働く誰もがリスクあり? 会社や職場の適応障害

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執筆:Mocosuku編集部


うつ病は俗に、「心の風邪」といわれますが、本当のうつ病は身体の疾患にたとえると「肺炎」か「結核」くらい重症なもので、表現としては不適切という指摘があります。


一方で「適応障害こそ心の風邪と呼ぶにふさわしい」という精神科医もいます。

ここでは働く人の間で近年増えている、その適応障害について説明していこうと思います。

適応障害とはどんな状態を指すのか


適応障害は、明確なストレスの原因から3か月以内に症状が現れ、日常生活に支障をきたしている場合に診断されます。

つまりストレスのレベルが許容範囲を超え、限界を突破してしまった際に起こる状態です。

環境にうまくなじめないことから心のトラブルが生じ、抑うつ状態や不安、意欲や自信の喪失、体調面での不調、イライラして怒りっぽくなる、アルコールなどへの嗜癖といった症状を呈します。

うつ病との類似性が高く、軽度のうつ病と区別がつきにくいという特徴があります。また、正式な病名ではないものの、俗に「新型うつ病」の名で呼ばれることもあり、その名称なら知っているという人も多いかもしれません。

適応障害とうつ病の違い


適応障害とうつ病との大きな違いは、本人がストレスの原因(ストレッサー)から解放されると元気を取り戻すことです。

例えば、近年話題の「新型うつ」(職場不適応症)は、職場の人間関係や仕事のプレッシャーなどがストレッサーとなって起こる適応障害で、職場ではうつ病のような状態になる反面、職場以外の場面では通常通りに振る舞えるというもの。

これに対しうつ病の場合は、ストレッサーがなくなっても状態がすぐに改善することはなく、治療から回復までにも相当の時間がかかります。

また、うつ病は薬物療法が有効ですが、適応障害では、カウンセリングなどに薬物療法を併用することが有効という見解もあります。

適応障害の3つのパターン


会社や職場で、適応障害やうつに至るパターンには次のようなものがあります。

容量オーバー:ストレスの量が本人の対処できる容量を超過する


過労や睡眠不足による疲労の蓄積、異動などで環境や仕事内容が変わった時、職場や環境に慣れて周囲からの期待が増え、仕事が質・量ともに急激に増えるなど。

主体性を奪われた場合:価値観やライフスタイルを大きく妨害される


自由裁量がまったくない、分厚いマニュアルで手順がすべて決められている場合など、自主性が発揮できない状態が長時間続く時など。

振り回され続けている場合:管理者・監督者に起きやすい


部下が反抗的だったり、逆に依存的だったりする場合、当の管理職が、そうした関係性に距離が取れなくなるような人間関係をめぐる事態。また、目標やノルマの達成に振り回される場合もあり、「昇進うつ病」といった呼び名も。

未病としての適応障害


「未病」は漢方の言葉で、「ハッキリとした病気にかかる以前の軽微な予兆が見られる状態」(広辞苑)を指します。

適応障害は環境や場にうまくなじむことができないストレス反応ですが、長く続くと「うつ病」に発展していく、いわばうつ病の「未病」状態と見なせるかもしれません。適応障害は診断が難しく、それゆえに適切な治療が受けられないまま悩んでいる人も多いのが現状です。

今後、適応障害とうつ病との関係がさらに解明されていくことが期待されています。