「べっぴんさん」28話。女たちの本音が出てきた出てきた

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第5週「お父さまの背中」第28回 11月3日(木)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出: 新田真三


28回はこんな話


良子(百田夏菜子)が店を辞めると言い出し途方にくれるすみれ(芳根京子)だったが、客の麗子(いちえ)から、良子がひとりで店番してきたときにトラブルがあったことを知る。
一方、ゆり(蓮佛美沙子)は、不当な場所代を請求する闇市の元締め(団時朗)に意義申し立てに向かった。

女たちの本音


すみれたちは、外国人のお客様のテーブルクロスをパッチワークで作ろうとする。奇しくも11月2日(水)の「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ)でもパッチワークのエピソードが出てきた。

良子が店を辞めると言い出したわけは、明美(谷村美月)が原因なだけではなかった。接客がどうにも苦手なのだ。でも彼女には型紙をつくる才能がある。
ベビーショップあさやにはなくてはならない戦力・良子の不在をすみれが嘆くと、明美は「まあでもいまは材料めどつけてデザイン考えるのが先や」と事務的。自分の存在を良子がよく思ってないことによるこの場における自分の立ち位置の微妙さみたいなことをまるで考えてないようす。店のオープンのとき、一歩下がっていた遠慮はどこへいった! きっと、感情で動くのではなく何が一番大事か考えられる合理的な人なんだろう。

それまで黙っていた君枝(土村芳)までが意外なことを口にする。旦那さんの帰ってきた良子に嫉妬してしまうという本音だった。

人が集まるとそれぞれ言い分が出てきて、なかなかまとまらないもの。
「べっぴんさん」の登場人物はそれぞれ口に出さずお腹の中に隠していることがある。
すみれは、訊ねてきた勝二(田中要次)に良子が辞めたことを黙っていようとしたが、さすが15歳も上だけはある大人、事情を聞き出したのだろう。家に戻って「嘘は大切な人なくすで」と良子に助言する。
君枝を励ます麻田(市村正親)といい勝二といい五十八(生瀬勝久)といい、大人の男のひとが若い女たちのいい助けになっている。うーん、やっぱり田中要次が百田夏菜子のお父さんに見えてしまう。だって、田中要次53歳、生瀬勝久56歳ですよ!

五十八はゆりに「文句ばっかり言うてなんもせいへんのは卑怯や」と注意。亡き妻はな(菅野美穂)が「ここいうところで自分を貫けない」と心配していたので、彼女の代わりにゆりを導こうとする。
潔(高良健吾)が「ゆりを表に出すべきじゃない」とかばうのは、大事な坂東家のお嬢さんを守らなくてはと思ってのことだろうからなかなか難しい。

現在、いろいろ停滞気味で湿った気分だが、救いはミスチルが主題歌で歌っている、「たとえば100万回のうち、たった一度ある奇跡」。100万回空振った結果に獲得するひとつの奇跡に向かって、みんな毎日地道に生きるしかない。

闇市に出回る粗悪品を見て「メイド・イン・ジャパンが粗悪品の代名詞だなんて」と嘆く五十八。日本全体が落ち込み気味の中で、すみれたちが奇跡を起こしメイド・イン・ジャパンを良品の代名詞にする奇跡が起こる日を心待ちにして見続けたい。

ミニ知識


パンチのある存在感の麗子役・いちえは93年大阪生まれの俳優。児童劇団出身で芸歴は長い。舞台の仕事が多く、本日11月4日から大阪松竹座、藤山直美の主演舞台「笑う門には福来たる〜女興行師 吉本せい」に出演する。

勝二がすみれたちにくれた質のいいアメリカ製の石鹸。当時の化粧石けんは昭和22年で3円95銭、24年で9円50銭。
(木俣冬)