2017年10月にノルウェーのエネルギー企業であるスタトイルがスコットランドの沖合に建設した世界最大の浮体式洋上風力発電所が「Hywind Scotland」です。Hywind Scotlandは直径154メートルという巨大なもので、スコットランドのおよそ2万世帯に電力を供給できる能力があります。このHywind Scotlandが稼働を開始してからおよそ3カ月で予想を超えるパフォーマンスを見せたとスタトイルが発表しています。

World class performance by world’s first floating wind farm - World class performance by world’s first floating wind farm - statoil.com

https://www.statoil.com/en/news/15feb2018-world-class-performance.html

スタトイルがマスダールと提携して運営するHywind Scotlandはスコットランドから25キロメートルの沖合にある浮体式洋上風力発電所で、5基のタービンで最大30MWの発電が可能となっています。

Hywind Scotlandについては過去にGIGAZINEでも記事化済みです。

世界最大の浮体式洋上風力発電所「Hywind Scotland」が稼働を開始 - GIGAZINE



発電設備の能力は最大出力で表されますが、その能力を長時間にわたって100%発揮することは現実的に不可能です。特に自然環境を発電に利用する太陽光発電や風力発電は、発電設備周辺の気候によって発電量が大きく変化します。そこで、設備の最大出力に対して実際にどれくらいの電力を作ることができたのかを示す割合が「設備利用率」が重要になってきます。

スタトイルによると、強風が吹く冬の時期は、海底に固定するタイプの洋上風力発電の設備利用率は40%〜60%が一般的とのことですが、2017年11月から2018年1月まで3カ月のHywind Scotlandの設備利用率は約65%と、一般的な数値を上回る結果が得られたそう。これは3カ月を90日として計算すると、30(MW)×24(時間)×90×0.65=4万2120MWhとなり、3カ月で約42GWh時間の発電を行ったということを意味します。



by L.C. Nøttaasen

2017年10月には「オフィーリア」と呼ばれる大型ハリケーンがスコットランドを直撃、時速125キロメートルという強風を記録しました。さらに、2017年12月初めにはキャロラインと呼ばれる嵐がスコットランドを直撃し、時速160キロメートルを超える突風と8.2メートルを越える高波が記録されました。



by Tony Armstrong

Hywind Scotlandは、天候がきわめて厳しい時には安全性の問題からタービンの稼働を停止させますが、ある程度天候が落ちついてくると自動的に再稼働を始めるように作られています。さらに、タービンの羽の角度を風に合わせて調節し、大きな風や波に対してもなるべく受ける影響が小さくなるように稼働します。これによって、HyWind Scotlandは二度の嵐を乗り越え、かつ沖合の風をなるべく無駄にしないように発電できたというわけです。

スタトイルのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントであるIrene Rummelhoff氏は「世界中の洋上風力資源の80%以上が、海底固定型の風力発電所を建設できないような深い海の上にあります。アジアやアメリカ西海岸の洋上には大きな可能性が眠っています。私たちはHywindが新たに活躍する機会を模索しています」と述べています。スタトイルとマスダールは、Hywind型の浮体式洋上風力発電所のコストを、2030年までに1メガワット時間当たり40〜60ユーロ(約5200〜7800円)に削減しようと考えているとのことで、洋上の風力資源は太陽光・地熱・潮力など他の再生可能エネルギーとも十分に渡り合えると主張しています。