「HUNTER×HUNTER」休載から5か月。「パワプロ」といっしょに振り返る20巻
冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載されてから5ヵ月が経ってしまった。今回は単行本20巻を振り返る。
キメラ=アントによるNGLの侵攻が徐々に激しくなってきた第20巻。ハンター協会から派遣された討伐隊の新キャラが次々と登場する。パーム、シュート、ナックル。どれも野球の変化球絡みの名前である。また、チャンス×、弱気、尻上がり、ジャイロなど、パワプロの特殊能力を思い出させる言葉もたくさん出てくる。
第20巻の話がジャンプに掲載されていたのは2003年暮れから2004年の春ごろまで。2003年に発売されたのは、橘みずきちゃんが初登場したパワプロ10。実際のプロ野球の世界では、阪神タイガースが18年ぶりの優勝を果たした年でもある。
「なめんなコラ!!」
「なめてるのはどっちだ!? 真剣勝負だろ? 殺す気で来い!! ナックル!!」
自分のせいで捕まってしまったカイトを取り戻したいと思うゴンと、キメラと真剣にぶつかりたいと考えるビースト・ハンターのナックル。キメラ=アントの討伐隊の椅子をかけて戦い始める。2人の間で、キルアがバトルの解説役に徹していた。
溜めの長いジャジャン拳の隙をついて攻撃しようとするナックルの動きを見越して、フェイクを入れて攻勢に転じたゴン。キルアは、この戦術を、バッターボックスの9分割のストライクゾーンを図示しながら、野球に例えて評価した。
ナックルにとってゴンのジャジャン拳はいわば「狙い球」の一つ……
見逃し厳禁!! 打ち返さなければならないど真ん中の絶好球!!
それが“力み”となる
「来た!」と思う瞬間 余計な力が入る
狙い球だったのに打ち損じる プロ野球の一流選手でさえよくあること
打てる! 打たねば!! その想いが筋肉に必要以上の力を入れさせる
ゾルティック家にいる間もちょくちょく野球中継を見ていたのかもしれない。解説者の話をよく聞いていなければ出てこない例えである。
命を賭けた戦いは短期決戦が多い。一発、相手を騙して出し抜くことができれば、勝率が100%に大きく近づく。騙し合いと読み合いが交錯するという点では、確かに野球に通じるところがある。
野球の短期決戦といえば、日本シリーズ。その中でも1995年に行われたヤクルトVSオリックス戦は、ヤクルトの野村監督と古田捕手による、壮大な罠が仕掛けられていた。
この年、首位打者、最多安打、打点王、盗塁王、最高出塁率という打者五冠を達成したオリックス・イチロー。彼を抑え込まないことには、日本一は厳しい。そう考えた野村監督は、マスコミに「イチロー対策は内角攻め」であると発表してしまう。
第一戦、イチローの一打席目。内角の球を外野フライに打ち取った古田はイチローの打撃フォームの微妙な変化に気づく。内角を意識しているんじゃないか。二打席目は逆をついて外角にボールを散らし、イチローを翻弄。最後は外角の釣り球で三振に仕留めていた。
結局、4勝1敗でヤクルトに軍配が上がり、イチローは打率2割6分3厘でシリーズを終えた。
彼が目覚める前に終わってよかった、自分が打たなければ勝てないという力みもあったんじゃないかと当時のことを『スポーツ酒場 語り亭』で古田は分析している。
かつては弱小球団だったヤクルト、阪神、楽天の下地を築いた野村監督の、頭を使って強者を倒すというスタイルが見て取れる日本シリーズだったと思う。
キメラ=アント編前までは、常に各上が相手だったゴン。
天空闘技場では石つぶてを目晦ましに使ってヒソカからクリーンヒットを奪い、グリードアイランドではレイザーのスパイクを独創的なアイデアとチームプレイで捕球。
エレガントに戦うことなどせず、頭を使って相手の裏をかき、強者相手に泥臭く勝つ。ゴンに野村イズムを感じてしまう。
しかし、キメラ=アント編終盤では、戦闘力の爆発的インフレーションとも言っていいほどのとんでもない豪速球的能力を身に着けることになる……。
(山川悠)
参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる
広げた風呂敷に野球ネタを絡める冨樫
キメラ=アントによるNGLの侵攻が徐々に激しくなってきた第20巻。ハンター協会から派遣された討伐隊の新キャラが次々と登場する。パーム、シュート、ナックル。どれも野球の変化球絡みの名前である。また、チャンス×、弱気、尻上がり、ジャイロなど、パワプロの特殊能力を思い出させる言葉もたくさん出てくる。
第20巻の話がジャンプに掲載されていたのは2003年暮れから2004年の春ごろまで。2003年に発売されたのは、橘みずきちゃんが初登場したパワプロ10。実際のプロ野球の世界では、阪神タイガースが18年ぶりの優勝を果たした年でもある。
いきなり野球で例え話を始めたキルア
「なめんなコラ!!」
「なめてるのはどっちだ!? 真剣勝負だろ? 殺す気で来い!! ナックル!!」
自分のせいで捕まってしまったカイトを取り戻したいと思うゴンと、キメラと真剣にぶつかりたいと考えるビースト・ハンターのナックル。キメラ=アントの討伐隊の椅子をかけて戦い始める。2人の間で、キルアがバトルの解説役に徹していた。
溜めの長いジャジャン拳の隙をついて攻撃しようとするナックルの動きを見越して、フェイクを入れて攻勢に転じたゴン。キルアは、この戦術を、バッターボックスの9分割のストライクゾーンを図示しながら、野球に例えて評価した。
ナックルにとってゴンのジャジャン拳はいわば「狙い球」の一つ……
見逃し厳禁!! 打ち返さなければならないど真ん中の絶好球!!
それが“力み”となる
「来た!」と思う瞬間 余計な力が入る
狙い球だったのに打ち損じる プロ野球の一流選手でさえよくあること
打てる! 打たねば!! その想いが筋肉に必要以上の力を入れさせる
ゾルティック家にいる間もちょくちょく野球中継を見ていたのかもしれない。解説者の話をよく聞いていなければ出てこない例えである。
命を賭けた戦いは短期決戦が多い。一発、相手を騙して出し抜くことができれば、勝率が100%に大きく近づく。騙し合いと読み合いが交錯するという点では、確かに野球に通じるところがある。
イチローから力みを生み出した野村監督とそれを見抜いた古田捕手
野球の短期決戦といえば、日本シリーズ。その中でも1995年に行われたヤクルトVSオリックス戦は、ヤクルトの野村監督と古田捕手による、壮大な罠が仕掛けられていた。
この年、首位打者、最多安打、打点王、盗塁王、最高出塁率という打者五冠を達成したオリックス・イチロー。彼を抑え込まないことには、日本一は厳しい。そう考えた野村監督は、マスコミに「イチロー対策は内角攻め」であると発表してしまう。
第一戦、イチローの一打席目。内角の球を外野フライに打ち取った古田はイチローの打撃フォームの微妙な変化に気づく。内角を意識しているんじゃないか。二打席目は逆をついて外角にボールを散らし、イチローを翻弄。最後は外角の釣り球で三振に仕留めていた。
結局、4勝1敗でヤクルトに軍配が上がり、イチローは打率2割6分3厘でシリーズを終えた。
彼が目覚める前に終わってよかった、自分が打たなければ勝てないという力みもあったんじゃないかと当時のことを『スポーツ酒場 語り亭』で古田は分析している。
かつては弱小球団だったヤクルト、阪神、楽天の下地を築いた野村監督の、頭を使って強者を倒すというスタイルが見て取れる日本シリーズだったと思う。
弱者の兵法で戦ってきたゴン
キメラ=アント編前までは、常に各上が相手だったゴン。
天空闘技場では石つぶてを目晦ましに使ってヒソカからクリーンヒットを奪い、グリードアイランドではレイザーのスパイクを独創的なアイデアとチームプレイで捕球。
エレガントに戦うことなどせず、頭を使って相手の裏をかき、強者相手に泥臭く勝つ。ゴンに野村イズムを感じてしまう。
しかし、キメラ=アント編終盤では、戦闘力の爆発的インフレーションとも言っていいほどのとんでもない豪速球的能力を身に着けることになる……。
(山川悠)
参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる