こたつと、みかんと、気になるカレ。磯村勇斗インタビュー
まだまだ寒い日が続く季節。日本の冬の風物詩と言えば、こたつ&みかんでしょ! ということで、俳優・磯村勇斗がこたつでぬくぬく過ごす姿を撮影。「なんか実家にいるみたいだな〜」と、まったりモードでインタビューもスタート。『仮面ライダーゴースト』のアラン役で人気に火がついた磯村に、ライダー後の“変化”や、今春スタートの朝ドラ『ひよっこ』、最近のプライベートについてお聞きしました。

撮影/宮坂浩見 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/大坪真人

アランは今でも僕のなかに生き続けている



――磯村さんは、2015年10月から2016年9月まで『仮面ライダーゴースト』にアラン役/仮面ライダーネクロム(声)で出演されていましたが、改めて振り返っていただきたいと思います。

はい、よろしくお願いします!

――『仮面ライダーゴースト』を通じて、「磯村勇斗」をたくさんの方たちに知ってもらえたという実感はありますか?

放送中は、たくさんの子どもやお母さんたちに声をかけていただいたので、そういう意味で実感することができました。

――役者としての経験値も、かなり上がったのではないでしょうか?

終わった直後は、自分では何がどう成長したかわからなかったんですけど、ほかの現場に行ったときに、自分が精神的に強くなったというか、おじけなくなったって言うんですかね。そう感じるようになりました。

――具体的には?

もちろん監督さんが求めるビジョンに沿って演じるんですけど、思いついたことがあったときに、自分から相談したりできるようになりました。昔は何か思いついたとしても、「こんなこと言ってもいいのかな」って、うまく伝えられなかったんです。『仮面ライダーゴースト』は、監督とたくさん話し合いながら作っていく現場だったから、コミュニケーション能力や考える力が身に付いたのかなと思います。



――『仮面ライダーゴースト』は磯村さんの財産になっているんでしょうね。

そうですね。1年間ずっと同じメンバーでいたから、キャストもスタッフさんも家族のような存在というか。定期的にみんなで集まれたらいいなぁ。

――西銘 駿さんや山本涼介さんとは、何でも話せる間柄になったのでは?

駿と涼介とは、撮影中もプライベートでも一緒にいる時間が長かったし、お互いの秘密や恥ずかしい話をいっぱいしましたから(笑)。戦友であり家族のような存在。大切な仲間です。

――1年間演じ続けたアランは、どういう存在になっていますか?

アランは……、今でもずっと僕の心のなかに生き続けています。アランのことを思い出すたびに、もっと成長しなくちゃって思うんです。




幾度のオーディションを経て…朝ドラに出演決定



――4月3日スタートのNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』に出演されることが発表になりました。

小さい頃から朝ドラを見て育ったので、役者になってからもずっと出たいと思ってました。『まれ』(2015年放送)のときは1話だけの参加だったので、今回、出演が決まって涙が出るくらいうれしかったです。

――ご家族の反応はいかがでしたか?

母親も朝ドラが大好きでずっと見ているので、いちばん喜んでくれましたね。家族にはテレビ電話で報告したんですけど、「決まったよ」って伝えるんじゃなくて。普通に話しながら、段ボールの端切れに「決まったよ」って書いたのをちょっとずつ出していって。それに気づいたときの母親の反応ときたら……

――驚いていましたか。

こんな高い声聞いたことない!っていうくらい、「うえぇぇぇ〜!?!?!?」って(笑)。もう大号泣してました。

――朝ドラのオーディションはこれまでにも受けていたそうですね。

やっぱりすごく狭き門で、何回か受けてるんですけど、今まで全然ダメで。やっと機会をいただけたので、そのぶん喜びは大きいですね。

――見習いコックの前田秀俊役に決まったとのことですが、もともと磯村さんは料理が得意だから、それも決め手になったとか?

いえ、オーディションのときは、時代背景が1964年のオリンピックの話だということしか知らなくて、僕も料理の話は一切しなかったので、料理人の役に決まった理由はわかんないんですよね。

――そうだったんですか。

だから、自分では運命的な出会いだと思っていて。上京してひとり暮らしを始めてからずっと自炊だし、バイトでも料理を作ってたし、生きてきたなかで経験を積んだものを役者として活かせるときが来たのがうれしいです。



――『ひよっこ』はどんなストーリーなんでしょう?

高度成長期の話で、有村架純さん演じるヒロインのみね子が、出稼ぎに出たまま帰って来ない父親(沢村一樹)の代わりに、東京へ集団就職するんです。それで町工場で働き始めるんですけど、工場がつぶれて仕事を失ってしまって…。

――波乱に満ちてますね。

そうなんです。途方に暮れていたみね子が、「ここの洋食屋はおいしかった」と、父親に聞いていた洋食屋さんを訪ねて、そこで住み込みをしながら働くことになるんですけど、僕はそこで働くコック見習いの役です。

――前田秀俊はどういうキャラクターですか?

ザ・真面目!で料理熱心。料理長の料理の腕を盗んで、どんどんうまくなっていきたいと思ってる野心家ですね。

――役にあわせて、黒髪&短髪にされましたよね。

美容師さんとふたりで鏡を見ながら、「この人誰? 誰?」って言い合ってました(笑)。ここまで短くしたのは高校生以来かなぁ? 今は少し伸びてきたんですけど、切った直後はベリーショートって感じで、首まわりがスースーして寒かったです(笑)。




見習いコック役! 料理レッスンへ通う日々



――見習いコックを演じるということで、撮影に入る前に、料理のレッスンを受けていたんですよね。

はい。1週間に1〜2回、多いときは6時間くらいかけて教えていただいたんですが、これが大変でした(苦笑)。

――磯村さんの場合、ある程度は料理の基礎ができてるから…

いえ、自分が普段やってる料理とは全然違って、そんな甘いものじゃないなと。僕は普段、ステンレスの包丁を使っているんですけど、当時は鋼の包丁を使っていたので、重さからして違うんですよ。まずは包丁の握り方や包丁研ぎのやり方など、道具を大切に扱うということから学びました。ほかには、基本的な野菜の切り方。ニンジンのシャトー切りとか。

――シャトー切り?

ハンバーグの付け合わせに、ニンジンのグラッセがついてたりするじゃないですか? 5〜6センチくらいの細長いフットボールのような形に切っていくんです。

――難しそう…。

難しいです(苦笑)。今までやったことがなかったら、自分の知らない世界を見たという感じでしたね。でも、学んでいくうちにどんどん秀俊に近づいていく感覚があったので、料理レッスンをしていただいて本当によかったです。

――家でも自分で練習したり?

はい。レッスンで得たことは持って帰って、必ず自分で復習するようにしていました。普段だったらピーラーで剥いちゃうところを包丁を使ったり。教えていただいたやり方で作ると、料理の見栄えも変わるんです。

――料理の腕がまた上がりましたね。

だといいんですけどね(笑)。今はコック見習いの役だから、野菜の下ごしらえをするくらいですけど、いつか料理を作るシーンが出てきたらうれしいですね。そしたら、レパートリーがもっと増えるなって期待してます(笑)。

――手を動かしながらお芝居をするのって、とても大変そうですが…。

最初のクランクインが、玉ねぎの皮を剥きながらセリフを言うシーンで、それは大丈夫だったんですけど、千切りをしながら会話となるとちょっと怖いなって。このあいだ、千切りの練習しているときに指を切っちゃったんです。包丁を扱うときは、気が抜けないなと思いました。



――洋食店の先輩コック役はエレキコミックのやついいちろうさん、料理長役は佐々木蔵ノ介さんですね。

おふたりとは、料理レッスンを一緒に受ける時間もあったので、撮影前からよくしていただいてます。撮影初日、僕はめちゃくちゃ緊張していたんですけど、やついさんが緊張をほぐそうと面白いことを言って笑わせてくれたり、本当に助けていただきました。

――やさしい方なんですね。佐々木さんはいかがでしたか?

佐々木さんは……、ドラマの役柄のイメージもあって、ものすごく怖い人なんじゃないかなって思ってたんですよ。でも実際は、とてもやさしい素敵な方でした。関西弁で気さくに話しかけてくださるし、もう料理長にしか見えない(笑)。尊敬というか憧れの存在です。これからもっといろいろお話させてもらいたいなと思っています。

――朝ドラの撮影現場はどんな雰囲気ですか?

すごく丁寧な現場だなと思いました。撮影の何か月も前から、料理レッスンをやるのもそうだし、撮影前にリハーサルを全部通しでやったり、カメラがつねに4〜5台まわってるし。

――4〜5台!

『仮面ライダーゴースト』のときは、カメラは多くても2台だったので。それでも、他の人とかぶらないように気をつけていたんですけど、4〜5台もあるといろんなところから狙われるから、どうしていいかわからなくてあたふたしちゃってます(笑)。

――4月からの放送、楽しみにしてます。

ありがとうございます。僕自身、朝ドラ=未知の世界なので、これからどうなるのかすごくワクワクしてます。放送を見るのが楽しみです。