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2016年4月に、立て続けに熊本県・大分県で発生した「熊本地震」から2カ月が経った。多くの建物・住まいが被害にあっていたが、見た目が新しくても1階部分がほぼ押しつぶされた物件がいくつかあったのが印象に残っている。真偽のほどは分からないが、見た目が新しく「改築」された物件は、柱などの躯体の老朽化は改善されていない。今回は「改築」物件の注意点を紹介したい。

広告で「改築年数」のみ表示するのはルール違反

熊本地震では庁舎をはじめ、多数の建物に被害が出ており、専門家による本格的な調査・解明はこれから進むことであろう。調べてみると、1階部分がつぶれてしまった物件には数年前に改築されたもので、広告上で「改築◎年」という表記のみになっていた物件があったようだ。しかし登記を確認すると実は、建築からすでに40年超が経過していた建物だったのだ。

そもそも、注意したいのが、この「改築」という言葉だ。
実はこの「改築」してからの年数のみを表示するのは、不動産公正取引協議会連合会が定めた「不動産の公正競争規約」(不動産広告ルール)では、「実際よりも築年数が新しいと誤認されるおそれのある表示は不当」とされている。本来は事実情報として、竣工(完成)時の年月を表記するのが正しい。もちろん、見出しなどには「改築◎年」とうたわれることもあるが、物件概要のところには竣工からの築年月が書かれているはずだ。

しかし、現実にはこうした「改築」表記のトラブルも少なくない。首都圏不動産公正取引協議会が公開している違反事例(下部参照)では、築年数を誤認させるような表示をしている会社があるのも事実だ。

本当の築年数を調べるにはどうすればいいの? 

では、「改築」と表記されている建物で、本当の築年数を見抜くことはできるのだろうか。

今回、被害があった物件では、外観はもちろんだが、クロスや建具、水まわりの設備などは、改築時に交換されていたのだろう、新しく見えるため、見た目から本来の築年数を見抜ける人はほぼいないと思われる。

そこで、自衛するには、まず“「改築」のみの表記”がルール違反だと理解したうえで、物件見学時に「改築と表記されていますが、本当の築年数は?」と不動産会社の担当者に質問するのがいいだろう。うやむやにされてしまい、どうしても気になったのであれば、法務局で登記簿をとり、調べることもできる。ただ、賃貸物件を比較検討するのにそこまで労力をかけたくないという人は、残念ながら物件は契約しないほうがいいかもしれない。

ちなみに、2006(平成18)年から、旧耐震基準で建築された建物(建築確認が昭和56年5月31日以前)については、契約時の重要事項説明に耐震診断の有無と、「有」だった場合にはその結果を伝えなくてはならない、としている。「改築」物件だった場合、この重要事項説明で、耐震診断の有無とその結果、対策についての説明も十分に受けておこう。

住まいに対して、使い勝手のよい設備やデザイン的に気に入る外観・内装などを求めるのは普通のことではあるが、住まいは生命と暮らしをまもる箱でもある。生活利便性だけでなく、こうした「築年」や「耐震性」などにも留意しながらを選んでほしい。

●参考
首都圏不動産公正取引協議会
・首都圏不動産公正取引協議会 違反事例
・不動産ジャパン