斎藤工、人気俳優になった今も常に危機感「どうしても比べられる」
「昔、バックパッカーをしていたことがあったので、そのときは自炊を余儀なくされて。だからレパートリーはあまりないんですが、今でも家で料理はします。友人が来たときにふるまえるメニューは4つほど。パエリアとかグラタンスープとか。でも、全然おしゃれじゃないです(笑)。自分が食べておいしかったもの、感動したものを再現したいだけなんです」
“料理男子”の一面を見せた斎藤工(37)。そんな彼が見ているだけでお腹がすくと話題の美食シネマ『家族のレシピ』で主演に。劇中に出てくる料理はラーメンやバクテー、チキンライスなど、おいしいものだらけ!! ロケはシンガポールでも敢行され、シンガポール観光大使でもある斎藤は、
「撮影で行ったというよりも、普通に生活をしていました。現地では労働時間が決められていたこともあり、とても健全で(笑)。僕は毎日のように映画館に行きましたし、近くにチキンライスがおいしいお店があったので、そこにもよく足を運んでいました」
もともと、本作を手がけたエリック・クー監督にクリエイターとして心底惚れ込んでいたといい、本作ではオーディションを経て見事、主役の座を射止めた。
「通行人役でもいいから、何が何でも出たかったんです。それが叶(かな)って、今ではエリックの家族ともごはんに行く関係になって。彼のいとこや4人の息子にも会い、一家だけの集まりにも呼んでもらいました。僕も早く家族を紹介したいなと(笑)。こんな関係性の人、これまでいなかったから不思議です。でも、自分の人生には必然の出会いだったんだと思います」
役者として映画監督として、作品を通して国際交流にも積極的に取り組む斎藤。一方で、国内では劇場体験が難しい地域の子どもたちに映画を届ける移動映画館を主催する一面も。
「俳優として、ひとつの職業をまっとうするという美学もありますが、僕の挑戦している姿が“こういうことをしてもいいんだ”と若い方に見えていたらいいなと思っています。失敗を恐れず、これをしてみたらどうなるんだろうということにどんどん挑戦していきたい。これからも、スクリーンという場を借りて、“こんなこともできます”と、提示していければいいなと思っています」
もっと自分を解放させて──
役者、映画監督のほか、宇宙人や芸人に扮するなど、巷(ちまた)では“仕事を選ばない男”と言われる斎藤。その真意とは?
「僕は映画ファンとして、自分に対して素材としての魅力をまったく感じていないんです、いまだに。自分が思う自分って、たかが知れてるんですが、他者が提案してくださった発想に対して、飛び込んでいくことでそこを超えられるかもしれないと思って。
僕は30代に入って出会った『昼顔』という作品で、世の中から“イメージ”を初めてもらって、そのときいただいたものに思いっきりつかまってみたんです。それでその反対の手を思いっきり伸ばしたところにあったのがバラエティーとか、これまでに入ったことのない領域だったのかもしれません。今もそれを繰り返している感じです。
もちろん俳優業というものが軸にあるからこそできるのも事実。そこを忘れると勘違いしている人間になってしまうので、そこは結構考えながらやっています」
長い下積みを経てつかんだ人気俳優の座。だが、上りつめた今でも常に危機感があるそう。
「日本にいるとどうしても比べられるじゃないですか、ランク付けをされて。そういう職業だから仕方ないんですけど、比べられ続けてきたので、いろんなものと比較対象にならない存在になりたいです。それは今もある危機感から来ていて。ずっと比べられるところにいては身も精神ももたない。もっと自分を解放させて、いろんなものを背負いすぎずに俳優業もモノ作りもしていきたい。20年近くやってきて、やっとちょっとずつバランスがとれ始めたのかなと。そう思っています」
日本人の父とシンガポール人の母の間に生まれ、実家のラーメン店で働く真人(斎藤工)。父の急死をきっかけに、20数年前に亡くなった母親の日記を見つけた彼は、両親の足跡を追ってシンガポールに渡り、父と母が遺した“味”を巡る旅に出るが──。松田聖子との共演も話題!