《大阪・練炭殺人》元カレが語る、家族を次々と殺そうとした容疑者の意外な一面
弟を練炭自殺に見せかけて殺害した疑いで6月20日に大阪府警に逮捕された足立朱美容疑者(44)には、“偽装の前科”がある。
「2006年8月に、離婚でもめていた郵便局員の元夫の定期入れに大麻を入れ、警察に逮捕されるように偽装したのです」(民放報道局記者)
子どもの親権を自分のものにするという身勝手な欲望を満たすために、平気で罪をなすりつけることができる人間性。それが朱美容疑者にはある。
防犯カメラの映像が決め手に
今年3月、弟の足立聖光さん(40)が、実家のトイレで死亡しているのが発見された。ドアは接着剤で目張りされ、その中で練炭がたかれた形跡があった。
パソコンで書かれた遺書が見つかったことから府警は自殺として処理を進めていたが、聖光さんの妻の強い訴えに従い司法解剖した。その結果、遺体から睡眠導入剤の成分が検出された。自殺が一転、偽装殺人の様相を帯びてきたが、決定的な証拠がない。
墓穴を掘ったのは、朱美容疑者が行ったとされるバレバレの“偽装ミス”だった。
4月末、聖光さんの自宅周辺で、不審な怪文書がばらまかれた。内容は、義妹とその不倫相手が共謀し弟を追い込んだというもの。ガレージに止めてあった車にはスプレーでいたずらがされた。その形跡は、今も残ったままだ。
大阪府警は5月、名誉毀損容疑などで朱美容疑者宅を家宅捜索した。近隣の防犯カメラに、朱美容疑者と思われる女の姿が映っていたことが決め手になった。
「封筒に入った中傷ビラ、パソコン、器物破損に使用されたと思われるラッカースプレーを押収しています。パソコンには、遺書を作成した痕跡がありました」(捜査関係者)
トイレのドアを目張りした接着剤はトイレの外で発見され、遺体から検出された睡眠薬と同じものが、朱美容疑者の自宅から見つかっている。状況証拠は朱美容疑者の関与を物語る。
2年ほど前まで、朱美容疑者と交際していたという元カレに接触することができた。
「99%無実だと思っています。彼女の人柄からも信じられない。お金に困っていたとも思えない」
と、首をひねりながら元カレは続ける。
「やり手のキャリアウーマンで、しっかりした頑張り屋という印象ですね。物静かで声を荒らげたことは1度もなく家族の不満や悪口も一切、聞いたことがない。弟さんのことも“工務店やってんねん。たまに忙しいときには手伝いに行くんよ”と話していたくらいです。家族と仲がいいことは聞いていました。思いやりがある人でした。ただ……」
そこで息を飲み、続ける。
物静かな人だった
「言いたいことがあっても我慢する女性だったなぁとは思います。ケンカになったりすることはなかったのですが、ぐっと我慢しているような感じはありました」
朱美容疑者に「ステージ3か4」(元カレ)の悪性腫瘍が見つかったことで自然と会わなくなり、関係は終わった。
別の知人男性も、朱美容疑者の犯行について、
「物静かな人で、お酒もチビチビ飲んで乱れたりするようなこともない。本当に頭のいい人だったから、あんな子どものような犯行をするとは思えん。やってたら逆に笑うわ」
と一笑に付す。
朱美容疑者のインスタグラムによれば、悪性腫瘍は胃がん。一昨年の12月に胃の3分の2を取る手術を受けたという。「退院したときは、本当にガリガリでした」とは知人女性の声。
以前、外国産車の代理店で一緒に働いていたという男性もその変貌ぶりに、
「捕まったときにテレビを見て、わからなかったんです。イメージが全然違う」
と驚いたという。
「最初、入社してきたときに、化粧ののりがよくて可愛らしい顔の子が入ってきたなと同僚と盛り上がりましたね。当時結婚していたと思いますが、色気が漂っていたし、明るくて愛想のいい子でしたよ」
20年ほど前、ラウンジやホストクラブをオープンするなど手広くやっていたが、どれも長続きしていない。
そんな朱美容疑者の焦りが垣間見える出来事があった。
「2回ほど僕のところに来て“いま私、飲み屋やってんねん。来てー”って営業をかけられた。軽いとは言わんけど、危険な香りはしていましたね。アフター誘って間違いが起こったら家に乗り込んできそうな……」(同前)
元同僚のところにまで営業をかける必要があるほど、経営状態は逼迫していたのか。
父親から受け継いだ建設会社『大一水道』を経営する傍ら、昨年5月ごろ、同府高石市内で学習塾を開いた。子どもを通わせていた保護者は、
「朱美さんは体調を崩して入院をしたりしていたから、主に長男が教えていてね。昨年末には看板を下ろしました。結局、人が集まらんかったんやと思うよ。“息子を自立させるために”って任せとったみたいやけど、まだ長男も若いから難しかったんやろうな」
昨年9月には、堺市内でバー『One Love』をオープンさせたが、最寄り駅から車で約10分という不便な立地。住宅地というほど家が密集しておらず、近隣には畑があり、緑豊かな一帯だ。
店に行ったことがあるという60代の男性は、
「普通のショットバーや。バーテンは30〜40代の気さくな兄ちゃんだったけどな。朱美容疑者のとこの従業員だったと思うで。全然客もおらんかったんちゃうか。定休日じゃなくても、やってない日が多いし、なによりこんな場所で流行るわけないやろ」
といまさらながらあきれる。
容疑者の次男に聞く
本業と副業だけでなく、
「自分のところでフレンチブルドッグを6匹も飼っていたが、さらに保護犬を預かって面倒を見ていた。お金がなかったらそんなことせんやろ。ただ偽善者やって言われたと落ち込んでいた」(別の知人)
何をやってもうまくいかない朱美容疑者だが、今回の犯行も“バレバレ”な手口だ。
今年1月には、朱美容疑者が作った甘酒を飲んだ父親が意識不明になり救急搬送された。そのまま意識は戻らず、6月28日に息を引き取った。大阪府警は司法解剖し、朱美容疑者との関連を調べる。
母親も朱美容疑者が作った抹茶オーレを飲んだ直後に意識を失ったと話している。飲み物に何かを混ぜるなど“魔女”のようだが、あまりに杜撰な手口は“バレバレ魔女”とでも形容するべきだろうか。
帰宅した朱美容疑者の次男は、「母はやっていません」と語る。本人も殺人容疑を否認し続けている。