火災後のノートルダム大聖堂は風が吹けば倒壊してしまう状態だとの指摘
by Jean-Pierre Dalbéra
2019年4月15日に大規模な火災が発生し、屋根などが焼け落ちる被害を受けたフランス・パリのノートルダム大聖堂は、消防関係者らの懸命な消火活動により辛くも全焼を免れた外壁や正門が火災発生前の面影を残しています。しかし、火災後の被害調査により強度が大幅に下がっていることが判明、専門家は「強い風が吹いただけで倒壊してしまう危険性がある」と警鐘を鳴らしています。
http://www.lefigaro.fr/culture/notre-dame-fragilisee-au-point-de-plus-pouvoir-resister-a-des-vents-de-90-km-h-20190425
Weakened Notre-Dame 'could collapse in winds of over 90km/h' claims Paris engineer - The Local
https://www.thelocal.fr/20190426/weakened-notre-dame-could-not-withstand-a-major-storm-claims-paris-engineer
Notre Dame is unstable: a strong wind could make the walls collapse, independent report says | The Art Newspaper
https://www.theartnewspaper.com/analysis/notre-dame-is-unstable
ユネスコの世界遺産にも登録されているノートルダム大聖堂はその美しさから「白い貴婦人」とも呼ばれ、パリから別の場所までの距離を表す際の起点となるなど、パリを象徴する建築物でした。このため、2019年4月15日に発生した大規模な火災によりノートルダム大聖堂の尖塔(せんとう)が焼け落ちたというニュースは、パリ市内のみならずフランス全土に大きな動揺をもたらしました。
火災が発生した当時の様子は以下の記事を見るとよく分かります。
ノートルダム大聖堂で起きた大規模火災の様子を収めた写真&ムービーまとめ - GIGAZINE
ベルサイユ大学で建築工学を教えるPaolo Vannucci教授はフランスのニュースメディアLe Figaroの取材に対し、「被害調査の結果からノートルダム大聖堂は風に対する抵抗が60%も減少したことが分かりました」と述べました。これは、ノートルダム大聖堂を支えていたアーチ状の構造物であるヴォールトの大半が火災により焼失したり、熱による損傷を受けたりしたためです。
by Lynette Chea
ヴォールトはノートルダム大聖堂の天井と壁を接続するアーチ状の構造物で、屋根の重さを外壁に伝えるだけでなく、風などから受ける水平方向の力をバットレスという補助的な壁に分散させる役割を果たしていました。
このヴォールトが失われた結果、火災前には風速約61m/sもの強風に耐えることができたのに対し、火災後は風速約25m/sの風で倒壊してしまう状態になってしまったとのこと。世界的に見ても地震が起きにくい地域に位置するパリですが、しばしば強風に見舞われています。例えば、2018年1月に発生した暴風「エレノア」では、風速約33m/s以上もの風勢が記録されました。
フランス国会の下院にあたる国民会議は2019年5月10日、ノートルダム大聖堂を5年以内に修復することなどを盛り込んだ特別法を可決しました。5月27日には上院にあたる元老院を通過するものと見られています。ノートルダム大聖堂の復旧を指揮する建築士Philippe Villeneuve氏はニュースメディアThe Localの取材に対し、「まずは大聖堂の保護することを最優先事項としています」と語りました。