燃料と網がなくて魚を獲れない北朝鮮の漁船団

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北朝鮮の東海岸では、ホッケ、ニシンなどの盛漁期を迎えている。また、6月からはイカ漁が始まる。例年なら船がひっきりなしに出入りし、港は大賑わいとなるはずだが、今年は静かだ。それもそのはず、多くの船が出漁できずにいるからだと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、出漁できない理由は、網と燃料が不足しているからだ。

正恩氏の宣言も「チャラ」

北朝鮮では、「中国が原油の輸出を止める」との噂が立ち、買い占めや売り惜しみのためにガソリンやディーゼル油の価格が高騰。そのため国営の水産事業所も個人の漁師も、燃料を確保できずにいる。

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清津は、600軍部隊事業所、板門店(パンムンジョム)外貨稼ぎ事業所、清津連絡所冷凍水産など、10以上の軍関係の水産事業所があるほか、高抹山(コマルサン)水産事業所、清津水産事業所、清津水産協同組合など内閣系の水産事業所も拠点を置く、北朝鮮有数の漁港だ。

これら水産事業所所属の漁船のうち、出漁できたのは3分の1にすぎないと情報筋は伝えた。

なんとか出漁できた船も、釣り上げた魚を中国の漁船に売り払い、使い古しの網や燃料と交換して戻ってくるという。魚を積んで港に戻ってきたところで、輸送ができないからだ。

金正恩党委員長は2015年の新年の辞で「水産部門においては黄金の海の新しい歴史を創造した人民軍の闘争気風に学び、漁業を決定的に盛り立てて魚の大豊漁を実現して人民の食卓の上に磯の香りを漂わせねばなりません」と述べ、漁業に力を入れることを宣言。これに合わせて、漁業関連施設の現地指導も行った。

朝鮮中央通信によると、金正恩氏は2014年7月、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第1521号企業所の成川江網工場を現地指導し「企業所が朝鮮労働党の指導の下で新しく建設した近代的な網工場とプラスチック・パイプ職場の生産を正常化するためのたたかいを力強く展開していることを高く評価した」と報じている。

中国の圧力か

ところが実際には、漁網は全く現場に供給されていないのだ。工場の実態について情報筋は触れていないが、何らかの理由で生産ラインが止まったものと思われる。

道内にある清津網工場も、生産を中止している。

別の情報筋によると、清津網工場は中国人経営者の投資により営まれていたが、この経営者が最近になって投資を引き上げたという。その理由は、電力事情の悪さで生産を続けるのが難しくなったというものだ。

頻繁な停電や不安定な電圧のせいで、生産が安定していなかったのは事実だが、突然の投資引き上げに情報筋は首を傾げている。また、完成品の網の輸入もストップしている。

情報筋は言及していないが、いずれも中国政府の圧力によるもである可能性がある。