今夜8話「校閲ガール」やっぱり石原さとみはシン・ゴジラだ
話題では“恋ダンス”の『逃げ恥』に一歩リードされているが、視聴率では拮抗している水10ドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』。先週放送された第7話の視聴率は12.5%となかなかのもの。
それにしても、両者の対立を煽るのはいいけど、石原さとみが「校閲ガールが逃げ恥より上の視聴率になるようであれば、山下(智久)との結婚に本腰を入れて看護師に転職することもあり得ます」って、そんなわけあるか! 「まいじつ」ってサイト、めちゃくちゃ書くなぁ。
第7話のテーマは「リスクをとること」。河野悦子(石原さとみ)が想いを寄せる作家兼モデルの折原幸人(菅田将暉)が、実はエロミスの大家・本郷大作(鹿賀丈史)の息子だったというストーリーを軸に展開された。
校閲者にとってリスクをとることとは、作家に対して間違いを敢然と指摘することだ。悦子の同僚の米岡(和田正人)は、大御所トレインミステリー作家(明らかに西村京太郎がモデル)が時刻表を完全に間違えていることに対して、どう指摘するか煩悶していた。作家が間違いを認めれば、大幅な書き直しを強いることになる。出版スケジュールも大幅に狂うことになるだろう。どうすれば角が立たずに間違いを指摘できるか……と米岡は悩んでいるのだ。
一方、リスクを屁とも思っていないのが悦子だった。相手が大御所作家だろうが何だろうが、間違いを見つければどんなことでも必ず指摘する。小説のタイトルに対して「内容と合っていない」とダメ出しまでしてしまう。これは、思ったことは全部口に出してしまうという悦子の困った性格の反映でもある。これじゃたしかにモテないよね……。とはいえ、校閲部の中では、猪突猛進、校閲をとことんやり抜く悦子の姿勢が認められつつあるようだ。
悦子はやっぱり『シン・ゴジラ』なのだ。それは『校閲ガール』のオープニング映像を見れば一目瞭然。可愛らしく作ってあるが、内容は巨大な石原さとみが東京の街を進撃するというもの。戦闘機に乗った貝塚(青木崇高)を一蹴、戦車に乗った藤岩(江口のりこ)と米岡も吹き飛ばして、最後はなぜか懐柔してしまう。何者も恐れない悦子のキャラクターをよく表している。
とはいえ、そんなシン・ゴジラ=悦子にも泣きどころはある。それが大好きな幸人のことだ。生き別れた息子のことを書いた本郷のエッセイを校閲した悦子は、本郷の息子が幸人のことだと気づいてしまう。気づいても本人が触れてほしくなさそうなら黙っていればいいのだが、そこは校閲者のサガ、エッセイの細かな事実関係を本人に確認したい……!
悩みまくった末、意を決して幸人に本郷とのことを尋ねる悦子。すると、案外けろっと幸人は本郷とのことを告白する。実はこの前に、まだ親子だと気づいていない悦子が幸人に本郷のことを語って、幸人が怒って帰ってしまうというシーンがあったのだが……。幸人がどうして20年前に自分たちを捨てた父親のことをあっさり受け入れたのかは謎。
「リスクをとる」という話はあちこちに埋め込まれていて、米岡は大御所ミステリ作家にミスをはっきりと指摘するし、森尾(本田翼)は幸人のモデルデビューにあたって保守的なスタイリングより批判覚悟で攻めたスタイリングを選択する。結局、米岡の指摘は作家が書き直すことでトラブルに至ることはなかった。「苦しみを恐れる者は、その恐怖だけですでに苦しんでいる」というのはフランスの哲学者・モンテーニュの言葉だが、世の中はこんな取り越し苦労が多いのかもしれない。
7話では、『校閲ガール』の大きなテーマ、「自分のいるべき場所はここじゃない」と思いつつも「どんな小さな仕事でも一生懸命頑張ることの大事さ」についてもストレートに語られていた。
本郷は悦子に「なんといっても校閲は君にとって天職だからねぇ」と声をかける。ファッション誌の編集者を夢見る悦子は笑いながら否定するが、悦子の校閲の才能は多くの人が認めている(あんな短いエッセイの校閲に何日かけてるんだよ! というツッコミも入りそうだが)。
幸人と再会した本郷は、作家として伸び悩む幸人に、若い頃の自分の体験について語り始める。かつて純文学を書いていたが、ある担当編集者に薦められて書いたミステリが大ヒット。それ以降、本郷の本は「エロミス」と呼ばれるようになった。
「それ、キツくなかったですか? もともと自分のいた場所と違うところに行くの、キツくなかったですか?」
「いや、幸せだったよ。そこは自分が本当に求めていた場所ではなかったんだけど、そこで求められる幸せを感じたんだ。求められて書くことに喜びを感じたんだ。そしてそこを、私の居場所にした」
作家とは読者あってのもの。誰も読まないものを書くことほど虚しいものはない。これは作家やライターに限らないと思う。誰かに喜ばれてこそ、人は自分の仕事に誇りを持つことができるのだ。悦子がはたして本郷の言葉をどう受け止めるのか、今後の展開に注目だ。
今夜放送の第8話は、これまであまり目立たなかった校閲部長・茸原(岸谷五朗)の過去が明らかになる……? ところで茸原の名前、「渚音」って何て読むの?
(大山くまお)
参考→「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」の原作を絶対読むべき理由
それにしても、両者の対立を煽るのはいいけど、石原さとみが「校閲ガールが逃げ恥より上の視聴率になるようであれば、山下(智久)との結婚に本腰を入れて看護師に転職することもあり得ます」って、そんなわけあるか! 「まいじつ」ってサイト、めちゃくちゃ書くなぁ。
どんな仕事にも「リスク」はある
第7話のテーマは「リスクをとること」。河野悦子(石原さとみ)が想いを寄せる作家兼モデルの折原幸人(菅田将暉)が、実はエロミスの大家・本郷大作(鹿賀丈史)の息子だったというストーリーを軸に展開された。
校閲者にとってリスクをとることとは、作家に対して間違いを敢然と指摘することだ。悦子の同僚の米岡(和田正人)は、大御所トレインミステリー作家(明らかに西村京太郎がモデル)が時刻表を完全に間違えていることに対して、どう指摘するか煩悶していた。作家が間違いを認めれば、大幅な書き直しを強いることになる。出版スケジュールも大幅に狂うことになるだろう。どうすれば角が立たずに間違いを指摘できるか……と米岡は悩んでいるのだ。
一方、リスクを屁とも思っていないのが悦子だった。相手が大御所作家だろうが何だろうが、間違いを見つければどんなことでも必ず指摘する。小説のタイトルに対して「内容と合っていない」とダメ出しまでしてしまう。これは、思ったことは全部口に出してしまうという悦子の困った性格の反映でもある。これじゃたしかにモテないよね……。とはいえ、校閲部の中では、猪突猛進、校閲をとことんやり抜く悦子の姿勢が認められつつあるようだ。
悦子はやっぱり『シン・ゴジラ』なのだ。それは『校閲ガール』のオープニング映像を見れば一目瞭然。可愛らしく作ってあるが、内容は巨大な石原さとみが東京の街を進撃するというもの。戦闘機に乗った貝塚(青木崇高)を一蹴、戦車に乗った藤岩(江口のりこ)と米岡も吹き飛ばして、最後はなぜか懐柔してしまう。何者も恐れない悦子のキャラクターをよく表している。
とはいえ、そんなシン・ゴジラ=悦子にも泣きどころはある。それが大好きな幸人のことだ。生き別れた息子のことを書いた本郷のエッセイを校閲した悦子は、本郷の息子が幸人のことだと気づいてしまう。気づいても本人が触れてほしくなさそうなら黙っていればいいのだが、そこは校閲者のサガ、エッセイの細かな事実関係を本人に確認したい……!
悩みまくった末、意を決して幸人に本郷とのことを尋ねる悦子。すると、案外けろっと幸人は本郷とのことを告白する。実はこの前に、まだ親子だと気づいていない悦子が幸人に本郷のことを語って、幸人が怒って帰ってしまうというシーンがあったのだが……。幸人がどうして20年前に自分たちを捨てた父親のことをあっさり受け入れたのかは謎。
「リスクをとる」という話はあちこちに埋め込まれていて、米岡は大御所ミステリ作家にミスをはっきりと指摘するし、森尾(本田翼)は幸人のモデルデビューにあたって保守的なスタイリングより批判覚悟で攻めたスタイリングを選択する。結局、米岡の指摘は作家が書き直すことでトラブルに至ることはなかった。「苦しみを恐れる者は、その恐怖だけですでに苦しんでいる」というのはフランスの哲学者・モンテーニュの言葉だが、世の中はこんな取り越し苦労が多いのかもしれない。
自分が求められる場所こそ“天職”?
7話では、『校閲ガール』の大きなテーマ、「自分のいるべき場所はここじゃない」と思いつつも「どんな小さな仕事でも一生懸命頑張ることの大事さ」についてもストレートに語られていた。
本郷は悦子に「なんといっても校閲は君にとって天職だからねぇ」と声をかける。ファッション誌の編集者を夢見る悦子は笑いながら否定するが、悦子の校閲の才能は多くの人が認めている(あんな短いエッセイの校閲に何日かけてるんだよ! というツッコミも入りそうだが)。
幸人と再会した本郷は、作家として伸び悩む幸人に、若い頃の自分の体験について語り始める。かつて純文学を書いていたが、ある担当編集者に薦められて書いたミステリが大ヒット。それ以降、本郷の本は「エロミス」と呼ばれるようになった。
「それ、キツくなかったですか? もともと自分のいた場所と違うところに行くの、キツくなかったですか?」
「いや、幸せだったよ。そこは自分が本当に求めていた場所ではなかったんだけど、そこで求められる幸せを感じたんだ。求められて書くことに喜びを感じたんだ。そしてそこを、私の居場所にした」
作家とは読者あってのもの。誰も読まないものを書くことほど虚しいものはない。これは作家やライターに限らないと思う。誰かに喜ばれてこそ、人は自分の仕事に誇りを持つことができるのだ。悦子がはたして本郷の言葉をどう受け止めるのか、今後の展開に注目だ。
今夜放送の第8話は、これまであまり目立たなかった校閲部長・茸原(岸谷五朗)の過去が明らかになる……? ところで茸原の名前、「渚音」って何て読むの?
(大山くまお)
参考→「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」の原作を絶対読むべき理由