「オタクは引っ越しでぼったくられている」オタク特化の不動産会社代表が語る業界の裏側
「引っ越し費用ってなんでこんなに高いんだろう?」
誰しも一度は思ったことがあることはないのでしょうか。敷金礼金は高いし、家賃以外にもいろいろな費用がかかって、最終的にはけっこうなお金が飛んでいきます。
さらには不動産会社に「ぼったくられた」や「対応がひどかった」などという黒い噂を聞くことも。ただ、実際どうなのかは素人の知識だとわからない部分が多いですよね。
というわけで、今回はそんな疑問を現役不動産会社の代表にぶつけてみました。
お話をお聞きしたのは、2018年6月にゲーム界隈を中心に特別な割引を実施するサイト“おたくのやどかり”のサービスを開始し、不動産業界の闇をコミカルタッチに暴露し話題を集めている株式会社グランツアセットの代表取締役を務める平田知彬氏。
「オタクは本当に不動産会社にぼったくられているのか」をはじめ、業界の裏話やオタクの物件探しエピソードなどいろいろお話をお聞きしました。
自身もかなりのゲーマーでオタクな平田知彬氏。■平田知彬氏プロフィール
オタク特化不動産“株式会社グランツアセット”代表取締役。
ゲームが好きすぎて仕事終わりに毎日ゲームセンターへ通うほどのゲーマー。その腕前は全国ランキングにのるほど。
現在は『シャドウバース』にドハマり中。大会の配信に際して、エール(投げ銭)を1日で50万使いレジェンドサポーターに名を連ねるも社員からは無反応。
──担当直入にお聞きします。オタクは引っ越しでぼったくられているんですか?
平田知彬氏(以下、平田):
正直そういうケースは多いです。これは不動産の裏側の話になってしまうんですが、駅前によくある系列店などはお客さんを選ぶんですよ。なぜならコントロールしやすいお客さんだと(不動産側に)都合のいい物件を紹介できて売上が高くできるからです。
オタクだけが……というわけではないのですが、オタクの方は人柄がよかったり、しゃべりかたが穏やかでイケイケなオーラを出している方が少ないじゃないですか。そうすると、印象として(コントロール)しやすいお客さんとして扱われやすいと思います。
──具体的にどのようにぼったくられていくんですか?
平田:
たとえば消火器はホームセンターに行けば3000円くらいで購入できるのですが、請求書には12000円と書いてあったり、15000〜20000円でできる鍵交換代にいくらか乗せていたりいろいろあります。
さらに、これは本当に犯罪のラインなんですが礼金乗っけというものもあります。敷金1礼金1の物件を、図面を改造して敷金1礼金2にしてその1ヵ月分をそのまま営業マンの財布に入れるという。
“おたくのやどかり”ではこのような業界の裏側をコミカルな会話形式で紹介しています。──聞いたことあります。僕自身も引っ越しする際に、複数の不動産で探した時に同じ物件なのに礼金の数値が違うものがありました。
平田:
そうなんです。本当にあるんです。ほかにも、お客さんのしゃべりかたや風貌を見て、ちょっとコントロールしにくそうだなってなった場合、雑に扱われることもあります。つい最近うちにいらっしゃった方もそうだったんですが、勝手に物件を見にいかせるというケースもあるんです。
──えっひとりでですか?
平田:
そうです。業界用語で「飛ばし」って言うんですが、現地に鍵が置いてあるから勝手に開けて見て気に入ったら戻ってきてというやつです。本当はやってはいけないんです。でも現状やってるところがあるのも事実なんです。
──現在平田さんは、オタク特化の不動産として“株式会社グランツアセット”、なにやら過激な暴露を連発していると噂の“おたくのやどかり”を運営していますが、なぜこのようにオタクに特化した不動産を設立することになったのか教えてください。
変にお金がかかってそうなサイトです。不動産に関して過激な内容がどんどん更新されます。コスプレイヤーさんの事務所に怒られないか心配ですが、拡散して頂けると嬉しいです。あとこの変な生き物をフォローしてると色々と得です、多分お金とかバラまきます→@otayado_ https://t.co/kXwrrYVzps
- 平田社長🐤 (@hirata0203) 2018年6月15日
平田:
もともとゲームが好きで、仕事終わりに毎日ゲームセンターへ行って格闘ゲームやリズムゲームを遊んでいたんです。そこで知り合った友人から引っ越しで「めちゃくちゃお金取られた」や「対応が最悪だった」という声をたくさん聞いて。
──そのころから仕事は不動産だったんですか?
平田:
はいそうですね。ただ、僕は賃貸ではなく売買のほうが専門でしたので、賃貸じたい業務として行っていなかったんですが、「知り合いだけでも紹介しよう」と思って個人的な窓口を設置したのがきっかけですね。
──ではもともといまのような業務でやるつもりはなかったと?
平田:
そうですね。身内だけでもという気持ちでした。正直な話、売買のほうが動く金額って桁外れに多いんです。数千万とか数億とか。その分、ものすごい知識量を求められたり交渉力が問われるんですが。でも賃貸だと1件数万円なので、とくにやらなくてもいいかなと思っていました。
──身内だけ面倒見れればいいというスタンスですよね。それがなぜ“株式会社グランツアセット”を設立して会社として動くことになったんですか?
平田:
身内に紹介しだしたのが2016年の9月くらいからなんですが、口コミでどんどん広がっていて、僕個人ではやりとりが追い付かない量の案件になってしまったからです。Twitterのダイレクトメールで100件以上はきていました。
──それで会社を設立して窓口を設けたと。どのくらいの方がご利用されたんですか?
平田:
非常に多くの方にご利用いただいています。売り上げで言うと、2017年の売上は1億ほどですね。
──1億!? やはり不動産って儲かるんですね。
平田:
うちは仲介手数料も安くさせてもらってますが、それでも十分やっていけています。
それなのにいまでもぼったくり案件がなくならないので、“おたくのやどかり”というサイトでいろいろ暴露して防衛するための知識をみなさんにお伝えしていけたらなと思ったんです。あくまでオタク友だちが騙されないように注意喚起をうながすのが目的です。だから宣伝もほとんどしていなんいですよね。最後にちょこっとだけここなら安心だよってくらいで。
“おたくのやどかり”は注意喚起を目的としたサイトとのこと。──サイトのトップにコスプレイヤーの五木あきらさんがでかでかと出ていましたが、こちらはどんな理由で彼女に相談したんですか?
平田:
まず芸能人ではなくコスプレイヤーさんに任せようというのは決めていました。コスプレイヤーさんの中にも、アニメや漫画などいろいろなジャンルがあるんですが、僕が重点をおきたかったのがゲームだったので、ゲームと根深く、その方自身もゲームをプレイしている、という条件で探していたところ、彼女がピッタリだなと。
──サイトだけでなく、物件案内のやりとりをするラインのアイコンも彼女ですよね? いきなり変わってビックリしました。
平田:
かわいいから変えました。ただ中身はおっさんです(笑)。
──サイト上ではけっこう過激な内容の記事がいろいろあがっていますが、周囲の反響とかどうでした?
平田:
非常に多くの方にご覧いただいています。サイト開設から3日で13万PVはいったみたいです。僕自身これがすごいのかはいまいちわかっていないんですけど。
──それはヤバいですね。ちょっとしたメディアサイトレベルの数値だと思います。内容は真面目なんですが、おもしろおかしく読めるのもいですね。事故物件の話好きなんでこれからもいろいろ暴露楽しみにしています。
オタクが重視する物件の条件──もこうさんやこーすけさんなどの有名実況者の方々にも物件を紹介しているとお聞きしているのですが、どのようなきっかけで彼らの物件案内を引き受けることになったんですか?
平田:
もともと知り合いだった方もいますし、口コミで広がってから直接連絡があって……という方もいました。
──サイトで紹介されている方以外だとどのような方に紹介したとか、お名前出せる方とかいらっしゃいます?
平田:
GameWithのくすきさんや有名実況者のあぽろさん、『シャドウバース』世界王者の紅茶さん……ほかにもたくさんいます。
──『シャドウバース』関係の方が多いイメージですね。
平田:
僕自身が『シャドウバース』をプレイしていることもあって多いですね。ほかにも格闘ゲーム関係の方が少しずつ増えています。
──それは昔の知り合いだったり?
平田:
含めてですね。知り合いを通じて口コミで広がっていって「昔、格ゲーで全国に出ていた奴がいま不動産の仕事をやっていて、すごいいい感じだよ」と紹介してくれているみていで、声がかかっています。
──ゲーム実況者の方って物件を探すとき、やっぱり防音を重視するんですか?
平田:
そうですね。配信者の方々は音をけっこう出されるのでそこは気にしますね。
──音をちゃんと対策したい場合ってどういう物件が適しているとかあるんですか?
平田:
防音の部屋じたいは、うちではなくどの不動産会社でも「じゃあ防音の部屋にしましょう」という紹介はできるんですが、それでは意味がないんですよね。というのは、防音の部屋ってめちゃくちゃ高いんですよ。そうすると金額との相談になりますし、本人の住みたい部屋と違ってきてしまうんです。
──なるほど。平田さんのところだとどんな物件を紹介するようにしているんでしょう?
平田:
マンションタイプで音の響きにくいところを選んでいます。アパートは木造なのでどうしても音が響いてしまうので。あとは部屋どうしが離れていて音が届きにくい構造をしているとか、防音設備以外の部分で工夫して物件を探します。
──アパートはダメなんですね。
平田:
アパートはどうがんばってもダメです。実況者や配信者で音を出す方はアパートは選ばないほうがいいですね。
──実況者じゃなく、ふつうのゲーマーだったりコスプレイヤーだったりだとなにか求めるものって変わってきたりするんでしょうか?
平田:
格闘ゲーマーの方はアケコンの音もあるので音を気にする方が多いです。仕事が終わった後の夜中にプレイすることもあるので。
コスプレイヤーさんは収納ですね。衣装の数がものすごい量なのでクローゼットの大きいタイプの部屋を希望されます。あとひとり住まいなのに衣装を作る部屋が必要だと、1Kではなく2Kと衣装部屋を用意するんですよ。
──そうすると当然家賃も高くなってしまいますよね?
平田:
上がってしまいますね。だから都心からは少し外れたところで探したりします。
──ふつうの会社員の方だと、勤務先の近くとか駅からの距離を優先すると思うんですけど、重要視するポイントがまるで違うんですね。
平田:
そうなんですよ。オタク趣味を持っている方々って仕事より自分の趣味を優先することが多いんです。イベント好きでライブ会場の近くに引っ越した方もいましたね。
──ほえーすごい。完全に趣味>仕事の世界なんですね。
平田:
こういう趣味の部分で重要視したい条件って、通常の不動産では伝えにくい部分ってあると思うんですよ。たとえばコスプレが趣味で「コスプレの衣装作りの部屋がほしい」とか、有名実況者で身バレを避けるためにセキュリティがよく1階じゃないところとか。
昔は引っ越す度に住所特定されて視聴者に聖地巡礼されまくってた僕ですが
- もこう (@mokouliszt) 2018年6月17日
ここで引っ越しをさせて頂いてから特定されなくなりました。
今、家探しをしてる方に本当におすすめです。
https://t.co/pCXrUIrSQ3 pic.twitter.com/mCvEHCxaK2
──他人には隠したい一面ですもんね。とくに有名な実況者の方は芸能人のようにファンがいるのでたいへんそうです。
平田:
もこうさんが実際にあった話なんですが、物件を管理している人が鍵の受け取りか何かで会うことになったらしいんですよ。そのときに、「勘違いかもしれないけど会った人が笑ってた」と言っていて。
──そこから住んでいるところが拡散される……なんて可能性ゼロじゃないですよね。
平田:
ゼロじゃないです。これが銀行なら違うんですが、不動産ってどこか情報管理がザルな部分があるんですよ。仲介会社はとくに教育をしっかりしているところが少ないので可能性が高くなります。
──実はインタビューの前に、実際に物件案内を体験させていただいたんですが、非常にスピーディーで驚きました。1日丸々拘束されるのかと思っていたら、距離が近かったのもあるかもしれないんですが、だいたい全部で3〜4時間で終わってすごく楽でした。
平田:
それはなによりです。でもこれがふつうなんですよ。
──いっしょに回ってくれた方、最初なんだこのイケメンって思ってちょっと気が引けたのですが、『グラブル』と『ウマ娘』の話題で盛り上がりながら楽しく物件見ることができました。
平田:
うちのスタッフはみんなオタクですよ。全員コスプレもやったことあります。
──そうなんですね。やっぱりオタクであることも採用理由に入っているんですか?
平田:
そこはとくに意図があるわけではないんですが、営業感の強いゴリゴリな方とかは避けています。物件案内で長時間いっしょにいるのに会話の話題が合わないのも困るじゃないですか。
──本当にそうです。オタク会話できたおかけですごく楽しく回れました。
平田:
実際のお客さんからも、半日くらいの物件案内でオタクなトークできたのがすごいよかった、という声はいただいています。
──ちなみに、“株式会社グランツアセット”を利用すると、ズバリ何がお得なんでしょう?
平田:
当社Twitterをフォローしていただくことが一応条件なんですが、仲介手数料を50%オフでやらせていただいてます。通常の不動産では言いにくい趣味で優先したいポイントも僕たちなら最初からオープンでお手伝いが可能です。
──敷金礼金家賃が安くなったりはしないんですか?
平田:
聞かれることが多いですね。オタクだったら家賃下がる? って無茶を言うなと(笑)。そのあたりはオーナーさんが決めるものなので僕らのほうではどうしようもないんです。
──そうなんですね。僕もてっきり安くしてくれるんだと思ってました(笑)。
平田:
値段を安くするというサービスより、過剰に請求されない防衛があくまで目的だと思っていただければと思います。
──ありがとうございます。最後にいま引っ越しを考えている方や、この記事を読んで“おたくのやどかり”に興味を持った方へメッセ―ジをお願いします。
平田:
まず基本スタンスとして、無理してうちを使わなくてもいいよ、というのは第一にお伝えしたいです。あくまでひとつの選択肢として、みたいな感じですかね。
別に使わなくてもいいけれど、うちに来たら満足させられる自信はあるので、引っ越しの際の選択肢のひとつとして思っていていただければ。あと、僕個人的にけっこうTwitterでブラックジョークを言うのでそれを容認できる方のほうがいいと思います(笑)。
おたくのやどかり公式サイトはこちら
おたくのやどかり公式Twitterはこちら
■物件を探したい場合は
“おたくのやどかり”サイトページから問い合わせ。完全予約制なのでご注意を。
賃貸だけでなく家の購入も相談可能。
基本的にラインでのやりとりになります。スタッフのスケジュールにもよりますが、2〜3日中に連絡がいきます。
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