磁場を変化させることで瞬時に形状を変化させられる折り紙構造ロボットを3Dプリンターで出力
複雑な形状と不均一な磁性を持った物体を、3Dプリンターを使って正確に出力することで、磁場の変化によって瞬時に形状を変えて、物理的に動作できるロボットをMITの研究者が開発しました。3Dプリンターによる精巧な立体形成によって、体内を動き回ることができる極小サイズのマイクロロボットの開発などへの応用が期待されています。
Printing ferromagnetic domains for untethered fast-transforming soft materials | Nature
磁場の変化で瞬時に動きを作ることのできるマイクロロボットの様子は、以下のムービーで確認できます。
3D Printing a Fast-Morphing Smart Material - YouTube
これまでに形状を変化させられるさまざまな物体の開発が行われてきました。
多くの物は磁性を利用して形状を物理的に変化させますが、変形できる方向に制限があったり……
ワイヤーで接続する必要があったり、俊敏に形状を変化できなかったりと、実用性に難がありました。
これに対して、MITのユーノ・キム氏らの研究チームが開発したロボットは、俊敏に形を変えられるという特性を持ちます。以下は3Dプリンターで作られたロボットを、カッターの刃で土台から切り離す様子。
雪の結晶のような形状のロボットは……
磁性の変化によって、瞬時に形を変えられます。立体的な折り紙構造によって、形状だけでなく、動きを持たせられるというのが大きな特長です。
作り方は、3Dプリンターによって立体構造を作りつつ……
磁場にさらして磁性を持たせます。
出力しつつ磁性をコントロールすることで、物体が部分的に異なる磁性を持たせることができます。
3Dプリンターで出力されるのは柔らかいシリコンゴムで、中に鉄の粒子が練り込まれたもの。
ピンセットでつまむとゴムはちぎれましたが、円盤状の巨大な磁石に引っ張られるようにして上向きに直立します。
ゴムを左右に揺らすと、磁石を追い求めるかのように柔軟に曲がります。
3Dプリンターのおかげで、複雑な形状の物体を作ることができました。
不均等に磁性を帯びた立体形状は……
磁場の変化によって、形状を変えられます。
研究者たちは、立体物の構造変化(動き)を検証するためのモデルを作りました。
コンピューターでモデルを作り……
実際に再現して動きをデザインします。
複雑な立体構造を折り曲げたり……
つぶれた状態に磁場をあてることで……
元の形状に復元したりすることに成功しています。
折り紙構造の物体によって、上から落ちてきたボールをキャッチ。
縮むように形状を変化させて……
その後、一気に展開することで、物体をジャンプさせることにも成功。
コンピューターで設計した通りの物体を作成できるので、様々な動きを持たせることができます。
ムービー冒頭の雪の結晶状の物体も……
複雑な立体に変化させられます。
小さな物体は体内の薬を運ぶドラッグデリバリーシステムへの応用が考えられています。薬のカプセルをのせたロボットは……
折りたたまれて薬を包みます。
さらに、回転しながら薬を運搬。
目的地で展開すると……
小さくなることで、薬をリリースしました。
MITの研究者が開発した磁性によって複雑な形状に変化できるロボットは、3Dプリンターによって出力されるため、極めて複雑な形状の物体を極小サイズで形成することが可能。さらに「折り紙」モデルを活用することで動きを持たせたり移動したりできるので、体内を移動できるマイクロロボットにも応用できると考えられています。