、そのとおりに新しい血を採り入れ、カタールへの第一歩を確実に踏み出したのだ。