「コック警部の晩餐会」どうやって毒入り餃子を夫に食べさせたのか、誰か教えて!

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5話目でついに殺害トリック初登場!


殺害トリック、アリバイ、凶器、動機、犯人が現場にいた証拠、ミステリードラマではこれらを推理して犯人を見つけ出すわけだが、この「コック警部の晩餐会」はなにせ30分ドラマ。CMなどを抜くとおよそ23分。事件を起こして、これら全てについて捜査している時間はない。さらにグルメを関係させないといけないのだから、脚本家さんは毎回厳しい時間との戦いを行っているのだろう。

よってこのドラマは、謎を一つに絞って構成されている。1話と2話は、犯人が現場にいた証拠を。3話は凶器を。4話はアリバイ崩しをメインに古久警部(柄本佑)は捜査し、犯人を炙り出してきた。そして今回、ついにミステリーの花形と言える殺害トリックに焦点が当てられた。


餃子の教科書

あらすじ(ネタバレ有り)


悦子(雛形あきこ)は小さい息子の悠斗(庵原匠悟)の誕生日に年一回の餃子パーティを開いた。しかし、餃子を食べていた夫の治(片山享)が突然死亡してしまう。当初は食中毒と見られていたが、餃子に入っているはずのニラが猛毒のスイセンであった事が鑑識の調べで明らかになる。悦子は節約の為にニラを近所の川原で採取していたが、誤って良く似たスイセンを餡に使ってしまったとの事だった。同じ餃子を食べていた悦子は入院するも命に別状は無く、ニラ嫌いの悠斗は無事だった。

いきなりのネタバレになるが、悦子がスイセンを使用したのは計画通りだった。まぁミステリードラマなのだからそれは当たり前と言えば当たり前だ。どうやって夫にだけ致死量のスイセンを食べさせることが出来たのか、それが今回のキーになる殺害トリックだ。

そのトリックというのは、餃子の皮のヒダが4つならスイセン無し。5つなら少量。6つなら致死量と分けていたというもの。

治にはニラが入っているとヒダが多いものを食べるように伝え、ニラが嫌いな悠斗には4つのものを食べるように薦めた。そして、自分は良い感じに食中毒で倒れるように5つのものを食べる。ここら辺の描写はないが、こちら側で脳内補完をすると、おそらくそういうことだろう。

古久警部は、あずみ(小島瑠璃子)の為に田部歩(西銘駿)に具を握り分けたおにぎりを見て、「食べると消える目印・・・」と、このトリックを見破る。そして悦子が作った餃子を完璧に再現し、それを悦子が冷蔵庫にストックしていた餃子と偽り晩餐会で提供した。

狙いは、6つのヒダがある餃子を悠斗が食べようとするのを、毒入りと勘違いした悦子に止めさせることだった。案の定、悦子は「ダメ!」と餃子を突き飛ばしてしまう。これで事件は解決した。

古久警部がどうやってトリックを見破ったのかが謎だ


証拠をわざわざ残す犯人はいないので、冷蔵庫のストック餃子にスイセンは入っていないはず。つまり、悦子が餃子を突き飛ばしたのは、もしもの事を考えての事なのだろう。描写は足りていないが、それはまぁ間違いないはずだ。

では、なぜ古久警部はヒダの数で毒入りを作り分けたとわかったのだろうか?餃子に目印をつけるというトリックを思いついても、ヒダで作り分けたという証拠はどこにもないのだ。仮に現場に残された餃子を見て、ヒダの数の違いに気付いたとしても、単なる偶然とはなぜ思わなかったのだろうか?

ママ「悠斗はニラ嫌いだから4つのヒダが目印ね」息子「じゃあママのニラ入りは5つだね」パパ「パパのニラ多めは6つにしてくれ」

という存在したかどうかもわからない家族のやり取りがあったのを知っていなければ、今回の犯人暴きは出来なかったはずだ。

ママ「悠斗はニラ嫌いだからホットプレートの右側のを食べて?」息子「じゃあママのニラ入りは真ん中だね」パパ「パパのニラ多めは左側にしてくれ」

というやり取りだった可能性をなぜ捨て切れたのだろうか?なにせ、証拠が食べられてしまったのに。他にも作り分ける方法などいくらでもあるだろう。古久警部がヒダで作り分けたと気付くきっかけの描写はさすがに欲しかった。

悠斗、さすがに賢すぎる


疑問はまだある。それは悠斗のニラ嫌いが嘘だったということだ。ママの為を思ってのことだと古久警部は説明するが、それはどういうことなのか?

描写がないのでまたまた脳内補完するしかないが、ニラが嫌いと言えば、スイセン抜きの餃子を食べていた理由になるからだろう。つまり、「悦子は、息子にだけニラ(スイセン)抜きの餃子をなぜ食べさせていたのか?」という疑問を警察に抱かせない為なのだ。悠斗、賢すぎる。

だが、悦子も悠斗がニラ嫌いと思い込んでいるのだから、殺人が起きる前からついていた嘘になる。つまりそれはどういうことなのだろうか?

悠斗「ママ、そろそろDVが激しくなってきたパパのこと殺しそうだな〜。ってことは、近くに生えてるスイセンをニラと間違えたフリして、年に一回の餃子パーティで食べさせるってトリックを、ママは思いつくだろうな〜。でも、僕にも食べさせる訳にいかないよね。どうやってママは僕にスイセン入り餃子を食べさせないようにするつもりだろう?そうだ!僕がニラ嫌いって言っておけば、スイセン入りを食べさせない口実になるぞ!去年の誕生日の餃子パーティではめちゃめちゃニラ食べちゃったけど、子供の好き嫌いなんて変わりやすいから、おかしな事じゃないよね!よし!ママ〜!僕、ニラ嫌いになったから餃子に入れないでね!」

という思考に至ったと推測する他ない。これではさすがにこの子供賢すぎる。いや、怖すぎる。

これはあくまで、ドラマの説明不足を筆者が何とか補完してたどり着いた結果だ。もしかしたら真実はもう少し簡単なことなのかもしれない。しかし、描写や説明ゼリフが足りないのだから仕方ない。

冒頭でも述べたが、たったの23分でミステリーを作るのは難しい。どうしても説明不足になって、こうして途方も無い脳内補完を視聴者はさせられることになる。

もちろん過去の数話には、良く出来た回もあったのでムリとは言い切れないのかもしれないが、やはり、脚本家さんの苦労は計り知れない。

今夜放送の第6話は、強盗が入った店にたまたま古久警部達が客として来店。犯人はそのままシェフとしてなりすまし、何とか料理を提供するというドタバタ劇。通常のミステリーとしては少し変わった形の回で、なかなか見応えがありそうだ。これは完全な筆者の個人的な感覚だが、このドラマ、予告が面白そうな回ほど、ちゃんと面白い。

(沢野奈津夫)