トゥーロン国際の取材で、南仏へ来ている。U−23日本代表はなかなか勝てないが、それでも楽しい時間を過ごすことができている。日本では観ることのできないゲームを、テレビが中継してくれるからだ。

 フランスにいるのだから、フランスカップの決勝が中継されるのは当然のことだろう。ズラタン・イブラヒモヴィッチの2ゴールなどで、パリSGがマルセイユを4対2で退けた。

 ズラタンにとってパリSGでのラストゲームは、日本でも放送されたのだろうか──まあ、それはどちらでもいい。ズラタンのような選手の節目となるゲームを、彼がプレーしている国の中継で観ることができたのは、ささやかな満足感を運んできてくれる。

 日本とフランスでは中継の作りかたが違うから、それだけで興味深い。翌日のスポーツ紙で採点を確認すると、もう一度楽しむことができる。

 タッサ・デ・ポルトガルはドラマティックだった。

 リーグ3位のポルトと同4位のブラガとのカップ戦ファイナルは、ブラガの1点リードで後半追加タイムを迎える。ここで、ポルトが追いついたのだ。

 狂喜するポルトの選手たちと、茫然自失のブラガの選手が、同じカメラフレームに収まる。ブラガの選手たちは、表情も動きも失う。テレビで観ていても、リアルな感情が迫ってきた。

 試合の流れはポルトにある。それは間違いない。ところが、勝ったのはブラガなのだ。PK戦で4対2──追いつかれたチームが勝つなら、PK戦しかなかったかもしれない。

 セリエBの昇格プレーオフも観た。

 フランスとポルトガルのカップ戦決勝は、タイトルを得るための戦いだ。敗者が失うものは、基本的にカップだけである。

 昇格プレーオフは違う。負けたクラブは、その瞬間に未来を閉ざされる。地獄へ突き落とされる。セリエA昇格へ向けて、またゼロからやり直さなければいけない。失うものは、あまりにも大きい。

 僕がテレビで観たのは、プレーオフの1回戦だった。6位のチェゼーナ対7位のスペツィアの激突だ。

 J2リーグにも昇格プレーオフはあり、肌がヒリヒリするような緊張感は知っているつもりである。アドバンテージを持つ立場のチームは、ゲームをコントロールすることに力を注ぐ。後のない立場のチームは、ガムシャラにゴールを目ざす。スコアに応じて立場が入れ替わり、それに応じてベンチが慌ただしく動く。技術や戦術よりも気持ちが、もっと言えば魂がぶつかり合うところに、プレーオフの醍醐味と言っていい。
名前さえ知らない選手ばかりでも、睡魔に襲われることはない。プレーオフとはB級グルメのようなもので、誰にでも分かりやすい味わいを持つ。サッカー中継のなかで、もっとも大衆的なコンテンツと言っていいだろう。

 ちなみに、セリエBのプレーオフは、アウェイのスペツィアが2対1で競り勝った。ハリルホジッチ監督が見たら飛び跳ねて喜びそうな、デゥエルのオンパレードだった。

 5月28日にはCL決勝がある。僕はまだ、フランスに居る。
 さて、どこで観ようか。