インターネットで仲間を募って、集団で自殺をする。そんなショッキングなニュースが報じられるようになったのは、2003年頃からだっただろうか。一度報道されると、密閉したクルマの中で練炭を焚くという自殺方法を真似、同じように命を落とす若者があとを絶たなくなった。

 しかし、彼らはなぜインターネットで仲間を募り、一緒に自殺しようとするのだろう。

 死にたいと思い悩んでいる人の多くは、周囲に相談できる人がいないという。思い切って、自殺したいなんて言ってみても、まともに聞いてもらえないに違いない。あるいは、変に引き留められるのも煩わしいと思うかもしれない。余計な心配をかけたくないと家族や友人を気遣い、悩みを打ち明けない人もいるだろう。

 かといって、死ぬのは恐い。生と死の狭間で、モンモンとした想いを抱え、なんとか生きているのだ。

 でも、インターネットに触れるうちに、自分と同じ境遇・悩みを抱えた人たちがたくさんいることを知る。そして簡単に彼らと繋がることもできる。しかも、当たり前だが、死にたいと言っても、彼らは引き留めることはない。むしろ、仲間意識が芽生え、じゃあ一緒に死のうよ、となるのだ。

 自殺を思いとどまる最後の砦は、死への恐怖や孤独感。しかし、ネット自殺では、死にたいと思う人々が集まり、連帯意識を持つことで、その壁をいとも簡単に越えてしまうのだ。ネット自殺の深刻さは、こんなところにある。

 しかも、これまでインターネットの掲示板などに自殺を予告し、仲間を募ったりしする人がいても、迅速に対応し、その自殺を未然に防ぐことは困難だった。

 しかし、そんな状況にも変化が見られるようになってきた。例えば、総務省と電気通信事業者団体(社団法人電気通信事業者協会/社団法人テレコムサービス協会/社団法人日本インターネットプロバイダー協会/社団法人日本ケーブルテレビ連盟)と警視庁の3者が合同で、インターネット上の自殺予告について対策を協議し、書き込みなどがあった場合のガイドラインをまとめたのだ。

 とはいえ、ネット自殺への取り組みはまだまだ始まったばかり。今後のさらなる展開に期待したい。(文/verb) 


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