「イカセカイの研究がハカどるマストアイテム!」「セッテイ資料が詰まったイラスト集でスプラトゥーン2がもっと楽しくなる!!」という煽り文句に偽りなし、ファンのためのより深く知るための設定資料集としての側面と、「キャラクターデザインや各種デザインはどのようにしてできあがっていくのか?」という流れを追うこともできる貴重な資料集としての側面も兼ね備えており、1粒で2度おいしい秀逸な構成になっています。やはりあれだけの完成された世界観を作り上げるためには、膨大な量のボツが存在し、それらを支えるために山のようにいろいろ描かれ、そして作られてきたのだなぁということが骨身に染みる壮絶な内容です。

Amazon | スプラトゥーン2 イカすアートブック | 週刊ファミ通編集部 | ファンブック



まずイラスト集としての側面を見てみると、例えば京都水族館のイラストもちゃんと掲載されており、それぞれの生き物が実際にはどういう感じなのかというのをじっくり見ることが可能。オオサンショウウオかわいい。



設定資料集としての側面は以下のようになっており、例えば「ヒーロースーツデザイン案」を見ると、それぞれのパーツがどういう意味を持っているのかがよくわかります。あれは一体成形3Dヘッドホンだったのか……。



サーモンランで浮き輪になってパチャパチャしているアレは「タマシイ」という解釈で正解という恐るべき設定も判明。サーモンランでくたばってしまったイカはインクのパワーによって短時間に輪廻転生していたらしい。



ボーイの設定案も読み応えがあって、「フライ」「焼き」など、あちこちの端っこまで目を通すと面白いコメントがたくさん発見できます。



コメントの一例として「ちょーあたまわるいコ」「やべえ かかわりたくない」など、セルフツッコミも満載。



「末端冷え性」「人と目を合わせつづけるのが平気なタイプ」



「カレシの影響でシャープマーカーを使っている」「お母さんと仲良し」「スポンサーがついている」「パートナーも超強い」「お金をとにかく服に使う人」



関西のダンサーは「母が異様に若い」「弟がイケメン」、デトックスさんは「なぞの穀物を食べる」、などなど。



「すぐ泣く」「血圧が低い」「しぬほど頭が悪い」「芋しか食べない」「かわいい妹がいる」



新型のインクタンク案&ハーネス案。こういうのがもっと山ほど載ってます。



スプラシューターを分解するとこうなっているであろうという図。ブキ関連も眺めているだけで楽しい解説図みたいなものがてんこもり。



スペシャルも同様で、ミサイルの正体であるPET弾の説明あり。その他のスペシャルも読んでいると「ほほー」となります。



各種フクもいろいろな案が載っていて、「ふだんは楽観的なイカたちだが、カーデの裾を伸ばし、スカートの丈を詰めることに関しては並々ならぬ集中力を発揮する。最高の丈感を求めるあまり、準備に時間をとられすぎることも頻繁にあるが、そのせいで遅刻することについては何のためらいもない」というように、「そういうことになっていたのか……」という解説がそこかしこにあり、読み応えアリ。



ホタルのデザインの場合、どういうような候補が他にあったのかがわかり、「そういう風に考えてアイディアを詰めていくのか!」という思考の流れがわかります。例えば以下は髪飾り案ですが、ほかにもあの和服な衣装についてのプロセスも載っています。



アオリの場合はこんな感じ。髪飾りやピアスだけでなく、その他の衣装についても、どういう検討を経てああいう感じにまとまっていったのかがわかるようにページが構成されています。設定資料と言うよりも、デザインプロセスが垣間見えるので、キャラクターデザインなどの参考になるはず。



みんな大好きサーモンランについて、「バイトは現場作業員のみで、指定された船に直接集合となるため、雇い主の顔を見たものはこれまでひとりもいない」という不穏な説明も。そしてみんなが気になるところの「シャケ」「イカ」「タコ」の関係についても書いている箇所あり。このあたりは非常に「設定資料集」という感じがして、読んでいるだけで面白いです。



キンシャケは、やはりキンシャケ。



ステージについても山ほど載っており、例の美大の場合、「校舎の階段の上り下りが多く、1限目が4階以上の教室で行われる場合、授業に行くのを諦めるイカが多い。ここの学食で提供されるカレーは、週末になるにつれだんだん緑色になっていくことで有名」という謎エピソードも。特に美大ステージはあちこちに「〜氏による」みたいな、「美大あるある」が設定されていることもわかります。他のステージに比べて段違いに設定が凝っているのが印象的。



また、「ミステリーファイル」についてはすべて掲載されているため、ゲーム中でコンプリートできなかった人でも大丈夫。この「ミステリーファイル」のページにたどり着くまで徹底的にあらゆるページの端っこまで読破していると、「あのミステリーファイルの記述はそういう意味であったか!」というのがわかるようになっています。



アニメーション絵コンテも掲載されており、プレイヤーに対してどういう印象を持って欲しいのかがわかり、ものすごく短い秒数の中でいろいろな表現を詰め込んでいることがわかります。



そして「スプラトゥーン オモイデ」ということで、前作の「イカすアートブック」未収録イラストも網羅されています。



「スプラトゥーン2」をプレイし、いろいろなお絵かきをしたり、イラストを描いたことがある人であれば、「買って良かった」と思える内容に仕上がっており、「プロの仕事」とは何か?というのをかなり垣間見ることができる構成です。正直、設定資料が詰まったイラスト集と言うよりも、「1本のゲームなり世界観を完成させるには、どれだけのことをすればいいのか」という歴史資料集みたいになっており、「キャラクターデザインをしたい!」「ゲーム会社にデザイナーとして就職したい!」という人は必見です。そういう内容が380ページ以上もフルカラーで詰まっているため、2700円という価格以上の価値があります。

Amazon | スプラトゥーン2 イカすアートブック | 週刊ファミ通編集部 | ファンブック