正恩氏「専用機」は旧ソ連製 シンガポールまで飛べるのか
初の米朝首脳会談が2018年6月12日にシンガポールで行われることになった。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長にとっては、5月7〜8日の中国・大連に続いて、2回目の空路での外遊になりそうだ。
そこで注目されるのが、今回の正恩氏の「足」だ。北朝鮮が利用している政府専用機は、元々は1960年代に開発された旧ソ連製のもので、1980年代に購入されたとみられる。シンガポール行きにも専用機を使用する可能性もあるが、老朽化や航続距離の問題から、途中で給油したり、チャーター機を借りたりしなければならなくなる可能性も指摘されている。
政府専用機には少なくとも「1号」と「2号」がある
北朝鮮は、国営高麗航空が購入した旧ソ連製のイリューシン62M型機を政府専用機として使用している。18年2月の平昌五輪の際は、妹の与正(ヨジョン)氏ら特使団を乗せて韓国・仁川国際空港に飛来した。この時、朝鮮中央通信は、一行が乗ったのは「チャムメ(大鷹)2号」だと報じている。この「2号」はドアの横に国旗が塗装されていたのに対して、5月に大連で目撃された機体は、ダムをモチーフにした国章が塗装されていた。これが「1号」だとみられる。このどちらかがシンガポール行きにも利用される可能性が高い。
たびたび労働新聞で公開される内部の写真では、正恩氏の執務スペースにモニター、複数の電話、PC、灰皿などが確認できる。比較的内装は豪華に見えるが、北朝鮮がこの機体を導入したのは1985年頃。イリューシン62M自体も遅くとも1995年には生産を終了しており、老朽化や整備面の課題が指摘されている。
消息筋「中国で給油するかチャーター機を借りない限り...」
イリューシン62M型機の航続距離は、貨物などを最大限積んだ場合で約7800キロ。平壌からシンガポールまでの直線距離は約4800キロで、比較的容易にクリアできそうだが、それでも不安視する声が出ている。聯合ニュースは5月11日、
「平壌から大連までは距離が近く問題はないが、シンガポールまでは長距離のため、中国で給油するかチャーター機を借りない限り、行くのは現実的に難しそうだ」
とする「ある消息筋」の声を伝え、正恩氏の大連行きについて
「朝米首脳会談に備え専用機の性能を確認するとともに、中国からチャーター機と操縦士を借りるためとの見方もある」
と指摘している。東亜日報によると、崔竜海(チェ・リョンヘ)氏が14年4月に正恩氏の特使としてモスクワに向かったが、途中で故障して引き返した。高麗航空は、かつては平壌とモスクワ、クアラルンプールなどに定期便が飛んでいたが、現時点での定期路線は北京、上海、瀋陽、ウラジオストクの4つのみ。こういった経緯もあって、運行上のノウハウや機体性能を問題視する向きもあるようだ。