「iPhone XR」を2週間使ってみたレビュー:週刊モバイル通信 石野純也
仕事柄、数々のスマホの基準にもなっているiPhoneは毎年買い替えるようにしている筆者ですが、今年選んだ1台はiPhone XRでした。理由はスマホでは珍しいイエローのカラーリングにひかれたことに加え、iPhone XSやXS Maxに比べて抑えめの仕様を備えたXRで、どこまで満足できるかを確かめてみたかったからです。

Apple Watch Series 4はHermesを選んでしまい、やや金欠気味でしたが、そんな懐事情にやさしい価格にも魅力を感じました。仕様面でも価格面でもスタンダードモデルといえるiPhone XRが、どの程度の実力なのかに興味があったというわけです。

発売日から2週間強使ったiPhone XR


発売前にレビューも執筆しているため、改めてになってしまいますが、まずよかったところは、そのサイズ感。iPhone XRの前はiPhone Xを持っていた筆者ですが、縦長の5.8インチディスプレイはフルに使ううえで、やや小さいという印象がありました。

対する6.1インチのiPhone XRは、わずかですがサイズが上っていますが、iPhone XS Maxほどではなく、筆者の手であれば、何とか片手で操作できます。個人的には拡大表示に対応しているのも、うれしいポイント。文字の大きさはもちろん、アプリのアイコンも少しだけサイズが上がり、ビシッとホーム画面に詰まったようになるのが気に入っています。

▲ディスプレイが大きいが、片手操作用の設定をすれば、何とか両手持ちの頻度は減らせる


▲拡大表示に対応しているのも、"大画面iPhone"ならでは

ディスプレイが有機ELから液晶になったことで、色味が気になるかと思いきや、すぐに慣れてしまいました。もともとiPhoneは有機ELを液晶っぽい色味にチューニングしていたためでしょう。端末にギリギリまで近づいて何かを見ることもないため、解像度がiPhone Xより低くなっているのも筆者の目にはほとんど分からないレベルです。

ただ、当然、比べると、やはり少し暗く、映像によっては液晶らしい白っぽさもあります。ディスプレイでもう一点指摘しておくと、やはりベゼルが厚い形状も、いまだに慣れません。映像を見る際に視界にチラついて邪魔に感じますし、単純に、似た形状でよりスリムなiPhone XSやXS Maxと比べて、少々不格好に見えてしまうからです。これは筆者が、iPhone Xを使っていたから、余計にそう感じるのかもしれません。


▲表示品質以上に、ベゼルの幅が太いのにはなかなか慣れない

同様に、持ったときの厚みも少々気になります。数値にすると、iPhone Xとの差はわずか0.6mmですが、手にすると確かに違いは分かります。重量がiPhone X比で20gほど増していることもあって、全体としてズシっとした持ち心地がします。やはりスタイリッシュさやスマートさを求めるなら、上位モデルのiPhone XSやXS Maxに軍配が上がります。


▲iPhone XやXSと比べると、厚みや、重さも気になるポイント

パフォーマンスに不満はまったくなし


逆に、パフォーマンスについては、iPhone XS、XS Maxと同じCPUが搭載されていることもあり、まったく不満はありません。動作はサクサクで気持ちがよく、iPhone Xのときよりも、操作時の引っかかりが少なくなった印象があります。iPhone XもCPUの性能は十分でしたが、TrueDepthカメラなど、処理能力を要求される機能を連続して使うと、熱を持つことがありました。

ニューラルエンジンが強化されたiPhone XRでは、こうした発熱が少なくなっているのが、操作の快適さにつながっている気がします。とはいえ、これは、まぁ、誤差といえば誤差のレベル。新モデルを買ったプラシーボ効果といえなくもありません。


▲アニ文字のように、TrueDepthカメラをフル活用するシーンで、端末が熱を持ちづらくなった

それ以上にはっきりとした違いを感じたのが、バッテリーの持ちのよさです。iPhone Xは仕事のためにヘビーな使い方をしていると、夕方ぐらいにはバッテリーが足りないかなという状況になることが多々ありました。ところが、iPhone XRは1日きっちり使っても、まだバッテリーが余っていて、翌朝ぐらいまで持ちそうな勢いです。

たとえば、以下のスクショはiPad Proの発表前夜の10月30日に取ったもの。13時半ぐらいに中途半端なまま充電を終え、その後ニューヨーク市内を散策しながら、Messengerをやり取りしたり、マップを見たり、写真を撮りまくったり、SNSに投稿したりとさまざまなことに使いましたが、日付が回る直前でも、47%もバッテリーが残っていました。


▲約12時間、それなりの頻度で使ったが、バッテリーは半分近く残っていた

慣れない土地で、普段よりスマホに頼ることが多かったはずですが、それでも12時間経って、これだけバッテリーが残っているのは優秀です。

実際、スペックも連続通話時間やインターネット使用時間がiPhone XSやiPhone XS Maxより長くなっていますが、体感ではその数値以上に違いがあるような印象。非公表ながら、バッテリー容量が大きいことや、それに反して解像度が低いことなどが、プラスに作用しているといえるでしょう。

また、カメラも、iPhone X比でかなり性能が上がっているため、失敗が少なくなりました。暗い場所で撮ってもノイズが減り、絵の破たんも少なくなったところや、明暗差の激しいシチュエーションでのクオリティが向上したのが大きいと感じます。


▲窓から強い光が差し込んでいても、暗い場所までしっかり写るのはスマートHDRのおかげ


▲ネオンがキラキラと光る風景も、iPhone XRのカメラの得意とするところ


▲暗所性能も上り、かなり暗めのレストランでもまずまずの写真が撮れるようになった


▲空がクッキリと青い。過去のiPhoneより、色味がはっきりしている印象を受ける

まぁ、このあたりは、すでに色々なところで語られつくされているので詳細は割愛しますが、ポートレートモードやズームをそこまで多用しているのでなければ、iPhone XSやXS Maxのようなデュアルカメラは不要とすら思えてきます。あった方が便利なことは確かなんですけどね......。ここは、コストとの兼ね合いといったところでしょう。

個人的にはポートレートモードを寄りで撮ることができ、画質的にもiPhone XSやXS Maxを上回っているところも気に入っています。原理的には、iPhone XSやXS Maxでも、ワイド側のカメラを使ったポートレートモードは実装できるので、UIが多少複雑になることには目をつぶって対応してほしいと思いました。


▲ワイド側のカメラで撮れるポートレートモードは、室内でも明るめに仕上がる

コストダウンの痕跡は見え隠れするものの


発売から2週間が経過し、増産見送りのウワサも報じられているiPhone XRですが、端末としては十分満足度の高い1台です。キャリアによっては、在庫切れを起こしている色や容量もあり、決して売れていないわけではないでしょう。ベゼルや厚みなど、コストダウンの痕跡は見え隠れしますが、スマホにパフォーマンスなり、カメラの画質なりを求める人にはオススメできます。

と、あれこれ理屈を並べてきましたが、ちゃぶ台返しをすると、iPhone XRを選んだ大きな理由の1つはフィーリング。発表会で、鮮やかなイエローに一目惚れしたからです。それでも満足できるのは、iPhone XRの完成度があってこそです。逆にいえば、iPhone XRには、とりあえず好きな色を選ぶだけで大丈夫という安心感があるともいえそうです。


▲一目惚れしたイエロー。色を気に入って買っても、後悔しないクオリティだ

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