4歳から性教育が始まるオランダで子どもたちは何を学ぶのか?
by klimkin
オランダのNEMO Science Museumには、訪れた人が人形でフレンチキスを再現したり、精子が製造される様子を見たり、オーガズムについて学べるビデオが見られたりする性教育のコーナーがあります。性に対してオープンなオランダですが、セクシャルヘルスの研究では優れた調査結果を示しており、男女平等が実現されている国の1つといわれています。そんなオランダの性教育は4歳から始まるとして、性教育関連の作家であるBonnie J. Roughさんが、オランダ性教育の特殊性を説明しています。
https://www.theatlantic.com/family/archive/2018/08/the-benefits-of-starting-sex-ed-at-age-4/568225/
アメリカでは「性教育が失敗している」といわれており、その背景として、性について子どもたちに語ることをタブー視する環境がいまだ存在することが指摘されています。アメリカとオランダにおける「初めて性行為をする年齢」はほぼ同じ17〜18歳であるにも関わらず、アメリカの10代の妊娠割合は、オランダの5倍にも上っています。
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アメリカでは、たとえ子どもであっても「裸になること」について「プライベートであればOK」と教えられるのに対し、オランダの子どもたちは裸で公衆プールに入ります。オランダでは「プライバシー」の感覚は、小さな子どもたちには適用されません。小さな子どもたちは自分自身の体を探索したがるものであるため、一般的な病院ではそのような子どもたちを持つ親へのガイドが配布されており、教師や親は子どもたち同士で体を見せ合うこと、調べ合うことについて「互いに同意があること」「傷つけないこと」「相手の限界を尊重すること」といったルールを守れば問題ないと考える傾向にあるそうです。また、子どもたちが年頃になって恋愛をするようになると、性行為を禁じる代わりに準備や意志決定のサポートを行うとのこと。
そんなオランダの性教育は4歳からスタートします。オランダの初等教育は4歳から始まるところ、性行為の強制や同性愛嫌悪などを防ぐことを主な目的として、2012年に文部大臣が「初等教育以降の全ての学生は性教育を受けなければいけない」という命令を下したためです。なお、2017年の研究では、生物学的な事柄や性の多様性などについての包括的な性教育を行うことで、子どもたちが悪口を言う傾向が減り、LGBTQや女性が学校でいじめられている時に介入する傾向が強まるということが示されています。
オランダで最も有名な性教育カリキュラムは「Kriebels in je buik(おなかの中のちょうちょたち)」と呼ばれるもの。このカリキュラムは4〜6歳の子どもを対象としており、子どもたちが男性と女性の体の違いについて話し合い、生殖や自分の性的な好みや限度について学びます。6歳になると、愛についてや、「恋をするとどうなるのか」ということについて学び、中等教育に入るまでに性の多様性や性同一性、「性行為を行うか」を決定する時期、避妊の方法などを教えられます。また、「性役割のステレオタイプをどのようにして拒絶するか」「健康的な人間関係をどうやって保つか」といった訓練も一貫して行われるとのこと。
by aliceabc0
性教育は性暴力を防ぐ重要な役割を果たすと考えられており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2016年に「包括的な性教育プログラムは、性的暴行の明白な一因であるハイリスクな性行動を減らすと示されている」と報告しています。4歳から始まるオランダの性教育は、「共感」や「自分の行動が人に与える影響」といったものを、徐々に子どもたちに染みこませるという試みといえます。
また「小さな子どもにプライバシーは適用されない」とするオランダですが、一方で避妊や中絶は「プライベートのこと」とみなされます。対してアメリカでは、妊娠や中絶は社会的関心の1つで、政党は中絶や少年少女の妊娠に関する政策を掲げています。加えて、アメリカの性教育は解剖学的・医学的な内容に偏りがある傾向もあるとのこと。
今すぐ教育カリキュラムを変更することは無理でも、性教育のより核心的な内容である「相手をどのように扱うのか」「尊敬を示すのか」「一緒に楽しむのか」といった内容を、家族で話しあうことは可能であるとRoughさんは示しています。