世界中から仮想通貨を奪う北朝鮮ハッカー部隊は1700人規模
『北朝鮮・工業大学の授業風景(写真:AP/アフロ)』
平昌オリンピックも無事終了した。引き続き、パラリンピックが開催されるが、問題は3月18日にパラリンピックが閉幕した後である。
なぜなら、オリンピックの開会式に出向いたペンス副大統領や閉会式に参列したイバンカの韓国での言動を見る限り、非核化に向けた北朝鮮との対話は期待できそうにないからだ。
特に、ペンス副大統領の発言は北朝鮮への敵意をむき出しにしたものだった。曰く「金与正はゴミの怪物だ。10万人もの政治犯をゴミ扱いし、極悪な環境に置いている。平和の祭典の最もそぐわない」。
イバンカも父親であるトランプ大統領の意向を受け、「北朝鮮への最大限の圧力を強める」と強調。ホワイトハウスは「北朝鮮と公海上で物資の密輸に携わっている」として30社近くの中国の船会社や船舶を名指しで制裁の対象に指定。
中国政府は猛反発しているが、このトランプ発言は明らかに北朝鮮への攻撃を前提にしたものだ。
要は、中国に仲介役を期待したが、「堪忍袋の緒が切れた」というわけだ。
このままでは、北朝鮮がアメリカ全土を射程に収めるICBMを完成させてしまう。その前に、北朝鮮の脅威を取り除くのが「アメリカ・ファースト」を掲げて当選した自分の責任だと考えているに違いない。
実は、これまで国際社会による経済制裁が科せられていながら、金正恩体制は巧妙に潜り抜けてきた。それどころか、サイバー攻撃を専門とする「586部隊」を編成し、2016年2月、バングラデッシュ中央銀行から9億5100万ドル強奪したのを皮切りに、ベトナム、エクアドル、フィリピンなど途上国の銀行を次々に狙っては資金を奪ってきている。
その手法は、さままざま組織や一般企業のサイトを「踏み台」にしていくもの。確認されただけでも、ポーランド政府のサイトを始め、メキシコ、ブラジル、中国、米国など31カ国104機関が経由されている。すでに「WannaCry 」と称されるウィルスを、150カ国30万台のコンピュータに侵入させたともいわれている。
2017年からはビットコインなど仮想通貨に狙いを定めたといわれ、最近大きなニュースとなった日本のコインチェックのNEMもターゲットにされていた。
アメリカ財務省の調査では、この「586部隊」所属のハッカーは1700人で、支援部隊も5000人という規模を誇る。それだけではない。彼らは、国際的な犯罪組織と連携しつつ、武器、麻薬、偽札の売買でも大儲けを繰り返している。アメリカにも「アイス」と呼ばれる合成麻酔薬が密輸されている有様だ。
もはや対話では決着のつけようがない。トランプ大統領は金正恩の斬首作戦にゴーサインを出したと思われる。開戦の火ぶたが切って落とされるのは、そう遠いことではあるまい。(国際政治経済学者・浜田和幸)