新幹線の車内清掃に効果「魔法のホウキ」とは? 座席は「洗う」ことも
【動画あり】運行に与える影響を最小限にすべく、さまざまな工夫が行われている新幹線の車内清掃。東海道新幹線で生まれた「魔法のホウキ」もそのひとつで、「効率」のみならず「人」にも「魔法の効果」があるようです。ちなみにこの「魔法のホウキ」、市販もされています。どんなところで使うのでしょうか。
「人」にも高い効果がある「魔法のホウキ」
列車の折り返し運転にともなう車内清掃。特に、東京駅で行われている新幹線のものが有名でしょうか。
ただこの際、長い時間を要してしまうと、列車が折り返して発車できるまでの時間も長くなる、すなわち時間あたりに発車できる列車の本数が少なくなり、輸送力が減ってしまいます。そのため車内清掃では、列車の運行に与える影響を極力なくし、かつ乗客に快適なサービスを提供するため、さまざまな工夫を実施。そのひとつとして挙げられるのが、東海道新幹線で生まれた「魔法のホウキ」です。
東海道新幹線の車内清掃で使用されている「魔法のホウキ」(2016年7月、恵 知仁撮影)。
一見すると、普通のホウキとそう変わらないようにも思えますが、人の手程度の湿り気にも反応する「水濡れ検知センサー」を装備しており、座席を掃きながら、そこがぬれているかどうかのチェックが可能。効率的な清掃を実現しました。
しかもこの「魔法」、「効率」のみならず、「人」に対しても大きな効果があります。
東海道新幹線の車内清掃を行っている新幹線メンテナンス東海によると、このホウキができるまで、中腰になって座席ひとつひとつを触り、ぬれていないか確認していたそうです。しかし、1日に何百もの座席をチェックすることになるため、腰への負担が大きいほか、指紋が消えてしまうこともあったといいます。
その問題を解決するため、新幹線メンテナンス東海社員の声から、この「魔法のホウキ」が誕生したそうです。
2016年の浜松工場一般公開「新幹線なるほど発見デー」で行われた車内清掃体験(2016年7月、恵 知仁撮影)。
2016年7月23日(土)と24日(日)に開催された東海道新幹線・浜松工場(静岡県浜松市)の一般公開イベント「新幹線なるほど発見デー」では、この「魔法のホウキ」を用いた車内清掃体験が行われ、あえて座席に霧吹きを使用。「魔法のホウキ」を持った参加者たちにより車内各所で、「ピー」という通知音とともに水ぬれが検知されていました。
市販されている「魔法のホウキ」 新幹線以外での使い道は?
東海道新幹線の「魔法のホウキ」、「グリーン車用」もあるそうです。
足置きが備えられている東海道新幹線N700系のグリーン車(2016年6月、恵 知仁撮影)。
そのままでも、開いても使えるようになっている、グリーン車の座席足元にある足置き。「グリーン車用」のホウキには突起がつけられており、それをひっかけるだけで、この足置きをかんたんに開けるようになっているのです。やはり、かつては中腰になって足置きを開いていたため体へ負担があったそうですが、この工夫によって解消されたといいます。
また新幹線メンテナンス東海によると、東海道新幹線の座席はホウキで払うだけではなく、定期的に“洗っている”そうです。まずホコリなどを清掃したのち、バキューム(吸引器)に噴霧ノズルを取り付けた専用の道具を使用。座席へアルカリイオン水を吹きかけるとともに、それを吸い込み、アルカリイオン水の対流、吸引を繰り返すことで、座席内部の汚れまで除去しているそうです。
水ぬれを検知すると、通知音とともにランプ(矢印の先)が点灯する「魔法のホウキ」(2016年7月、恵 知仁撮影)。
この「魔法のホウキ」は市販されており、誰でも購入できます。その開発、製造、販売を行っているパワーテクノによると、バスや船、映画館、ホールなどで使われているそうです。飛行機での使用も考えたそうですが、シートベルトの金属部に反応してしまい、うまくいかなかったとか。
ちなみに、この「魔法のホウキ(水分検知器付・座席払い箒)」の価格は、パワーテクノのネット通販で1万8333円(税別)です。