蓮實重彦、三島賞受賞に「暴挙」 山本賞は湊かなえが受賞
5月16日に行われた第29回山本周五郎賞、三島由紀夫賞の受賞作発表の記者会見は波乱を帯びるものになった。
■押切もえさんは0.5差で受賞逃す――山本周五郎賞
山本賞を受賞したのは湊かなえさんの『ユートピア』(集英社刊)。最終候補発表時には、押切もえさんの『永遠とは違う一日』(新潮社刊)がノミネートされたことから話題を呼んだが惜しくも受賞を逃す結果となった。
選考経緯を説明した佐々木譲さんは、湊さんと押切さんの作品が選考委員の投票で、点数にして「0.5点差」と僅差だったことを明かした上で、「ダブル受賞という話も実はありました。山本周五郎賞の規定として1作品にしなければいけないということもあり、選考委員の気持ちとしては、2作同時受賞ができるのだったらそれでもいいという話でした」と2作が相当な接戦であったことを語った。
湊さんは、まず『小説すばる』の元編集長で2014年に急逝した高橋秀明氏に御礼を伝えたいと述べた。
『ユートピア』は高橋氏との二人三脚で生まれた小説。「原稿を週明けにお渡しできたらと…その週末に亡くなられたということを聞いて、自分がもっと早く書いていたらと思ったこともあったのですが、話のスタートには高橋さんがいらっしゃるので、一番感謝の気持ちを伝えたい相手です」とその想いを明かした。
また、押切もえさんが候補作に選ばれ、僅差で受賞を争っていたことについて聞かれると、同年代の小説家の作品は読んでいないとした上で、「小説家の方も小説家以外の肩書きはあるわけで、いろんな分野の方が書かれるのは、すごく内面を知ることができたり、新しい発見などもあってすごく良いと思いますし、普段本を読まない方が自分の好きな本が入り口になって本を好きになる機会はとても良いことだと思う」と率直な感想をコメントした。
■「伯爵夫人」で受賞の蓮實重彦氏は「はた迷惑」――三島由紀夫賞
三島賞を受賞した蓮實重彦氏はフランス文学者で元東京大学総長。受賞作となった「伯爵夫人」は22年ぶりの小説で、『新潮』4月号に掲載され、6月末日には単行本として新潮社から刊行される。新鋭の作品に送られる三島賞は、80歳の学者の手にわたることになった。
しかし、記者会見の場にあらわれた蓮實氏は受賞の印象について、「まったく喜んではおりません」と一言。「はた迷惑な話だと思っております。80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております」と断言し、順当であればいしいしんじ氏が取るべきだったと語った上で、「選考委員の方が蓮實を選ぶという暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは非常に迷惑な話だと思います」と蓮實節を炸裂させた。
記者陣も蓮實氏に質問を繰り出すものの、「お読みになって下さったのでしょうか?」という逆質問をされるなど、終始緊張感あふれる記者会見となった。
贈呈式は6月24日に行われる。副賞は100万円。
(新刊JP編集部)
■押切もえさんは0.5差で受賞逃す――山本周五郎賞
山本賞を受賞したのは湊かなえさんの『ユートピア』(集英社刊)。最終候補発表時には、押切もえさんの『永遠とは違う一日』(新潮社刊)がノミネートされたことから話題を呼んだが惜しくも受賞を逃す結果となった。
選考経緯を説明した佐々木譲さんは、湊さんと押切さんの作品が選考委員の投票で、点数にして「0.5点差」と僅差だったことを明かした上で、「ダブル受賞という話も実はありました。山本周五郎賞の規定として1作品にしなければいけないということもあり、選考委員の気持ちとしては、2作同時受賞ができるのだったらそれでもいいという話でした」と2作が相当な接戦であったことを語った。
『ユートピア』は高橋氏との二人三脚で生まれた小説。「原稿を週明けにお渡しできたらと…その週末に亡くなられたということを聞いて、自分がもっと早く書いていたらと思ったこともあったのですが、話のスタートには高橋さんがいらっしゃるので、一番感謝の気持ちを伝えたい相手です」とその想いを明かした。
また、押切もえさんが候補作に選ばれ、僅差で受賞を争っていたことについて聞かれると、同年代の小説家の作品は読んでいないとした上で、「小説家の方も小説家以外の肩書きはあるわけで、いろんな分野の方が書かれるのは、すごく内面を知ることができたり、新しい発見などもあってすごく良いと思いますし、普段本を読まない方が自分の好きな本が入り口になって本を好きになる機会はとても良いことだと思う」と率直な感想をコメントした。
■「伯爵夫人」で受賞の蓮實重彦氏は「はた迷惑」――三島由紀夫賞
三島賞を受賞した蓮實重彦氏はフランス文学者で元東京大学総長。受賞作となった「伯爵夫人」は22年ぶりの小説で、『新潮』4月号に掲載され、6月末日には単行本として新潮社から刊行される。新鋭の作品に送られる三島賞は、80歳の学者の手にわたることになった。
しかし、記者会見の場にあらわれた蓮實氏は受賞の印象について、「まったく喜んではおりません」と一言。「はた迷惑な話だと思っております。80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております」と断言し、順当であればいしいしんじ氏が取るべきだったと語った上で、「選考委員の方が蓮實を選ぶという暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは非常に迷惑な話だと思います」と蓮實節を炸裂させた。
記者陣も蓮實氏に質問を繰り出すものの、「お読みになって下さったのでしょうか?」という逆質問をされるなど、終始緊張感あふれる記者会見となった。
贈呈式は6月24日に行われる。副賞は100万円。
(新刊JP編集部)