アン・ビョンジュン(撮影:岸本勉/PICSPORT)

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9日、日本と対戦した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表は、多くの決定機をつくりながら日本のGK中村航輔に阻まれ続け、後半アディショナルタイムの失点で敗戦した。悲嘆に暮れる選手たちを北朝鮮応援団は拍手で励ましたが、ミックスゾーンに現れた選手たちは失望の色を隠せなかった。

今回の北朝鮮代表チームの中には3人の在日朝鮮人の選手がいる。16番を付けて先発したリ・ヨンジ(李栄直)、DFの6番キム・ソンギ(金聖基)、そして77分から出場した10番のアン・ビョンジュン(安柄俊)だ。試合前、北朝鮮の選手の名前が次々に呼ばれる中で、アンの名前がコールされると、一層大きな歓声が北朝鮮応援団から起きた。

「在日のみなさんがたくさん応援に来てくれてそれが自分たちの力になりました」

そう言いながらアンの表情は暗い。

「結果的に最後食らって負けちゃったんで、結果に繋がらなかったのは残念です。自分もアップしながら見ていて、決定機もこっちの方がありましたし、相手GKのいいセーブがあったりして、どちらに転んでもおかしくない試合だったので残念でした」

「自分はシュートを打てなかったので、ゴールに絡む仕事をしたかったのにそこができず、チームも負けてしまったのでそこは自分としても残念です。(ゴールに迫ったヘディングは)折り返しのパスにするのか思い切って狙うのかが中途半端になってしまいました」

「日本はポゼッションが上手いのでコンパクトにやろうということになっていました。内容的には思い通りだったのですが、そこが勝ちきれなかったのが凄く悔しいです。」

「チームとしてはいい面がたくさん出たと思うので、残りの2試合にそれは生かしていきたいと思います」

固い表情のままミックゾーンを去ろうとしたとき、ある記者が北朝鮮の国歌が流れ終わった後、観客が拍手をしたことを告げた。

「そうですか!みんなに言っておきます」

そのときだけ、アンの表情が本当にうれしそうになった。

【日本蹴球合同会社/森雅史】