長年、主力としてチームを牽引してきた本田と長谷部が去る影響は大きく、“本田&長谷部ロス”がファンの間でも拡大している【写真:Getty Images】

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ロシアW杯後、本田は「若い世代に引き継いでもらいたい」と代表引退を示唆

 日本代表は現地時間2日、ロシア・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でベルギーに2-3と逆転負けを喫し、日本初のベスト8進出を逃した。

 以前より最後のW杯と公言していたMF本田圭佑に続き、試合翌日にMF長谷部誠やDF酒井高徳らが相次いで“代表引退”を宣言。なかでも長年、主力としてチームを牽引してきた本田、長谷部が去る影響は大きく、“本田&長谷部ロス”が代表チームだけでなく、ファンの間でも拡大している。今後、その余波はどのような形で現れるのだろうか。

 西野朗監督率いる日本は、2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会に続いて16強の壁に挑戦した。ベルギー戦では、0-0で迎えた後半3分にMF原口元気の一撃で日本が先制すると、同7分にはMF乾貴士が強烈な無回転ミドルで追加点。ところが同24分にDFヤン・フェルトンゲン、同29分にMFマルアン・フェライニに被弾して追いつかれ、後半アディショナルタイムに高速カウンターからMFナセル・シャドリに決勝弾を叩き込まれた。

 2-0からひっくり返される大逆転負けに日本の選手たちは肩を落とした一方、ベルギー側は歓喜に沸き、ピッチ上に残酷なコントラストが広がる。乾やDF昌子源、DF酒井宏樹らはピッチ上で涙に暮れ、西野ジャパンの冒険はベスト16で幕を閉じた。

 激闘の直後、かねてよりロシアW杯がラストと公言していた本田は「4年後は見られない。それはハッキリしている」と改めて強調。そのうえで「今日、活躍した若い世代にしっかり引き継いでもらいたい」と事実上の代表引退を示唆した。


覚悟はあったというDF吉田も衝撃 「長年やってきた選手たちとやれなくなる…」

 一方、2010年南アフリカW杯から3大会連続で日本代表のキャプテンを務めた長谷部は試合翌日に自身の公式インスタグラムを更新。「この大会を最後に日本代表にひとつの区切りをつけさせていただきたいと思います。(中略)日の丸を胸に戦った時間は僕にとって誇りであり、なにものにも代え難い素晴らしいものでした」と代表引退を発表した。また同日、酒井高も「次のW杯を、僕は目指すつもりはない。未来と希望がある選手が目指したほうがいい」と代表引退の意向を示している。

 DF長友佑都が「僕は目指しますよ、4年後も」と2022年カタールW杯を見据えた発言をすれば、FW岡崎慎司も「代表が必要と言ってくれたら行くだけ。そのスタンスは今後も変わらない」と宣言。本田と同世代の二人だが、好対照な姿勢を見せている。

 なかでも長年日の丸を背負ってプレーした本田と長谷部の代表引退は、代表のチームメイトにも衝撃を与えた。DF吉田麻也は「この大会が終われば長谷部さんだけじゃなくて、今まで長く何年もやってきた選手たちとやれなくなるという覚悟はあったので、分かってはいたことですけど……」と語り、これまでの思い出を振り返るかのように涙を流している。

 日本代表チームは5日に帰国し、空港では出発時の約5倍となる約800人のファンが出迎えており、ロシアの地で見せた日本代表の激闘ぶりが多くの人の心を打った。その一方で、“本田&長谷部ロス”がファンの間で拡大中だ。良くも悪くも注目を浴び続けた本田、そして精神的支柱となった長谷部の存在は代えの利かないもので、SNSを中心に反響が広がり続けている。


次期キャプテン最有力候補は吉田だが…冗談交じりに「まぁ誰かやってくれる」

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長は帰国後、「長谷部選手や本田選手たち、代表引退という言葉があるのか分からないが、長く代表に貢献してくれたことに感謝したい」とコメントを残している。本田と長谷部は、ともに物おじせずにチーム内で発言し、その影響力も大きかった。そんな二人が揃って代表引退となれば余波は避けられない。

 次期キャプテンの最有力候補と見られるのは29歳の吉田だ。プレミアリーグで戦い続けており、実力と経験値は申し分ない。2012年のロンドン五輪ではオーパーエイジ枠で出場し、リーダーシップを発揮して44年ぶりのベスト4に貢献。A代表でも長谷部不在時にキャプテンマークを巻くなど一目置かれる存在だ。吉田は長谷部後のキャプテンについて、冗談を交えながら次のようにコメントしている。

「僕はピッチ内外で自分の役割を理解しているつもり。CBとしてチームを引っ張っていかなければいけないと理解していますけど、どうあがいても長谷部誠にはなれない。なかなかああいう選手の後はやりづらいと思うので、まぁ誰かやってくれると思います」

 キャプテン問題の他に、本田のようにチームを引き締める新たな存在も気になるところ。ロシアW杯で活躍したFW大迫勇也やMF柴崎岳は有言実行タイプの本田とは異なり、どちらかと言えば不言実行タイプだ。柴崎は「僕は引っ張るようなタイプじゃない」と口にしており、多くを語らずに背中で引っ張る形になるだろう。


本田に代わって“物言うベテラン”となるのは…

 本田に代わって物言うベテランとなるのは長友か。これまでも率直な思いを吐露し続けてきたが、ロシアW杯では象徴的な出来事があった。

 6月28日のW杯グループリーグ第3戦ポーランド戦前に、6人が入れ替わるスタメン情報が事前に報道された件について、長友は「ちょっといいですか?」と日本の報道陣に声を掛けて発言の場を設けると、「同じ日本人として協力してほしい」とチームの思いを代弁するかのように懇願。直前に本田がSNSで苦言を呈していたが、長友が改めて報道陣に釘を差す一幕があった。そうした行動からも物言うベテランとなりそうな気配が漂う。

 西野監督が退任を表明したなか、日本代表は新監督の下で再出発を切ることになる。“本田&長谷部ロス”はしばらく続きそうだが、新体制ではその余波がどのような形となって現われるのだろうか。


(大木 勇(Football ZONE web編集部) / Isamu Oki)