今夜金曜ロードSHOW「ハリー・ポッターと賢者の石」の「クィディッチ」がプロリーグ化されると聞いて

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つい先日クィディッチがイギリスでプロリーグ化されるという噂を聞いた(映画.com)。寝耳にエクスペクトパトローナムなニュースである。あのクィディッチが実際に競技として行われるいう驚きを一段とばして、さらにプロリーグ化までされるというニュースは、ファンからしたら、ヴォルデモートと正月が一緒に来たような騒ぎであろう。
すみません、ハリー・ポッターについての話です。


魔法界のスポーツ「クィディッチ」


今夜、シリーズ第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」が日本テレビ系列「金曜ロードSHOW!」で放送される。原作は言わずと知れたJ・K・ローリングのベストセラー。児童文学に分類されるがその枠を飛び越えて、全世界で累計4億5000万部を超える、史上最も売れ続けているウィザーディングなシリーズである。1997年に一作目が執筆されたのち、2000年に映画化、2011年の「ハリーポッターと死の秘宝パート2」まで8作が映像化されている。また、最近はスピンオフにあたる映画「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」が公開されたり、最新作「ハリーポッターと呪いの子」が出版されたりと、界隈がダイアゴン横丁のように賑わってきている。

クィディッチとは、「ハリーポッター」に登場する→架空の、魔法界のスポーツで、箒にまたがった魔法使いたちが、フィールドの上空をところ狭しと飛び回りながら、ボールを激しく奪い合ったり、ぶつけあったり、華麗にゴールを決めたりする、空飛ぶラグビーのような、天空のハンドボールのようなスポーツとして描かれている。

「入り乱れて空を飛ぶスポーツなんて、どうやって描くんだよ?」 

原作派たちはそう危惧していたものだ。
しかし、古より「映像化不可能」と謳われた「マイノリティリポート」「イニシエーションラブ」、近年では「珍遊記」までめきめきと実写化されている。「なんでも描けるよ」でお馴染みのCGの発展により、16年も前に、クィディッチも難なく映像化されているのである。

クィディッチに参加する資格としては、ドーピングをしていない、違法カジノに出入りしていない、川淵チェアマンに目をかけられている、揚げ物が好き、などのスポーツマンとしての必須条件以上に「空を飛べること」が一番の資格であるとされている。
いや、されているわけではないのだが、そうあって欲しい。 じゃないと悲しいから。

日本で、このスポーツに参加できそうなのはパッと考うる限り、サリーちゃんと宅急便のキキしか思い浮かばない。近いところでは「魔法つかいプリキュア」もいけるか。五郎丸も松尾雄治も無理だろう、飛べないし。だから「女子リーグの方が盛り上がるのでは?」とか「そもそもキキは日本人か?」とか「シータも石を忍ばせとけばいけるか」とか「メリー・ポピンズの傘は違反なのか?」などと、降る雪を見ながらしばし考えてしまう始末である。

そんな大空をフィールドとするフィクションならではの球技が、実写化を超え、実技化されているというのである。
気になって(プロリーグではないが)海外の動画をいくつかを見てみた。そこには、実技化に際しての疑問のいくつかを払拭する答えがあった。(参考動画)

ズバリ、「飛ばない」のである。

潔いというか、開き直ったというか、その手があったかというか。もう、走るのだ。

魔法界の場合、箒は空を飛ぶための乗り物として機能するわけだが、マグル(人間)仕様にしたため、基本的にプレーヤーは箒に跨って、…というより見た目は、単に小股に挟んで、結局は全員が親からもらった二足歩行で、走るのだ。
箒は、空にいざなっても、スピードを与えてくれるわけでもない。たぶん邪魔だ。だが、跨る。で、ドタドタ走る。
もう、カセというか、業だ。
前世でちゃんと掃除をしないで死んでいった不潔な人たちのゆく地獄だ。

「箒、いらないじゃん」という正論が頭をもたげるが、ルールとはそういうものであると自分を納得させるしかない。
サッカーに対して「手を使えばいいじゃん?」と言ってはいけないし、カバディに対して「掛け声うるさいな」と言ったら傷つくのと同じである。

問題は「ス二ッチ」


箒問題はなんとか納得したとして。
気になるのは、「ス二ッチ」問題である。

説明しよう。
クデッィチはフィールドに、常時3種類のボールが存在する。
「チェイサー」と呼ばれるプレーヤーは「クアッフル」という大きめのボールを奪い合い、ゴールにボールを入れあう。第1のボールがこの「クアッフル」だ。
そして「ブラッジャー」という第2のボール。暴れ玉と呼ばれるこいつが2つ、勝手に飛び回って選手を襲う。選手は、それを棍棒で打ち返したりして味方の「チェイサー」を守ったり、敵にぶつけたりして、試合を有利にすすめる(いろいろ突っ込みたくなるのは我慢だ)。棍棒片手に打ち返すのを専門に行う選手は「ビーター」と呼ばれる。
当然、人間界のクィディッチではボールが勝手に意思を持って襲ってきたりはしないので、かわりに「ビーター」が「ブラッジャー」をドッチボールのように敵に投げ、ぶつけて、邪魔をする。「アストロ球団」の殺人野球を思い出したあなた、仲間です。

そして問題は、クィディッチ第3のボールとして存在する小さな黄金のボール「スニッチ」である。
これも「ブラッジャー」同様、意思をもって勝手に動き回るボールだが、「ブラッジャー」が選手を襲ってくるのに対し、「スニッチ」は逃げ回るのだ。プレイヤーに見つからないように、やたらすばしっこく飛び回るのである。しかもピンポン玉くらい、まさに金玉の小ささなので、簡単には見つからない。こいつを専門に追っかけるのが「シーカー」。チームにただ1人だけ配置されたプレイヤーで、他の「チェイサー」(チームに3人)や「ビーター」(チームに2人)らが第1のボール「クアッフル」を奪い合って盛り上がっているのには目もくれず、完全なる別行動で「スニッチ」だけを探し求める。世俗を捨て、アラスカの大地で一攫千金を狙う砂金採りのようなポジションである。もしもシリーズ!「もしも球技の選手の中に砂金採りが紛れ込んでいたら」だ。

勝負はつく、だが、はじめて映画「ハリーポッター」で「クィディッチ」シーンを見た人は、大抵もやもやする。
「クアッフル」はゴールするごとに10点加算されるのに対し、「シーカー」が「スニッチ」を捕まえると、その時点で一気に150点が加算され、試合もそこで強制終了となるのである。
それまで20対20とかで、拮抗していたいい試合が、突然170対20で有無を言わさず勝敗が下されるのである。

わいわい系のクイズ番組での「最後の問題は5000点です」に対する「今まで何だったんだよー!」を想起させる、大胆なルールである。

世界20カ国以上で広まりつつある


人間版「クィディッチ」においては、この「スニッチ」をどうするのか。

妨害する暴れ玉の「ブラッジャー」と違い、直接得点に影響し、ダイレクトに勝敗を左右する部分なので、これを省いてしまっては、クデッィチとは言えまい。ただの「ハロウィンではしゃぐ運動部員たち」である。

動画サイトで映像を確認してみた。
箒にまたがった選手たちが、ボールを奪い、投げ合い、ぶつけ合ってたりしている中、全身を黄色のコスチュームに包まれた男が一人、はしゃぎながら必死に逃げ回っている。胸には「SNITCH」の文字。
そう、人間版の「クィディッチ」では、人間そのものが「スニッチ」と化し、捕まるまいと、逃げ惑うのだ。
よく見ると尻のあたりに、小袋に入れた小玉をくくりつけて走っている。
欽ちゃんに「ねえー、がんばったよー」と同情に近い褒め方をしてもらえそうな立派な仮装である。

この「俺たちのクィディッチ」、とにかく健気だ。
アーケード版の大作を何とか8ビットに落とし込んでいたファミコン時代の移植を思わせる健気さである。

だが、この俺たちのまっとうなクィディッチ(8ビット版)、すでに北米などでは50近くのチームが存在し、W杯も行われているという。世界20カ国以上ですでに広まりつつあるとのこと。



日本にもくるだろうか。
2017年、表参道あたりを、竹ぼうきを小脇に抱えたレレレのクィディッチギャルねーさんが闊歩する姿を目撃できるのか。
今晩「元祖」アーケード版クィディッチを「ハリーポッターと賢者の石」で観て可能性を考慮していただきたい。

初代ダンブルドアのリチャード・ハリスと元祖モンスターペアレンツ・ダーズリーおじさんことリチャード・グリフィスの「Wリチャード」や、ダンブルドアの中の人・永井一郎(初代磯野波平!)も亡くなってしまったばかりか、ある意味もう一人の主役である、愛に生きたスネイプ先生ことアランリックマン(「ダイハード」のナカトミビルの主犯ハンスグルーバー!)も、今年1月に亡くなってしまった。徐々に古典になりつつあるこの名作シリーズの序章をを今一度。
(アライユキコ)